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osage interview
- SPECIAL -

osage interview

osageのニューシングル「あの頃の君によろしく / Hertz」​はバンドとしての成長を確かに感じる1枚で、メンバーの明確な意思がしっかりと反映されているのが如実にわかる。そしてなによりインタビューに答える時の目も変わった。バンドが一気に伸びるのはこういう時で、これから先が非常に楽しみになった。

インタビュアー:ブッキングマネージャー窪田

―osageは今までは“なきごと”と共にmurffin discsの一番下の世代だったわけですが、“SherLock”が翌年のオーディションでグランプリを獲得して後輩ができました。

山口ケンタ (Vo,Gt 以下…山):初めての後輩ですね。今までは先輩の背中を見て追いかけるという感じでしたが、これからは後輩を引っ張っていけるようなバンドにもならなきゃなという想いがあります。

―責任感が増しますよね。顔つきも変わった気がします。

山:そう言ってもらえると嬉しいです。

―そして前回のツアー、そして初のワンマンライブについても話を聞いていこうかなと思います。

山:メンバーの脱退があったので、各地で四人でのラストライブという状況だったので、全員気合いが入ったというか、良いツアーが回れたんじゃないかなとは思っています。各地での対バンでの出会いもありましたし、経験としてはとても大きいツアーだったのかなと。

―初のワンマンライブはどうでしたか?

金廣洸輝 (Gt,Cho 以下…金):とにかく楽しかったですね。
田中優希 (Dr 以下…田):僕は始まる前はめちゃくちゃ緊張していました(笑)。そこにいる全員がosageのライブを目当てに来ているわけで、嬉しかったけどプレッシャーがかなりあって。最終的にはとても楽しめたんですけど。
山:先ほども少し話しましたが、四人でのラストライブということで、悲しい気持ちになるかなと思ったんですが、ライブ中は楽しさのほうが上回りましたね。打ち上げでは大号泣してしまいましたけど(笑)。
金:ライブ中は我慢できたんだけどね(笑)。
山:さすがに最後まで我慢は無理だったね(笑)。

―メンバーというかチームでの絆を感じました。

山:四人でのラストライブではあったんですが、決して四人だけのライブではなくて、音響や照明も含めて色々な方と一つのチームとして作り上げることができたライブだったかなと思います。そんなチームでワンマンライブが無事に成功できたっていうのもあって、色々な感情がブワッと溢れてしまいましたね。
田:こうやって一つのチームでライブができるってこんなに嬉しいことなんだって実感できましたし、僕らがしっかり引っ張ってそのチームをどんどん大きくできたらいいなって思います。

―先ほどから話にもでてきていますが、そのワンマンライブでメンバーが一人脱退をしました。新体制になってまだ二ヶ月ほどですが変化はどうですか?

山:まず大きな変化としては僕がベースボーカルからギターボーカルになりました。

―ギターの弾き語りとかは見たことがあるけど、エレキでのギターボーカルのイメージはなかったので新鮮ですね。

山:osage結成前はギターボーカルをやっていて、結成のタイミングでベースボーカルになったので、個人的には元に戻ったというという感覚ですかね。

―とはいえバンドとしては大きな変化ですね。

金:そしてその山口のパートチェンジに伴って僕はバッキングギターからリードギターに変わったのでとにかくひたすら練習をしています。過去の曲も含めて全てですからね。そして今までやっていたコーラスもリードギターを弾きながらになるのでその辺りも苦戦しています。僕がリードギターになってosageがさらに良くなったねって言われないと意味がないと思うので、前任ギタリストを上回れるように必死です。

―サポートメンバーを迎えてのライブも何回かやったと思いますがどうでしたか?

山:まだ僕がギターボーカルとしてのライブはやれていないんですが(取材は3月中旬)、今までは四人で一つのバンドとして、内側からどういうパワーを出すかっていうところだったんですが、サポートギターを迎えて外側からの力を借りて、このギタリストはこういうギターを弾くからこういうライブの組み立て方がいいかもとかを考えたりとか、今までに経験してこなかったことがあるので、新鮮な気持ちになりましたし、楽しかったです。

田:今までになかった感覚でした。
山:改めてギターフレーズの格好良さに気付くことがあったりもしましたね。あとはレーベル内にサポートメンバーを入れてライブをやっているバンドがたくさんいるので、そこは励みになった感覚はありますし、サポートメンバーを入れてのライブということにポジティヴになれました。メンバーが脱退して焦ってしまうかもしれないけど、焦らずに頑張ってとアドバイスをくれた先輩もいて。

―それは非常に大きかったですね。そして新体制になってすぐにリリース。

山:実はメンバーの脱退が決まる前から元々この時期に音源をリリースしようというのは決めていたんです。一般的にはメンバーの脱退があったら、バンドとしての歩みを一旦止めたりとか、方向転換するというパターンも多いとは思うんですが、そこは変えたくないとメンバー全員がそういう想いだったので、4月という新たなことが始まる季節でもあるし、新たなosageで歩みを止めずに進もうとなりました。

―なかなか大きな決断ですよね。悩んだりはしなかったのですか?

田:僕は全く悩んだりはなかったんです。むしろ脱退=活動が止まるという選択肢がなかったです。
金:たしかにそうだったかもね。活動を一旦止めるという選択肢が悪いことだとは思ってはいなかったですが、バンドとして良い流れで進めている実感がある中で今止めるのは得策じゃないなとは全員思っていたと思います。
山:とにかく前を向いて進もうというモードでしたね。

―なるほど。バンドとして良いモードですね。収録楽曲は脱退の流れで変わったのですか?

山:いや、収録楽曲自体は変わっていないです。ただ、パートチェンジもあって、ギターボーカルとしてレコーディングに臨んだので感覚的にはかなり違いました。より歌を強く出そうという意識はありましたし、そのためにメロディーラインやコードを変えたりなどもしました。

―osageのギターボーカルとしてのレコーディングは初だったわけですもんね。

山:さらにベースも自分で録りたかったのでそこも自分でやりました。
金:レコーディングの半分くらい山口だね(笑)。
山:作業量は多かった(笑)。
田:目に見えて痩せたもん(笑)。

―レコーディングのカロリーはかなり高かったですよね。

山:そうですね。レコーディングのパートが多かったというのもあるのですが、それ以上に2曲というボリューム感なので、この2曲に全てを込めるという意識だったのでレコーディングが終わった時は疲労困憊でしたね。

―その中でベースのレコーディングをサポートメンバーにお願いするという考えはなかったのですか?

山:なかったですね。
金:そういう案も出たには出たんですけどね。
山:そこはプライドや意地というのもあったのかなと思います。今まで自分で弾いてきたosageのベースを誰かに弾いてもらうっていうのが想像つかなかったんです。もちろんライブではサポートメンバーの力をお借りしますが、ベースのレコーディングはこれからもやっていけたらとは思っています。

―金廣君もバッキングギターからリードギターに変わってのレコーディングは感覚としては違った物がありましたか?

金:やはりリードギターは花形的なポジションですからね。緊張もしましたし、苦戦した部分もありました。先ほどもお話しましたが、前任ギタリストに負けないように、僕がリードギターになってosageさらに良くなったねって言われるようにという意識をとにかく強く持つようにして。本当はあんまり目立ちたくないんですけどね(笑)。
田:そんな奴は金髪にしないでしょ(笑)。でも金廣はリードギター向きなタイプだと思うけどね。今まで以上にカッコよくなったと純粋に思うし。
山:俺もそう思う。金廣はリードギター気質だよね。

―結果的に上手くハマっているんですね。今作のコンセプトを聞かせてもらえますか?

山:メンバーの脱退の有無は関係なく、新しいosageを見せたいという想いは強かったです。2曲という少ないボリュームで二面性での直球感みたいな感覚でした。表裏での2曲ではなく、横並びでの2曲。これは5曲とかのミニアルバムやもっと大きなボリュームのフルアルバムとかでは出せない両A面シングルという物の魅力なのかなと思います。あとは500円という手に取りやすい価格にして、改めてosageというバンドの音源を聴いてもらいたいというのと、新体制のosageをとにかく知ってもらいたいという想いです。

―アートワークにもこだわりを感じました。

山:今までの僕らの楽曲とかジャケ写って人を感じるというか、対人のイメージがあったと思うんです。今回はそこから抜け出したかったという意識はありましたね。だから視点も今までのような人の目線ではなく、上からの視点にして、あとは二面性というのがキーワードの一つなので、写っている男女も全く別の方向を向いているんだけど、形としては対になるような向きで。今回はそれに合わせて紙ジャケにもしているので、そういった細かいこだわりも手に取って感じてもらえたら嬉しいです。

-そんな新作の収録曲についても聞いていきたいと思います。1曲目が「あの頃の君によろしく」。

山:タイトルは最終的には楽曲制作を進めていく中で決まったんですが、元々のデモ制作の段階でまだ歌詞がちゃんと定まっていない時期から、こういうタイトルかなという漠然としたイメージはありました。しかもメンバーの脱退があってのリリースというタイミングもこの曲にはぴったりかなと。恋愛などに限らず様々なことで過去のことをついつい美化してしまうこともあると思うんですが、前を向いて進もうとしている今の僕たちの心境にもリンクしていて。

―でも脱退が決まる前からこの曲を収録するのが決まっていたというのが不思議ですね。

山:そうなんです。本当にたまたまで。すごい偶然ですよね。
金:でも歌詞はずっと悩んでいたよね。
山:歌詞を書くのにかなり時間を費やしましたね。ここに関しては殻を破れたかなと思います。今までの僕の歌詞だと別れた寂しさとか、哀しさとか、昔は良かっただけで終わっているんですけど、その先というか、過去も踏まえて今自分がどう歩いて行くのかという部分を特に意識したんです。歌詞の世界観とかストーリーとか背景とか、色々と考えて練り込んで書いては消してを繰り返しました。
田:そこは本当に変わったよね。

―そういう歌詞制作をするようになったきっかけはあるのですか?

山:周りのスタッフさんと僕の書く歌詞について会話しているときにポロっと出た言葉がきっかけですね。そういう部分が確かに僕には足りなかったなって思えて。そこから3週間くらいの時間をこの曲の歌詞には費やしました。

―ここまで産みの苦しみがあったのは初めてですか?

山:ここまで悩んだのは初めてでしたね。今までは思い浮かんだ歌詞でそのまま進めていくことが多かったのですが、それだけじゃダメだなって。耳馴染みは良かったりするんですが、いざ意味を深く考えると抽象的すぎて。言い切らずにここから先は聴き手の感覚に任せていたんですが、それだけではなくちゃんとゴールまで書くとか、もっと具体的にするとかで伝わりやすさが変わるかもという意識になったんです。この経験ができたのは作詞家としては大きかったなと思います。

―きっとこれからも産みの苦しみは体験するでしょうしね。あとはこの曲は1分近いアウトロがあるのも特徴の一つかなと感じました。

山:映画のエンドロールみたいなイメージでした。ストーリーをたくさん描いたのでその先の景色のような。音ではあるんですが、映像としての1分という捉え方をしてもらえたら嬉しいです。

―レコーディングなど演奏面での話も聞いていけたらと思います。

田:この曲だけというよりは今回のシングルを通してのことなのですが、このシングルのレコーディングまでは右も左も分からない状態というか、抽象的にざっくりこういう音で録りたいというイメージは頭の中にはあったのですが、それを具現化する方法を知らなくて、ドラマーとしての知識がまだまだ浅かった部分が多かったんです。でももっとそういった部分にももっとこだわって、しっかりやっていかなきゃと思って、エンジニアさんや今回ドラムのチューニングを手伝ってくれた方々に色々と相談して進めていきました。その結果自分の頭の中のイメージからさらに二段階くらい上のそれこそ想像できていなかった音を作ったりすることができたのでそこは全体を通して聴きどころかなと思います。でもこの曲に関しては曲の雰囲気に合わせて、今まで一番音数を削りました。詰め込めるだけ音を詰め込むのが好きだったんですが、この曲に関してはあえて減らして。音数を減らしたドラムも楽しいなって思えるようになったのは個人的には成長できた部分なのかなと思います。
金:僕はギターレッスンに行ったり、アンプ選びに行ったり、今までになかった試みをやってみました。何回も言ってしまいますが、今作のosageのリードギター今までより良いねって言ってもらえないと意味がないので、とにかくやれることを全部やって。でもそのアンプは山口が使ってしまったんですけどね(笑)。
山:鳴らしてみたらめちゃくちゃ良かったんだもん(笑)。
金:あれは驚いた(笑)。でも音作りとかも僕らしさみたいな物は意識しました。色々悩みはしましたけどね。

―ここまで話を聞いただけでも三人それぞれ意識がとても変わったんだなというのは感じます。1年前とかとは大違いかなと。

山:新体制になるにあたっての責任感がそれぞれ増したというのもありますが、環境のおかげというのも大きいかなと思います。レーベル内の先輩バンドのみなさんが本当にカッコよくて追いつきたくてもまだ追いつけなくて、同期のなきごとには負けたくないし、さらに後輩ができたからそこにはカッコいい背中見せなきゃとか。あとはもちろん応援してくれる方々の声も。もっともっとosageというバンドを頑張っていかなきゃっていう想いは日に日に強くなっていると思います。

―そんなosageの新たな一面が次の曲で存分に活かされている印象を持ちました。2曲目の「Hertz」。音色など含めて正直ここまでの攻撃性がosageにあるとは思っていなかったです。

山:完全に振り切りました。尖った部分をこれでもかというくらい。

―こういう攻撃性を持った曲もやってみたいという想いは以前からあったのですか?

山:やりたいという気持ちはありましたね。
金:ルーツにガレージロックみたいなものがあるもんね。
山:そうだね。インディーズ特有の音色尖り方というか、ギターの歪みやうねりみたいな物に胸の高鳴りを感じていた部分は元々ありました。

―でもそれをosageの音楽にはなかなか落とし込めていなかったと。

山:チャレンジしたことはあったんですけど、コピーみたいな感じになってしまっていました。でも今回は二面性というキーワードもあるし、とにかく振り切ろうと思って。曲の原型みたいな物は元々あったんですけど、「あの頃の君によろしく」が完成して、これと対になる曲はどうしようって考えて。

―そんな中この曲はどういったコンセプトで制作を進めていったのですか?

山:僕たちっていわゆる“ゆとり世代”で、SNSが主体になっている部分もあるので、逃げ込める、落ち着ける場所があまりないなって感じる時があるんです。でもその反面匿名性が高くてちょっと特殊で。なんだか息苦しさを感じるような。そういう想いとか気持ちを発散させるような曲を書きたかったんです。それがその人それぞれの個性なのかなって。同世代に向けた曲ですね。タイトルの「Herts」も救難信号のイメージ。もっとSOSというか気持ちを吐き出そうという想いでつけました。

―こういうヘイト感のある歌詞を書くイメージがなかったので意外でした。

山:あるにはあるんですよ(笑)。皮肉を言ってしまうことも多いし、根底にはこういった部分も少なからずありますね。

―なるほど。ではosageの山口というよりは個人の山口の中身という感じですかね。

山:それに近いかもしれないですね。だから意外と思われるのかもしれないです。こういった反骨精神みたいな物をどう表現しようってなった時に僕たちはそれがたまたま音楽でありバンドだったので、それを正しく使おうと思ったんです。バンドならバンドらしく音楽でこういった気持ちも表現してみようと。よりうるさく、より泥臭く。

―全体の音色もこれでもかというくらいの仕上がりですよね。

金:下品ですよね(笑)。
田:ドラムですら歪んでますからね(笑)。しかも1曲目と相反してめちゃくちゃ音数多いですし、もうずーっと叩いています。この曲に関しては三人それぞれがもう好き勝手にやっているのでとにかく荒々しい。
金:このくらい荒々しくしようっていうのは最初から共通イメージとしてありましたからね。

―やってみてどうでした?

田:コンプレッサーをかけすぎてエンジニアさんも限界を超えているって言っていました(笑)。音の波形がとんでもないことになっていて。でもカッコいいからOKって言ってくださったんですよね。もしかしたら本来はNGレベルなのかもしれないです(笑)。
山:でもこのくらい振り切ったからこそ、このシングルの二面性が際立ったかなと思います。
金:osageって音源のイメージだけだと、キレイとかおとなしいバンドだと思われていて、でもライブを見たら音源より全然熱量が高くてビックリみたいな感想をもらうことも多いんです。だから音源の時点でもその熱量とか泥臭さみたいな物を体感してもらえたらという意識は強かったです。ロックバンドなんだぞって。もちろんギャップの良さもあるとは思うんですけど、この曲をリリースすることができてosageというバンドのアイデンティティの一つを示すことができた気がしていて嬉しいです。
山:僕らちゃんと尖った部分もありますよって(笑)。
田:この曲を作れたというのはosageの今後にも活きてくるのかなと思います。

―この2曲でosageというバンドがやりたいことというのが知れた気がしています。

山:そう言ってもらえるのはとても嬉しいですね。osageとしてやりたいことというのがようやく自分たちの中でも固まってきたのかなと。だからこの2曲が完成しての達成感というか充実感がとてもありました。

―その充実感がインタビューを通じてすごく伝わってきました。

山:こんなに楽しめた制作は初めてでしたしね。バンドとして一つ階段を上がることができたと思います。
田:早くみなさんに聴いてほしいです。この2曲を聴いてosageを気に入ってもらえなかったらもうその人にosageを好きになってもらうのは無理かもって思うくらいです(笑)。
山:そのぐらいの自信作ができましたね。

―これからも楽しみにしています。