—まずはミニアルバム「LiKE」リリースおめでとうございます!
はっとり:ありがとうござます!
—早速聴かせていただきました!毎回思わされますが、今回のアルバムもすごいですね!
はっとり:どうすごかったですか?(笑)
—僕のインタビュー!?(笑)実際に完成して、手応えはどうですか?
はっとり:いつも完成段階では手応えがあるんです。そういうものを作ってる自負もありますし。あとは周りの方が見てどうかっていうところがりますよね。それでもメンバー全員かなり手応えを感じています。
—意図してかわからないですが、楽曲の幅もかなり広いですよね。
はっとり:そうですね、今回も結構幅がついたなという印象ですね。5曲という内容の中で考えると普通は振り幅をつけずに、今やりたい曲調だったりテンションをコンパクトにパッケージした方が印象は強くなると思うんです。でも今回はあえてこのボリューム感の中でフルアルバムのような幅の広さを出して、自分たちの力を試した部分もありますね。そうした中でも最終的にはしっかりまとまったなと思いますし、聴けば聴くほど好きになってもらえるんじゃないかなとも思っています。
—1曲ずつ聞かせてください。「ワンルームデイト」。これはイントロからマカロニえんぴつですね。
はっとり:これは今までのファンの方も安心して聴いてもらえる曲かなって感じています。ビートルズをはじめとする70年代の空気感を意識して作りました。これはレモンパイのアンサーソングのような楽曲とも言えると思います。アンサーソングと言いますか、続編といいますか。「レモンパイ」が“付き合う前の告白しようかどうしようかと悩んでいた恋”だとしたら、この曲は同棲して暮らしてる幸せを描いた曲です。ワンルームというのがポイントで、ワンルームに住んでたら絶対喧嘩するじゃないですか。喧嘩って男が先に謝らなきゃいけないんですよ、結局は(笑)。その男のイメージっていうのはレモンパイに出てくる男と同じイメージですよね。
歌詞の中にある「フィーリング」という敢えてこういう曖昧な表現をしたのは、最近よりみんなのものになればいいなと思い始めてきたからなんです。リスナーが聞いていく中でいろんなことを想像できるような余地を作りたくてこの言葉を選びました。間隔を測れるのはそれぞれが持った感覚だと思っていて、それは誰もが持っているものなんですが、それをお互いにすり合わせていくそういう美学をすごく意識するようになりました。
—曲の後半には転調が繰り広げられていますね。
はっとり:2回転調するのは初の試みですね。先日大好きな韓国のバンドの来日公演を見に行ったんです。そのバンドの楽曲の中にジョンレノンのようなスケールの大きな愛をテーマにしてる楽曲があって、その曲が最後に2回転調するんですよ。それを聴いた時に無性に感動しちゃって。最近こういう半音上がっていく転調をする曲ってなかなかないじゃないですか。この転調って本当にメロディーが良くないと活きてこないと思うし。この曲は耳に残るしメンバーの反応も良かったし、転調するイメージがしっかり湧いたんですよね。結果的にすごくグッとくるものにできたなと思います。
—なるほど!そして「トリコになれ」
はっとり:この曲は今作の中では一番先に完成していた曲ですね。スタジオワークでみんなでセッションしながら作った曲で、すっごく楽しかったのを覚えています。全てを同時進行で進めていったんですが、バンドのカラーが随所に沁み渡った楽曲になっていったので、バンドのことを歌おうって思ったんです。マカロニえんぴつの自己紹介的な歌ってなかったので、これはもうバンド紹介の曲ですね。そしてこれの真のテーマとしては前作の「OKKAKE」のアンサーソングになります。「OKKAKE」がファン目線の曲だったんですが、今回の楽曲は完全にバンド目線で書きました。
今は「聴いたら必ず虜になってもらえる」っていう自信がすごくあるんです。こういう歌詞が書けたのはここまでの積み重ねの賜物なんだと思います。昔だったらこんなこと言えなかっただろうなって。
あとは今回のアルバムのテーマでもあるんですが、「◯◯っぽいよね」というワードに否定的な人もいるんですが僕はとても肯定的で、知ってるものに例えないと怖くなることもあると思っているんです。子供に雲を教えるときにわたあめに例えて納得させたり。そういう「◯◯っぽい」という意味合いの「like」が好きの「like」になってしまえと思っています。
—イントロのフレーズも印象的でかっこいいですよね。
はっとり:大ちゃん(長谷川大喜)が持ってきたフレーズですね。面白いことをしたいっていう共通の認識がバンドの中で揃ってきたんだろうなって気がしてます。昔感じてた相違が最近はなくて、ユーモアの足並みが揃ってきたなって感じるんですよね。ただふざけるんじゃなくて、深い位置にいる面白いものを探してる実感があります。
—みんなでツアー回って、同じ喜びや苦しみを重ねてきたからこそということもあるんですかね?
はっとり:そうですね。こういういい空気感は大事にしていきたいです。
—そして3曲目「ブルーベリー・ナイツ」。いい曲ですね!
はっとり:これは歌詞の中に「マイブルーベリーナイツ」というワードがあるんですが、このままのタイトルの映画があるんですよ。僕結構映画から感情を得るタイプで、映画のタイトルから言葉を引っ張ってくることも多いんです。この映画は昔付き合っていた女の子が好きだった映画なんですよ、リアルに(笑)
今までは、終わった恋や届かなかった恋を主観で表現していたんですが、今回は自分の恋愛を相手目線で書いてみたかったんです。「OKKAKE」を書いて以降、こうやって汲み取れなかった相手の気持ちなんかを、改めて思って消化していくつもりで振り返ったりしてるんですよね。今はどんな気持ちでいるのかなとか想像したり。もちろんそれにはまっていることなんてないのかもしれないですけど、本人が思っている気持ちに届いてみたかったんです。
そういう思いもあってか、アレンジに関しても歌詞の温度感に寄り添うことができたんじゃないかなって思っています。
今まで、歌詞は切ないのにアレンジはハッピーだったりと、曲の中で作られたギャップがマカロニえんぴつの良さだとも言ってもらったりしていたんです。僕はそれを「照れ隠しのアレンジ」って読んでいたんですけど、今回はそれを一旦やめて、歌詞に漂う切なさや、やるせ無さを音でも表現したらどうなるんだろうっていうチャレンジをしてみたんです。今までのマカロニっぽくない曲にできたと思うし、新しい自分たちの域を見ることもできたなって思いますね。
—昔のアメリカンなピアノポップスの匂いがしっかりあっていいアレンジですよね!流行りもあるかもしれないですが、これが本当に板についてるバンドって多くはないと思う中で、この曲は本当にいい温度感とバランスで構築されているなって思います。ましてこれを英語詞じゃなく日本語歌詞でやれているっていうのが音楽偏差値の高さを証明してるなって。
はっとり:譜割に関しては一番気を遣ってますね。もともと洋楽がすごく好きで、洋楽の滑らかな発音に日本語は到底及ばないと思ってるし、ロックをやってる日本人の永遠のコンプレックスでもあるんですが、それを逆手にとりたいなっていうのをずっと思ってるんです。僕が大好きな日本のアーティストはそれができていて、韻を踏むのが上手かったり滑らかな発音の言葉を選んでいたり。そういう風になりたいなとは常に思っています。
—そこまでこだわり抜いたこの曲が今回のリード曲になっていますね。
はっとり:この曲今作の中で一番最後にできた曲なんです。最初は「STAY with ME」がリード曲候補だったんですが、もう一歩上に行きたいなと思って、時間があんまりない中でもなんとかここまで作り込むことができました。でも時間がなかったというのが良かったのかもしれないですね。シンプルな解釈でシンプルに完成形をイメージできたのかもしれないなって思います。純粋に「いい曲」というものを作れるきっかけになったのかなって。
最終的に自信のあるいいリード曲になったなって思います。でもこれきっとシングルで出すとまた違うんですよね、きっと。こういうミニアルバムのリード曲だからいいんだと思います。ということはやっぱり自信持てる曲になったっていうことだと思います。
—曲順としても3曲目に持ってきてるのはフックもあって面白いですよね。
はっとり:そうかもしれないですね。1曲目でもなく最後の曲でもなく。今なかなかCDで買ってもらって順番通りに聴いてもらうっていうことが減ってしまってるんじゃないですか。でもあえてこの順番で聴いて欲しいですね!
—そして“女”タイトルシリーズですね!「働く女」。
はっとり:大ちゃんと一緒に作るときは「女」タイトルですね。「クールな女」も共作なので(笑)
これは大ちゃんがほぼほぼ作った曲ですね。シティーポップの要素をしっかり出したかったんです。大ちゃんがもともとジャズやフュージョンの畑の人なので、ポップスに関してはすごく疎かったり難しかったりしていたんですけど、最近はかなりキャッチーになってきて、マカロニえんぴつのキーマンになりつつありますね。この曲を彼が持ってきたとき「お客さんに一緒に歌ってもらう」とおう明確なイメージとテーマがあって、大ちゃんからそういう意見が出てくることにびっくりもしたし嬉しかったですね。
歌詞に関しては、メロディーがきっとこうさせたんだと思います。大ちゃんが持ってくるこのおしゃれな雰囲気が、都会で働くおしゃれな女性をイメージさせるんでしょうね。そして今回も主人公は恋が報われてないですね(笑)。
—なるほど(笑)。歌詞中の「っ」の使い所もしっかりとシティーポップ感を感じさせるいい言葉の選び方になってますよね。
はっとり:そうですね、これもこだわりです。その辺の若いバンドには出せないだろう!ってところをしっかり出したくて(笑)自負もありますしね!滑るような発音はやっぱりこだわって出したいですよね。
—こうやって共作で確実にリリースして行けることもバンドとしてはこれからの大きな強みになって行きますね。
はっとり:そうですね。今他のメンバーも曲を書いてストックをためていてくれてるし、もっと全面に出して行きたいですね。
今回は5曲というサイズ感の中で大ちゃんのこの曲がとてもやさしいスパイスになったんですよね。幅の広がりという意味でもこれが最適だったんじゃないかなって思います。
—そして5曲目の「STAY with ME」。
はっとり:これは参考になる楽曲があって、そのオマージュのイメージで作りました。シンセサイザーをバリバリ入れているんですが、ライブでの再現をどうしようかなと悩んでいるところです。とにかくシンセを押し出したかったんですよね。
—でもサビがやっぱりキャッチーでマカロニになってるのがすごいですね!
はっとり:歌い回しとかもあるのかもしれないですね。僕の理想とする言葉やメロディーの中での譜割りとかがそうさせてるのかもしれないです。
自分たちはバンドを組んだ時から、楽曲はロックだけど愛され方はポップスでいたいと思っていたんです。ずっと残して行けるような、長く愛される楽曲やバンドを作りたくて。そういう部分がキャッチーに繋がってるとしたらいいなって思いますね。
—歌詞についても聞かせてください。
はっとり:これは割とこのままなんですよね。そばにいて欲しいって。
ツアーに回らせてもらって過去最多のソールドアウトの会場数を出すことができて、いろんな人たちから高い評価をいただくことも増えて、マカロニを知ってくれるお客さんもきっと増えたんでしょうけど、やっぱりいつかは忘れられていくかもしれないなって。でもずっと愛してもらえるような存在になって行きたいし、曲の中ではせめて強がっていたいなって思うそんな曲になっています。
—アウトロがフェードアウトで終わっていくんですね!
はっとり:これには意味があるんです。以前のフルアルバムの最後の曲もフェードアウトで終わっていくんですが、アルバムの最後の曲をフェードアウトで終わらせるのが好きなんです。次につながっていくような期待感を表現できるような気がしてるんですよね。次の作品への架け橋のような。
—なるほど。そんな5曲りのミニアルバムをもってマカロックツアーVol.7が開催されますね!初のワンマンツアー!
はっとり:そうですね。初めてのワンマンツアーになります。今回もせっかくいい作品ができたと自負ができているので、今回作ったものをライブで丁寧にやらなきゃなって思います。
—ファイナルのリキッドルームへの意気込みも聞かせてください。
はっとり:2018年は新木場COASTやTSUTAYA O-EASTでやらせてもらう機会があったんですが、その規模感のライブハウスに似合う楽曲をたくさん持っているバンドだと思ってるんですよね。だからキャパが大きくなるなら、それはバンドの真骨頂を見せることができるってことなのかなって思えてます。
昔はキャパシティーに対して、お客さんが入るかどうかというプレッシャーと戦っていたんですが、今は来てくれたお客さんに届けられるかどうかが成功かどうかということだと思っているので、その部分での戦いをしたいですね。
—最後になりますが、今回の作品を漢字1文字で表現するとしたらなんですか?
はっとり:「愛」ですね。やっぱりLikeからLoveに変わってほしい1枚なので。今回のタイトル「LiKE」もあえてIだけ小文字にしているのはそういうこだわりも持ってのことなので。
—ありがとうございます。また次の作品も楽しみにしてます!