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miwa interview
- SPECIAL -

miwa interview

取材・文/永堀アツオ

――ベストアルバムを出そうと思ったのはどうしてでした?

miwa:結構前からベストアルバムを出そうっていう話はあったんですよね。でも、そろそろ、そろそろと思いながらオリジナルアルバムを出してきて(笑)。今回はやっとツアーとアルバムのタイミングが合いそうだっていうことになったんですよ。ベストアルバムを出すんだったら、やっぱりちゃんと全国ツアーまわりたいと思っていたので、そのタイミングがやっと合ったという感じですね

――では、ご自身の中での区切りとかではなかった?

miwa:acoguissimoが47都道府県まわりきるというタイミングではあったので、そこは少し意識しました。

――デビューからの8年間を振り返るとどんな日々でしたか?

miwa:すごく濃厚で、いろいろあったなって思いますね。デビュー前から、部活や友達と遊ぶ時間も音楽に費やしてきたという意識はあるけど、デビューしてからの方がもっともっと音楽に捧げてきたなと思う8年間でした

——そんな8年間を2枚のCDにまとめるにあたってはどんなことを考えてました?

miwa:みんなで話し合って、初めてのベストなので、一番シンプルにシングル全曲をリリース順に並べるっていう形になりましたね。私も最初からシングルは全部入ってたほうがいいんじゃないかなとは思ってて。でも、シングルの表題曲を入れるだけで、2枚分がほぼ埋まっちゃうんだっていうことにはびっくりしてましたね

——(笑)未発表の新曲が2曲収録されてます。歌謡マナーのピアノバラード「Unchained Love」はドラマ「シグナル 長期未解決事件捜査班」の挿入歌になってます。

miwa:これは韓国ドラマのリメイクで、もともとのドラマを観て作ったんですけど、結構、テーマが重くて。今回は作詞家の藤林聖子さんにも入っていただきながら、なるべく日常に置き換えられるようなテーマの中に落とし込みたいねっていう話をして。ドラマの中では突然死んじゃうんですけど、それだと非日常的すぎるから、もうちょっと日常的に感じられることに寄せて。突然の別れに対する自分の気持ちがまだ踏ん切りがついていない人にスポットを当てた感じですね。簡単にいうと、理由は分からない、突然の理不尽な別れがテーマ。同世代からちょっと上の大人の女性の人が共感できるような歌になったんじゃないかと思います

——大人の女性の理不尽な別れをテーマにしたせいか、歌声も普段とは全く違いますよね。

miwa:そうそう。歌いかも『miwaっぽくないものにしよう』っていうテーマもありました。だから、ちょっと息交じりみたいな歌い方をしてて。1回聴いただけでは、miwaだってわからないような感じにするっていうのがテーマだったから、『難しい!』って思いながら、いつも以上に息を混ぜたり、サビもあんまり抑揚をつけすぎずに歌ってますね

――どうしようもないやるせなさみたいなものが伝わってきました。もう1曲はアコギ弾き語りツアー「acoguissimo」の47都道府県完走を記念して書いた曲になってます。47都道県目となる横浜アリーナで初披露した曲ですが、まず、アレンジに驚きました。

miwa:みんなびっくりすると思うんですけど、私はもともとすごい楽しいというか、明るくて泣ける曲にしたいと思ってたので、そういうアレンジで進めながら作ってて

――「アコースティックストーリー」っていうタイトルにもあるから、やっぱりアコギメインの曲かと思うじゃないですか(笑)。そしたら、ピアノが弾むダンスポップというか、みんなで歌えるようなアンセムになっていたので。この合唱のようなコーラスは誰が入れてるのですか?

miwa:埼玉公演のお客さんにお願いして収録したんです。あと、ローディーの八木ちゃんとかマネージャーさん、ディレクターさん、ソニーの宣伝チームにライブのスタッフ、それに、eggmanの井上さんも

——そうなんですか!! 大勢の人が参加してる曲なんですね。

miwa:すごく嬉しいですね。こういう曲が書ける日が来るとは思ってなかったし、こういう曲を書く人じゃないって私は自分で思ってたから。でも自分の中でこういう時が来るっていうのはうれしい変化でもあるかなと思いますね

——“こういう”というのは歌詞のことですよね。横浜アリーナのMCでは、「初めてパーソナルなことを歌った」と話してましたね。

miwa:そう、初めてなんです。私にとっては、ずっと小説を書いてきた人が、いきなり自叙伝を書いたようなイメージ(笑)

——デビュー以来、ドラマや映画、アニメやCMに楽曲を書き下ろしてきたmiwaさんが、どうして自分のことを書こうと思い立ったんですか?

miwa:アコースティックギターを弾いてたから今の自分があるし、47都道府県をまわって全国で歌って、全国の人に会いに行けたっていう気持ちもあったし、そうやって出会えた人に感謝の気持ちを伝えたいなって気持ちもあったし。そういった8年……8ギターを弾き始めた時から考えたら10年以上経つのかな。弾き語りライヴを始めた時は17歳だったけど、アコギに出会った時から考えると、15歳からの自分の歩みにたいして、今ならひとつの物語として作品にしてもいいかなって思えたタイミングだったっていうのもありますね

――どんなことを思い出しましたか?

miwa:やっぱり下北に通ってた頃のことも思い出したし、アコギッシモを始めた頃はすごく人数が少なかったこととかも思い出して。何より、デビュー曲では<一人きりだって>と歌っていた私が、この曲では、<今はもうみんながいる>と歌えるようになってる。それは、すごいことだなって思いましたね

——これからも私小説的な歌詞を書いてみたりは?

miwa:しないです! この曲は特別ですね。アコギ1本持って歩いてきた道のりに、みんながついてきてくれた。私がアコギ1本持って歩いてる姿は変わらなくても、いろんな人と出会って、いろんな人が私の夢に乗っかってくれて、協力してくれて、応援してくれた。それは、とても幸せな光景だなっていうのが、この曲のイメージ。自分が歩いてきた道のりを振り返ってみたら意外と物語になったなっていうだけで、いまも昔も、自分のことを曲にして共感してもらえるとは思わない。ただ、17の頃からがんばってきた子がこういうふうになれるんだっていう物語のような人生になってるので、いま、17歳の子が聴いたら、自分の思い描いてる夢も10年後には叶うのかなって思えるきっかけになるかもしれないし、一緒にこの8年を歩んできた人たちからしたら、振り返るだけの思い出が詰まっているので、そういうことを感じる1曲にはなりましたね

――私小説的な歌詞もいいと思いますけどね。では、先ほど、デビュー曲「don’t cry anymore」の話が出ましたが、ご自身にとってはどんな曲になってますか?

miwa:大変だったんですよね。アレンジャーも歌詞もいろいろ直したんですよ。すごく、多くの人が関わった、いろんな思いの詰まった楽曲になっているし、歌えば歌うほど、元の状態をどんどん忘れて、この形に更新されていくというか。最初の頃はね、歌詞を直すっていうことにすごい違和感があって。作りたてならいいんだけど、デビュー前にライブで歌ってきちゃっていたものを直したんです。テレビを通してたくさんの人に届く曲に仕上げていくっていうことに対しての思いを持ちながらやっていって。「don’t cry~」は8年かけて、「don’t cry~」になったなと思います。今は歌う時になんの疑問もなく、本当にこの形にしっくりきて歌えてるし、あらためて振り返ると。とってもデビュー曲な感じがする歌詞だなって思うし

――ここから戦っていくんだっていう決意や強い意思を感じますよね。

miwa:うん、そういう感じがしますよね。すごくデビュー曲な感じがするなぁと思いました。その時はそんな意識はなかったけど

——ベスト盤に収録されている中で、一番古い曲はどれですか。

miwa:〈オトシモノ〉ですね。これは高校生の時に作った、すっごい初期の曲なんですよね。妹が受験勉強してる時だから17ですね。私が高2で妹が中3の時

――ドラマ「獣医師ドリトル」の主題歌でした。

miwa:この曲も、ドラマの時に1回歌詞を書き換えてるんです。そもそもは妹の受験を励ますみたいなイメージで。自分を見失ったり自暴自棄になってももう1回大切なことを思い出してほしいなって思って書いた曲だったけど、それが『獣医ドリトル』の主題歌になって、松浦さんのアレンジで、凄腕ミュージシャンの方がレコーディングしてくれて。ドラマを見てこの曲を知った人もたくさんいてたし、17の時に書いた曲がこんなふうに広がっていくっていうのはすごいことだと思いますね

――「441」もデビュー前から歌ってた曲ですよね。

miwa:そうですね。Naoki-Tさんと初めて出会った頃にできた曲で。この曲ができたからすごく変わったっていうか。それまでの歌い方と全然違う、ちょっとハーフトーンで歌う曲はそれまでなかったんです。そういう声の出し方があまりできなかったけど、初めてできるようになったっていうか、そういうことを学べた曲になったので、私の中でヴォーカリストとして変わった曲だなと思ってます

——現時点での代表曲を1曲だけあげるとなると、やっぱりドラマ「リッチマン、プアウーマン」の主題歌で、紅白歌合戦に初出場した時に歌った「ヒカリヘ」でしょうか。

miwa:私のことを知ってもらうすごく大きなきっかけの曲だったと思うし、私も書けて楽しかった曲でしたね。それまでもアルバムでは打ち込みもけっこうやっていたんですけど、シングルでできるとは思ってなくて。しかも、月9の主題歌っていうすごく大きな機会でこういった曲に挑戦できたのは、私としてはすごいうれしかったです。本当はこういう曲も好きな面があるっていうのを全面に出せたのは楽しかったし

――エレクトロナンバーで、フライングVを弾いてましたが、miwaさんはいつも挑戦しているイメージですよね。それこそ3枚目のシングル「chAngE」でトレードマークのアコギからエレキにチェンジしてるし。

miwa:それは私的にも大挑戦でしたけどね(笑)。全然、弾いたことないのにどうするんだろう、みたいな感じだったけど、シングルだけをみても、いろんなバリエーションがあって面白なって思いますね、自分でも

——(笑)シングル以外では、ファンに人気の高い初期の名曲「めぐろ川」も入ってます。

miwa:ありがたいことですよね。リクエストを募ると上位に来る曲だし、デビューシングルのカップリング曲なんだけど、毎年毎年、思い出が詰まっていくんですよね。オールナイトニッポンの最終回で弾き語りしたり、初めての武道館で袴を着て桜吹雪の中で歌ったり、「バラードコレクション」ツアーでは1曲目で登場したり。そういうインパクト、ハイライトがある曲になってるのかなとは思いますね

——ご自身で特に思入れのある曲は?

miwa:ライヴでよくやってる〈君に出会えたから〉とか〈あなたがここにいて抱きしめることができるなら〉とか、歌い続けてる分、思い入れが詰まってますね。最近だと、やっぱり、アリーナツアーのタイトルににもした〈We are the light〉かな。でも、私は自分の中でその時のお気に入りがあって。今、今日この瞬間のお気に入りは、〈Princess〉と〈ホイッスル〉です

——どうしてですか?

miwa:アコギッシモでやりたかったんですけど、入り切らなくて、やれなかったんです。本当は〈Princess〉をめっちゃやりたかったんですよ。この前、“ギタレレ”をプレゼントでもらって。“ギタレレ”で〈Princess〉を弾いてみたらすごい楽しかったから、いつか披露したいですね

——次のツアーで見たいです! ちなみにタイトルはどんな思いでつけました? 

miwa:みんなでシンプルなものにしようって話して。ベストアルバムはずっと残っていくものだし、入口になるものでもあったりするので、『これがベストアルバムですよ』ってわかりやすい感じにしよっかってことになりました

――アートワークのイメージは?

miwa:ビジュアルも、シンプルで、miwaらしいものにしようっていうのがテーマでしたね。前髪パッツンの黒髪で、全部写さなくてもここだけでもmiwaって認識してもらえるんじゃない?っていうところから、これがmiwaらしいジャケットかもね、みたいな

――miwaさんの目の中に何か写ってますよね。

miwa:私です。私がギターを弾いてるところ」

――いつの写真ですか?

miwa:生産限定盤のジャケですね

――本物の生花で作ったギターを弾いてる写真ですね。

miwa:そうですね。今まで作ってきたカラフルな楽曲のイメージが伝わるといいよね、みたいな感じで『好きな花を入れていいよ』って言われたので、ひまわりを入れてもらいました。あと、ジャケットの写真は、実はデビュー前に撮ったスタジオと同じスタジオで撮っていて。2010年当時と同じポーズと同じ場所で撮った写真が乗ってるので、ぜひ見比べて欲しいです

――ベストアルバムが完成して、リスナーにはどう届いたらいいと思いますか。

miwa:私の中では作った時の記憶も鮮明だし、ライヴでも歌い続けてるし、私の中では曲が色あせてないんですね。だから、ベストアルバムから初めて聴いてもらう人にも曲が鮮明に伝わってくれたらいいなと思うし、作った時の思いがちゃんと色あせずに届くといいなと思ってます。あとは、どの時代に出会ってくれた人にも、あらためてmiwaの歴史をたどってもらって、この時何歳だったなとか、誰々と聴いてたなっていう思い出を振り返ってもらえたらいいんじゃないかなって思うし、楽曲にもう一度光が当たるといいなって思ってます

――そして、ツアーも決定してます。どんなツアーになりそうですか?

miwa:初めて来てくれる人にも楽しんでもらえる、とってもウエルカムなツアーにしたいなと思いますね。私のコアなファンの人と、そうでもない人が一緒に来ても……何なら、私のファンじゃないっていう友達を誘ってきてくれても一緒に楽しんでもらえるようなものにしたいです。ベストアルバムを聴いて、このドラマの曲知ってるとか、このCMの曲知ってるみたいな人でも楽しんでもらえるような、みんなが楽しめるライヴにしたいなとは思ってます。プラス、歴史をたどれるようなものにもなったらいいなと思いますね

――デビュー9周年の記念日となる3月3日はeggmanでのライブになってます。

miwa:超プレミアムライヴだよね。eggmanでは去年もライブをやったし、2012年にはホワイトデー女子会もやったけど、デビュー日にやるのは珍しくて。しかも、ツアーの一環としてeggmanでやるのはちょっと面白いかなと思って。ホワイトデー女子会は面白い企画でした。eggmanさんくらいの度量がないとやらせてもらえない企画だったと思います。イベント終わりで一人一人にホワイトデーのプレゼントを手渡したのも思い出に残っています。

ーー今だから言える当時のエピソードなどあれば聞かせてください。

miwa:当時MCがすごく苦手で、、笑 声のトーンも低くて暗いし笑 最初のころは一言一句MC台本を作って、家で練習したりしてからライブに臨んでいました。

――10年目のスタートをデビュー日に立った場所から始めるってことになりますが。

miwa:ベストアルバムっぽいですよね。デビューライヴの時にいたお客さんとはまた違うお客さんが入るわけだから、たぶん見える景色が違うんだろうな。でも、eggmanの井上さんはずっと一緒にいてくれるし、ejiさんもいるし、同じメンバーで立つっていうのも面白いなって思う。一方で、お客さんもスタッフも増えてて。新しい出会いがあるのは心強いので、当日は、仲間が増えてる! って感じられるかもしれないですね。……でも、このツアー、いつものmiwaバンドで回るんですよ。あのステージに7人も立てるのかな(笑)。乗り切るのかがちょっと心配ですね

―――(笑)バンドメンバーを減らして挑んでるかもしれないですね。今お話にもでてきたデビューライブでも一緒だったejiさんとはその後もずっとやってきていて、ほかのバンドメンバーの方々もeggmanゆかりの方が多く、今回のベストアルバムのツアーでも一緒ということで、バンドメンバーさんとのなにかエピソードがあれば聞かせてください。

miwa:ejiさんとはデビュー前から二人で弾き語りライブを回ったりしていましたが、当時は今みたいな「姉妹」みたいな感じでは全然なく笑 勝手に怖い人だと思っていました。デビュー前は、ejiさんも生ちゃんも、それぞれのバンドのライブをeggmanに観に行ったりしていましたね。
あとeggmanといえば、井上さんですね。ずっと一緒にいるのでエピソード抽出しろと言われたら難しいのですが。。なんでもできるので、オールナイトニッポンのイベントの時もmiwaバンドのケアで当日来ていたはずなのに、いつの間にかイベント自体の舞台監督やらされていたり笑 とにかくいつも感謝しています。

――eggmanでのライブの意気込みを教えてもらえますか?

miwa:デビュー日と全く同日にライブができるのはすごく楽しみですし、あの日と全く違うであろうお客さんがはいることも感慨深いです。デビュー曲含めて、2010年に披露していた同じ楽曲を披露することもあるので成長を感じてもらえると幸いです。

――9周年を迎えて、10年目に入りますが、未来はどんなふうに見えてますか?

miwa:やることはあまり変わらないので、また新しい夢を描いていって、またそれを叶えるためにやっていくみたいな感じですかね

――その新しい夢というのは?

miwa:やりたいことはたくさんあるんですよね。例えば、野外ライヴやりたいなとか。そういうのはあるけど、とにかく一歩一歩の先って感じのイメージですね。長く続けられたらとっても幸せだろうなって思うし、長く続けるからこそ見える景色があるだろうなって思う。でも、一方で、長く続けるために今、やってるわけではないので、今見ている景色だったり、今しかないものっていうのも大切にしていきたいなって思いますね