斜め45°で立てない様な、カッコ付ける事のできないバンドです(笑)。
―2009年に鹿児島で結成。ポップスやロックを基盤にしながらも70年〜80年代のフォークソングを彷彿とさせるようなどこか懐かしい音楽を奏でる”ボヤケルズ”。上京したてという事もあって、この冊子の読者には初めて”ボヤケルズ”を知ったという人も多いと思います。まずは自己紹介をお願いします。
若松 剛(Vo&Gt 以下、若松):バンド名を見てもらったらわかるように、フワッとしたバンドです(笑)。ライブは”楽しく”がテーマで、やっている側がまず楽しんでないとライブを見てくれている人達にも伝わらないと思っていて、ライブ後に”面白かったです”と感想をもらう事が多いんですが、僕達はそんなバンドだと思っています。
みんな鹿児島で別々のバンドをやっていたんですが、元々音楽仲間でもあり飲み仲間だった史郎君(渡口)と打ち上げで”バンドをやろう”と話になってそこから活動が始まりました。
始めは遊び感覚で力を抜いてやっていて、お酒飲みながらスタジオに入ったり、お酒を飲みながら(削除)ライブをしていました(笑)。でも、力を抜いていたのが良かったのか、なかなか良い感じの曲ができて、少しずつ本格的に活動を始めていきました。
-”ボヤケルズ”というバンド名の由来はなんですか?
若松:”ぼやける”という言葉から取りました(笑)。話し合いという名の飲み会が開かれたんですが、やっぱり僕達はカッコ付けた名前は似合わないなーって思って。”ジェット〜”みたいなスタイリッシュな名前は似合わないなーと思って。
-そのバンド名がスタイリッシュかはさておきまして(笑)。
若松:初め、僕の学生の時のあだ名から”赤ちゃんズ”というバンド名を上げたんですが、史郎君はじめみんなから”(お酒を)飲んでいるテンションにしてもダサ過ぎる”と却下になりました(笑)。その後”ぼやける”という言葉が好きだし、僕達らしいという事で”ボヤケルズ”というバンド名にしようという事になりました。
ちなみに”赤ちゃんズ”という名前を諦められなくて、曲名にして残して今作にも入れさせて頂きました。僕なりの供養です(笑)。
-鹿児島は個人的にもすごく好きな街で、桜島を見ながら一日中飲んでいた事もあるんですが、今作のジャケットはそんな桜島を描いたものですね。これは誰が描いたんですか?
若松:僕が描かせて頂きました。上京した事で鹿児島の良さに気付く事ができて、ビルと自然が混ざった風景の中に桜島がどーんと存在している鹿児島の風景を描いてみようという事になりました。この景色はどこかから見える風景ではなくて、僕の頭の中に存在している鹿児島の風景で、今はもう無い建物があったり、建物の位置関係が少し違っていたりしています。
-そんな鹿児島から上京してきたばかりの”ボヤケルズ”の今作、『上京48日目』についてもいろいろ話を聞かせて下さい。
若松:上京してからの日数をずっと数えていて、この作品をつくりだした時が48日目だったんです。鹿児島の頃からの曲もあるし、上京してからつくった曲も入っていますが、鹿児島から上京したばかりの僕達を表現できた作品なのでこのタイトルを付けました。そんな上京48日目につくり始めた曲が「かごしまなまり」という曲なんですが、上京して気付いた鹿児島の事や、今までとは全く違う環境への戸惑いや、僕達に残っている”鹿児島らしさ”を”うた”にしました。
-1曲目の「星をたべる」は情景や風景が浮かび上がってくる様で、ポップな言葉と優しいメロディーに包まれる様な気持ちの良い曲ですね。
渡口 史郎(Ba&Cho 以下、渡口):この曲は2年前の夏頃につくった曲です。
若松:当時、レコーディングしていた鹿児島のスタジオが山の上のすごくのどかな場所にあったんですが、レコーディングの合間にお散歩しながら歌詞を書きました。
-「ダンスが上手く踊れナイト」はタイトルとは裏腹にすごく踊りやすい曲になっていますね(笑)。
渡口:そうですね(笑)。まだ結成当初の遊び感覚の時に気楽につくった曲です。この曲からは少しアルコールの臭いがします(笑)。
-他の曲と少し雰囲気の違う4つ打ちのビートの曲で、聴きやすく作品の中でもすごく印象に残る曲の1つだと思います。
若松:力を抜いた事がすごく良い方向になりましたね。こういう事ができたからこのバンドをやっていこうと思えたキッカケにもなった曲です。
-次の「メロウ」はアコースティック調で、優しく聴かせる曲ですね。
若松:この曲は「ダンスが上手く踊れナイト」より更にもっと前につくった曲で、20歳ぐらいの頃につくった曲です。最近は1人で弾き語りでたまにやっているくらいだったんですが、史郎君が”あの曲はすごく良い曲だからバンドでやろう”って言ってくれて”ボヤケルズ”でやる事になりました。そしたら、初めてスタジオでバンドで合わした時に、芳明君(立元)が何食わぬ顔をしてサラリと良いフレーズのギターを弾くんですよ。この時に「メロウ」という曲の世界観が”ホワァー”と広がってきて、もう一度この曲をやろうと思いました。
立元 芳明(Gt&Cho 以下、立元):まあね。(サラリとした顔をして)
-「うたはしなない」。”ボヤケルズ”を一番感じる事のできる曲ですね。ギターは弾けなくても、ドラム叩けなくても、楽器ができなくても、”うた”は誰でも簡単に共有できるものだと思います。
フワッとしたイメージもある”ボヤケルズ”ですが、この曲からは”うた”に対する”ボヤケルズの強い気持ちとメッセージ”を感じました。
若松:結成当初はお気楽に楽しむ事だけを求めてやっていた僕達ですが、この曲をつくり出した時期から”うたっていこう””伝えていこう”という気持ちに変わりました。
渡口:この曲はライブでもずっとやっていますし、一過性的なモノではなく僕達の中にずっとある”ボヤケルズ”のテーマソングみたいなものだと思っています。僕達の伝えたい事はこの曲にあると思っています。
立元:この曲は変にアレンジせず、シンプルにストレートに伝えるようにしています。
若松:”うた”になれば、遠くの人にもCDやライブで伝える事ができるし、もしその人がその”うた”を口ずさんで誰かにそれが伝わって誰かの心や生活の一部に存在できれば良いなと思うし、またそれが誰かに伝わっていけば、僕の手を離れてその”うた”はずっとどこかで生きていくと思います。
-次の「心灯(こころび)」。”心灯”とはどういう意味ですか?
若松:心の中にあるロウソクの様なモノをイメージしています。この曲も「うたはしなない」と通じるモノがありますが、自分の心の中にあるロウソクからいろんな人に灯火(ともしび)を汲んでいったり、時々自分が”しょぼん”となっている時は逆に汲んでもらったりして、灯火をみんなで大きくしていこうぜ!という曲です。
東京に来て慣れない事も多くて、先の事がわからなくて真っ暗な道に飛び出した様な感覚になりました。でも、その道を心の灯を灯したり周りの人達の灯にも助けてもらいながら少しでも怖く無いように進んでいこう、周りにも灯を汲みながら進んでいこう、というメッセージがあります。
-「いーのか、いーんだ」は自分自答する内容の歌詞ですが、曲の中でも不安でフワフワとしていた気持ちがどんどん固まっていく心情を感じる事ができます。
ボヤケルズで全国ツアーがやれるようにもなりましたが、やれることはどんどんやっていこうという気持ちがあります。大きな会場でワンマンをやったりとか、テレビやラジオなんかにもどんどん出て行こうとか、お祭りや学園祭にもどんどん出て行ったり、”バンドっぽくないからやめておこう”とか選り好みせず、思いつく事は細かい事を考える前に全部やっていこうと思っています。ただ、鹿児島のバンドにはそうやって活動しているバンドも少なくてお手本がなくて”これでいーのかな”と思う事がありました。でも結局、やるしかないですし、自分自身の中で”いや、でもこれでいーんだ”と変わっていった、そんな心情を曲にしました。実はこの曲「いーのか」という曲と、「いーんだ」という別々の曲だったんですよ(笑)。
-えっ。別々の曲が繋がったという事ですか?
若松:そこに生まれるストーリーです(笑)。元々は以前出した自主制作のアルバムの中の別々の曲で、1曲目に「いーのか」という後ろ向きな曲で始まり、最後に「いーんだ」で前向きな気持ちでしめるストーリー性をアルバムの中で表現していたんですが、今回くっ付きました!(笑)。
立元:この曲、始めは頭からおしりまでみんなで全力で歌うというアレンジでした(笑)。
若松:それをライブで試してみたところ、全く歌詞も聞き取れなくて訳がわからないと不評でした(笑)。
-(笑)。
若松:ただ”いーんだ”という訳ではなく、一度”いーのか”というのがあるから僕達らしいと思いますし、より”いーんだ”という答えが意味を持つんだと思います。
-先行してリリースされた鹿児島盤は鹿児島のタワーレコードの総合デイリーチャートで2位を獲得するなど鹿児島で話題沸騰中の”ボヤケルズ”ですが、今回初の全国リリースという事で、そんな”ボヤケルズのうた”が鹿児島から全国に届けられる訳ですが、どの様な心情ですか?
若松:今まで自主制作でCDをつくってライブハウスで1つ1つ届けていたモノが、9月11日には僕達が知らない場所でもCDが並んでいて、僕達が見てない場所でもCDが買えるという状況が初めてなので、ほんとすごい事だなと思います。すごく不思議な感じがしていて、まだ実感がないですね。
松下 千穂里(Dr 以下、松下):バンドで本格的に活動するのが初めてなので、このフリーマガジンの取材もそうですし、今体験する全ての事が初めてなので、すごく良い意味でフワフワした気持ちです。
渡口:この全国リリースは自分のビジョンで想定していた事だったんですが、全国にCDが並ぶことによって、自分達を取り巻く”輪”がどんどん大きくなって自分の手の届かない想定できないほどのモノになれば良いなと思います。
行った事がない土地にCDが並ぶという事で今まで僕達の事を知らなかった人達が、知ってくれる1つのキッカケになれば嬉しいなと思いますし、そういった人達にいつか絶対会いに行きたいですし、そしてその人達と一緒にデッカい”輪”にしていければ良いなと思います。
立元:CDショップに行ったら、勝手に見えやすい場所にCDを置き直すんだろうなと思います(笑)。
若松:まだ上京して間もない僕達ですが、”ボヤケルズ”の活動の幅を広げつつ深みを出す為に上京してきたので、東京で出会うたくさんの人達と仲を深めて助けてもらいながらも進んでいきたいです。東京は戦いの場所みたいなイメージもあるので、もっとバンドを頑張って行きたいです。
立元:東京に来ても変わらずに、音楽をずっと好きで活動していきたいですね。
松下:東京が嫌いだって訳ではないですけど、やっぱり故郷の鹿児島が好きだという気持ちがあります。でも、私達には”帰る場所”があるからそれが強みになって頑張っていけるんだと思います。
-東京に活動の場を移した”ボヤケルズ”のこれからの活動を楽しみにしております!
全員:ありがとうございます!
■ライブ情報
・2013.09/22 (日)イナズマロック フェス 2013
・2013.10/13(日)MIINAMI WHEEL 2013
ボヤケルズofficial Twitter
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