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SUPER BEAVER interview
- SPECIAL -

SUPER BEAVER interview

SUPER BEAVERの新作『歓声前夜』は本当に名作だ。バンドとして歩みを止めることなく進み続けてきた彼らが発する音楽は芯があり、決して揺らぐことのないその信念は何万人、何十万の人の胸を打ち、それが歓声となってさらに返ってくる。バンドマンの神髄とも言える状況ではないだろうか。そんな彼らが最高傑作として送り出す作品を紐解くロングインタビュー

インタビュアー:ブッキングマネージャー窪田

―まずは先日の武道館でのワンマンライブお疲れ様でした。あの日はSUPER BEAVERにとっても大きな1日だったと思うけれど、終わってみてどうでしたか?

渋谷龍太(Vo 以下…渋谷):楽しかったです。その一言で尽きるというところがよかった事なのかなって。感慨深い事も感動とか嬉しさ色々あった上で、それを凌駕する程の楽しさがあったからこそそういう感想として残っているんだと思うし、必要以上に他の感情が入ってこなかった事がすごく良かったと思います。

―武道館でまだまだ終わらない感も存分に出ていましたしね。そしてそれを経てリリースされる今作の『歓声前夜』。あまり聞き慣れない言葉だと思いました。以前『美しい日』という作品は渋谷さんの一言がきっかけになったと言っていましたが、今回もそのような何か一言とかがあったのですか?

柳沢亮太(Gt,cho 以下…柳沢):今回はぶーやんの一言とかではなく、『真ん中のこと』というアルバムを出してツアー周っている時に、今までにない手応えを感じたり、そのツアーのファイナルのZEPP TOKYOで先ほど話があった武道館でのライブを発表した時、すごい歓びの声があがったりしてそれがとてつもないエネルギーだったんですよ。バンドは14年目になって今まで色んなことがありましたけど、その中で少しずつそういう瞬間を実感できるようになってきて、それが今作を聴いてくださった人にとってのきっかけとか気づきみたいになったらいいなと。今日がもしかしたらその一歩手前かもしれないって言う気持ちを言葉で表したらそういうタイトルになりました。今のSUPER BEAVERのモードが現れたタイトルになったかなと思います。

―今回アルバムのジャケ写やアー写は赤がメインカラーになっているかと思いますが。『真ん中のこと』のときに黄色がメインになっていて、今回は赤。今までのSUPER BEAVERのアートワークは全体的に色味が少ない、モノクロっぽいイメージがあったので結構意外でした。アートワークに対するこだわりが変わった部分があったのですか?

渋谷:いや前回で味をしめただけですよ(笑)。

―なるほど(笑)

渋谷:というかパッと見のインパクトって大事だなって前回感じたんですよ。前回のアーの黄色はすごく目をひいたのが印象的で。今回に関してはいつも写真を撮ってくれているカメラマンの青木カズローさんが赤いフィルムをシャッターにかぶせて撮ることをしたいと言ってくれてそれがきっかけでした。それが今回のアルバムが持っている色みたいなのも近いなと言う感じがもしたので。別に今後色味をつけることで縛るつもりは全くないですけど、目を引くものや目立つものを作っていけたらいいなとは思っています。

―確かにインパクトはありますよね。そんな今作の収録曲について聞いていきたいと思います。まずは1曲目の「ふがいない夜こそ」。前作の1曲目「ファンファーレ」同様にライブの1曲目を意識したのかなという気がしました。

柳沢:作った当初はそういう意識はなかったですけど、アレンジをしていくうちに非常に幕開け感があるなというのはでてきましたね。「ふがいない夜こそ」というタイトルも結果としてはすごく『歓声前夜』というアルバムタイトルとリンクしてきて。アルバムの幕開けというか。アレンジとか持っている空気感と言うのはまさに前夜というか直前感というのがあるかなと思います。人がドアを開ける瞬間に焦点を当てるのではなく、まずなぜ開けようかと思ったかというところがこの曲にとっては大事な部分ですね。

―1曲目はアルバムにとってはスタートや入り口という言葉だと思うけれど“出口”という言葉を1曲目で提示するところに明確な意図を持った曲なのかと思いました。

柳沢:明確な意図があるわけではないですが、ある意味入り口と出口も同意語な気がしていて。今からの脱却というのは出口ではありますが、また新たなスタートという側面もあるから『歓声前夜』というアルバムの1曲目としてはすごく相応しい曲になったかなと思います。

―2曲目は「虹」。虹をこういう視点で捉えると面白いなと思いました。こういうタイトルだと虹そのものをメインをとらえるイメージが多いと思うんですが、“雨上がりに架かる虹より雨の音が好き”という視点がいいですよね。人それぞれでいいんだよという比喩として虹というワードを使っていると思うのですがそれがすごく柳沢さんの作詞センスを感じる部分だなと。

柳沢:ありがとうございます。あれが嫌いと言うよりも、これが好きって言ったほうが素敵じゃないかなって。こういう視点というのは僕らの曲の中にはずっとあるような気がしています。

―こういうタイプの曲が渋谷さんの歌声に乗ると問題提起のような側面も感じますが、全然攻撃的ではなく支えられていたり、包まれるような感じを覚えます。なにか意識している部分などありますか?

渋谷:そう言ってもらえることはすごく嬉しいですが、特に意識はしていないですね。意識して入れ込もうとするとちょっと嘘くさいかなぁって思っていて。そのまま持っている感情を歌に落とし込めないと、どこか胡散くさく聞こえる時があると思うから、あんまり歌詞の内容的な事とかこの歌はこういう風に歌うべきだっていうのは必要以上には考えないようにしています。お芝居になっちゃうとダメで、あくまで歌という媒体を通じて届けているだけですからね。歌う前に何を自分が思っていられるか、どう伝えようと思えているかどうかが1番大事だと思っています。

―届いた側がどう受け取るかどうかですもんね。この曲中で“真ん中を行けばいいんだよ”という歌詞がありますが、リリース時期は全然違うけれど前作『真ん中のこと』とリンクがあるのでしょうか?

柳沢:自分でも書きながら思っていました、一緒の言葉ですもんね。でも尚更いいのかなって。『真ん中のこと』というタイトルを付けて、その制作渦中で作った曲でもあるので、その意識は大きかったのかも知れないですね。

―曲を時系列で並べてみると気付くことがありますよね。きっとこう考えていたんだっていうのがわかる。

柳沢:まさにそうですね。

―3曲目の「閃光」。聴いた瞬間のインパクトに鳥肌立ちました。渋谷さんの声のパンチ力がすごい。これはアレンジの段階でこういう構成だったのですか?

柳沢:そうですね、元々そういうアレンジではあって、でももう少し細かい部分もあったのですが、最終的にはシンプルな曲でいいんじゃないかということになって、シンプルに歌始まりで。

―この曲では“一生”とか“一瞬”を閃光という言葉で表現していますね。

柳沢:時の流れをどんどん早く感じている部分が大きいかなと思います。SUPER BEAVERも10年以上経っていて、同じことを同じ人たちでやり続けて10年前の話が出来ることってあまりないじゃないですか。

―そうですよね。10年続くことって人生の中でそんなに多くもないですし。

柳沢:この曲の歌詞の通り実際僕らも10代から始めて20代が終わって30代になってという時間の流れの中で、一生って一瞬で過ぎるなというか。だから“あっという間に終わってしまうよ”という言葉を使っているのですが、でも終わるという言葉をネガティブに捉えてほしくなくて。イメージとしてはこの曲を聴き終わった後に残る気持ちは悲壮感じゃなく、ふっと一歩踏み出せるような気持ちになってほしいなと思いながら作りました。

―SUPER BEAVERというバンドで10代、20代を終えたから出来る曲ですよね。じゃないとこの曲は歌えない。実際今までの年月って一瞬でしたか?

柳沢:それは難しい質問ですね。長かったなとも短かったともどっちも感じちゃいますけど捉え方次第ですよね。例えばしんどい時、その渦中にいる時って死ぬほど長く感じるじゃないですか、でも過ぎ去ってみて、あとでタバコでも吸っている時にそれがすごく前の出来事なような気がする…とか。そういうものの繰り返しだと思うので、だからこそその気持ちを歌にしたかったんです。

―紆余曲折いろんな事があってライブハウスでひたすらやってきたSUPER BEAVERが歌うからこそ意味がある曲に思えますね。そして4曲目は「ラヴソング」。これはずっと歌い続けているところなのかなと思います。こういう曲があるからSUPER BEAVERが嘘偽りない真っすぐな人間たちの集まりなんだなって改めて実感できます。こういう曲を入れたいなって気持ちはあったのですか?

柳沢:こういうイメージっていうのはぶーやんから言われましたね。
渋谷:大きい会場でライブすることが増えてきて、座った状態でのライブという状況があるときに、こういう曲が欲しいなというイメージがありました。今までやったことのないテンポ感と自分たちの見せ方をこういうテンポでも出来るようになってきたんじゃないかなと思えるようになってきて。だとしたらこういう表現の仕方をしたいなというのが結構明確にあったので、大きな枠組みだけ伝えて作ってもらいました。

―ここまでポップな曲はなかなかない感じですよね。

渋谷:ミドルテンポの曲自体があまりなく、さらにミドルテンポだけどこの質感というのは今までやったことがなかったので、こういったタイプの楽曲を今作ってみたいなと思いまして。

―タイトルもシンプルで分かりやすいですよね。タイトルから想像できる部分はありつつも、しっかりとしたメッセージ性。個人的な意見になってしまいますが歌詞の中にでてくる“幸せに会ってほしい”という言葉がすごくグッときました。意味としては伝わるけど言葉としてあまり聞かないので、この曲にとってのキーワードなのかなと思いました。

柳沢:SUPER BEAVERの歌うラヴってつまり愛で、恋じゃないというか。じゃあ愛って何だろうと考えた時に、自分たちの周りにいる人たちに向けた素直な気持ちかなと思ったんです。それを出そうと思って書き始めたんですけど、“幸せになって欲しい”とか“幸せであってほしい”とかだと、ちょっと上から目線っていうか気持ちはそのままなのですがその中でもっとナチュラルな言い方ってないかなって思っていた時に“幸せに会う”という言葉に辿り着いて。

―非常に良い言葉ですよね。これは歌詞を読まないとわからない部分ですし、この曲を聴くときはしっかり歌詞も読んでもらえたと思います。5曲目の「シンプリー」はこれまた今までとは違った雰囲気で、でもらしさもあって、SUPER BEAVERがまさにシンプルなバンドなのかなと思いました。

渋谷:シンプルでありたいという気持ちはありますね。
柳沢:『真ん中のこと』の勢いを継承して、ライブ感とかライブが楽しくなるような一曲ですね。リリースツアーを周っている時にサウンドチェックで軽くセッションみたいになった時にこのフレーズの大元がたまたま出来て。だから『真ん中のこと』のアグレッシブさとかリズムで体が楽しくなる感じとかノリを受け継いだ曲に仕上がったと思います。

―続く6曲目の「まちがえた」も含めてこの2曲は非常にライブ感が強いですよね。このタイトルもネガティブな言葉っぽく聞こえるけどネガティブな意味ではないし、ライブを意識してこの2曲の並びなんですかね。

柳沢:まさにですね。「まちがえた」は今作の中で1番最後に出来た曲なんですよ。あれこれ考えずにライブで楽しめる曲が欲しいなと思って。

―その中で“まちがえた”ってワードで曲を作れたところが興味深いです。

柳沢:ぶーやんからこういうリズムの曲というお題があって、それを考えていく中でこれまでのSUPER BEAVERを考えた時に、ライトではあっても無意味ではいたくないなと思っていました。それを踏まえたうえでこのリズムで曲を考えているときに自然に「あーまちがえた、あーまちがえた」というフレーズがでてきたんですよね。

-こういうリズムの曲が欲しかったとのことですが、どういったイメージがあったんですか?

渋谷:一辺倒なアルバムというのはリズムに特徴のない曲がバーッと集まっているかなと思っていて、そういう一辺倒な作品にはしたくなかったんですよね。アルバムの印象が薄くなってしまうと思ったから、それを変えるためにこういう曲が必要だなと。そうなるにはもったいないアルバムだし、色を付ける事ができると一気に膨らむんだろうなって思ったのでずば抜けて明るい曲をお願いしました。すごくありがたいことにたくさんの方に知ってもらえる機会は増えたんですが、SUPER BEAVERをシリアスな空気を持っているバンドと捉われるのは違うなって。そういうことも打開したかったですし、こういう一面も知ってほしくて。

―今話がでたようにSUPER BEAVERというバンドをどんどん認知してくれる人が増えていく中でパブリックなイメージが付きますよね。下手したら伝道師っぽく思われそう。あくまでSUPER BEAVERはバンドマンだから伝えることだけでは違うを目的としているわけじゃないし、楽しい部分はなきゃですよね。

渋谷:悲壮感とか必死感を感じられちゃったりするとバンドとしてというか人として損だと思う部分があったので、自分達の本質的な部分も表していかないと、受け手の印象が一つしかないっていうのはナンセンスだなと。制作面で曲を作ったりアレンジ面でも渦中に入らず1番自分が客観視できるポジションだと思うので、行き詰る現場とか見ているとなんで?って思ったりすることもあります。それの根源を掘り下げていくとみんな同じ事を考えているから、じゃあ最初のでいいじゃんって。客観視できるところにいないと言い当てられない。だから今回のアルバムを客観視した時に、一色足したほうがいいって言いました。

―非常に大切な部分ですよね。渋谷さんのそういう感性が入ることで一気にアクセントになる。そしてそれに続く7曲目がまさかの「シアワセ」。この曲がこのタイミングで入るのは個人的にも嬉しかったです。先日の武道館でも演って、音源として改めて聴けるのはあの場にいた一人としてグッときました。このタイミングで入れようと思った理由を聞かせてもらえますか?

渋谷:coldrainにツアーに呼んでもらった時に、coldrainのメンバーがこの曲を好きで、しょっちゅう演れって言ってくるんですけど、時代も時間も経っているしこの曲を知らない人が沢山いるから、30分間とかという限られた持ち時間の中でこれを1曲演るっていうのはちょっと違和感があって。それよりも今自分たちが聴いてほしい曲を演りたいなていうのをずっと思っていました。その後持ち時間が長いライブで演ってみた時に4人でこの曲に対して感動出来て、めっちゃいい曲だな、今でも歌いたいよこの曲ってなれたんですよ。アルバムに入れようと思えた最大のキッカケでした。友達に言われて披露した曲だけど、それに自分たちが感動出来た事と、今歌っている曲との遜色がなかった事も大きかったです。今これを演れることがすごく良いことだなと。今までこの曲はなかなか日の目を見せてあげられなかったけど、当時の自分たちを一番助けてくれた曲なので、それを武道館でも披露できたし、ここでアルバムに入れる意味がしっかりできたので入れましょうと。

―武道館でもこの曲はひとつピークだったように感じました。

柳沢:ぶーやんも言っていましたけど、ワンマンのセットリストを考えると必ずこの曲が候補に挙がってきていて僕らの頭のどこかにこの曲があって、正々堂々とこの曲を今聴いて下さいって言えるタイミングがあの日だったのかなと。実際にあの日のセットリストの中で他の曲と比べても全く違和感がなかったっていうのも自信になりましたね。

―しかも次の8曲目「美しい日」にも“シアワセ”という言葉が出てきますし、時は流れていますが結局変わってないんだなってこうやって曲を並べてみると分かりますね。答え合わせのような感覚はありましたか?

柳沢:そうですね。変わってなかったです。「美しい日」を作った時って「シアワセ」をこうやって改めて音源にしようなんて全く思ってなかったですもん。ぶーやんの口からポロっとでた “美しい日”という言葉を曲にしようとした時に、シアワセってこういうものなんじゃないかな、今ようやくこういう見方でこう思えるようになりましたって曲で、今作に「美しい日」を入れようって打ち合わせして、曲たちを並べた時に、「シアワセ」は「シアワセ」のままで、今のぶーやんが歌う“あの日から変わらなかった”とか、ほんとそうだよね!って(笑)。クサイ言い方になっちゃいますけど、時を超えて自分たち自身から改めて変わらなかったことを気づかせてもらったというか。

―過去の作品を並べて自己肯定が出来たというか自分で変わってないんだなって思える事って続けてきていないと味わえないだろうし、バンドマン冥利に尽きるひとつの出来事ですよね

柳沢:過去を振り返ってここの事を懐かしがってグッと来ているわけじゃなく、今になってより説得力を持って届けられるっていうこの感じがすごく良かったなって思います。

―そして9曲目の「嬉しい涙」はSUPER BEAVERそのものかなって感じました。歌詞に“歓び”という言葉が出てきますこどこの言葉ってザ・SUPER BEAVERだと思っていて。

柳沢:この曲はまさに今のSUPER BEAVERです。武道館の発表をした時にあんなに歓んでくれるって本当に嬉しくて、バンドって自分たちで始めて、自分たちだけが嬉しければよかった事が、自分たちが嬉しいと思う事をみんなが歓んでくれる、自分たちが悔しいと思う事をみんなが悔しがってくれる。それは嬉しい事だよねって何か月か前にぶーやんと話していたんです。それをそのまま曲にしました。普段はあんまり使わないんですけどこの曲だけにはSUPER BEAVERとしてのワードってことで“歌”と入れたのもそういう理由です。
渋谷:ただの世間話から生まれた曲だけど自分たちのスタンスがしっかりとわかる曲になりましたね。

-ただの世間話とはいえ、そこからこういう曲が生まれるというのはいかに普段からSUPER BEAVERというバンドが共通認識を持っているかがわかりますね。10曲目の「ひとこと」はピアノやストリングスが入ったバラードですね。これも意外でした。ここまでのバラードは想像していなかったです。

柳沢:この曲自体は結構前からあって、ただどう表現するのか迷っていました。でもピアノの曲を収録しようとなったわけではなく、この曲が一番活きる表現を考えたときにこういうアレンジになりました。

―そして11曲目の「なかま」は“あなた”や“君”ではなく“仲間”という言葉で他者を表現するのが珍しいような気がしました。

柳沢:SUPER BEAVERが思う仲間ってこういうのが素敵だよねという気持ちがこの曲には入っています。ぶーやんがライブのMCでも言ったことがあるんですけど、それぞれがそれぞれの場所で戦っていたりするからこそ、そこで感情が交差することの素敵さ、それが結果としてお互いの力へ変わっていたりすることってなかなかないなと思うんですよね。

-この曲を聴いて仲間って良いなぁって純粋に思いました。この曲に限らずですが曲のタイトルは平仮名で、歌詞の中では漢字と使い分けているのが印象強いです。

柳沢:見た目からの伝わり方というのは意識していますね。“不甲斐ない”とか“間違えた”って書くとちょっとネガティブな部分が強くなりそうですし、“一言”とか“仲間”だとちょっと堅い感じですし。タイトルをパッと見たときの印象って結構大事だと思うので。

―そしてアルバムのラストを飾るのは「全部」。以前のインタビューで渋谷さんがこの曲は受け取り手の答えがそれぞれあるからあまりエゴを入れたくないという話をしていました。確かライブで披露する前のお話でしたがその後実際にライブで歌ってみて変化などはありましたか?

渋谷:その気持ちは変わらないですね。器がでっかい曲だなって改めて認識しましたけど、器のデカさっていうのは気持ちをどれだけ受け入れることが出来るかっていう受容するものの大きさがあると思うのでそこら辺は感じましたけど、自分の思っている事や曲に対する印象っていうのは全然変わらないですね。

―作品の説得力が全体的に増したし、バンドとしての成長をすごく感じるんですが歳を重ねたというのは大きいですかね?

渋谷:自分自身の変化としては全くないですけど、この1年間30代になって生きてみて30代は武器になるなと思いました。

―20歳の渋谷さんと30歳の渋谷さんが言う言葉では説得力がやっぱり違うと思うし、人として歩んだものが表れると思うから、年齢を重ねる事は武器になるって凄く感じられますね。

渋谷:本当は一番嫌いなんですけどね、生活環境が武器になるとか今までの生い立ちが武器になるってそんなに関係あるかな?って。生い立ちとかバックボーンを知らないと曲が響かないとか歌う力じゃないと思うし。けどいよいよそういうものが嫌味じゃなく信頼してもらえる要素になってきたのかと思えば、あながち30代を提示するのも悪くないかなって思ってきました。

―そして今作を引っ提げてのツアーは初めてのワンマンツアーですね。

渋谷:対バンが基本的に好きだから対バンでやってきましたけど、各地でもっと長く観たいとか曲を聴きたいって意見を頂いた時に、対バンの方が楽しいって僕たちの気持ちを凌駕するまでのプラスの気持ちが生まれたから、ワンマンでやってみるって面白いかしれないねってなりました。でもワンマンツアーだからって特別な想いを抱くとかはないですよ。対バンであろうとワンマンであろうとライブであることに変わりはないですから。

―そしてツアーファイナルはeggman。

渋谷:武道館の次で面白い所ってどこだろうって考えた時にライブハウスに戻るっていうのは相当面白いんじゃないかって思って。フロムライブハウスを掲げているバンドがライブハウスで普通にやるって面白い、eggmanでやりたいって俺が言いました。全国のワンマンツアーで周るキャパも過去最大規模なのに、ラストがeggmanってことは周りのバンドマンも歓んでくれたし、今一度自分たちの出所を提示したうえで過去最大キャパを周っているっていう事実がそこにあるって事で、これからもっと凄い事をしていくんだろうなってわかりやすいかなって。先への期待値を高めていきたいし常に面白そうだなって思える事を継続して転がし続けていけたら一番楽しいと思います。

-1ライブハウスの人間としてもその言葉はすごく嬉しいです。これからも応援させてください。