―本誌初登場となりますのでバンド結成の経緯から聞かせてもらおうと思います。
水上えみり(Vo,Gt 写真右 以下…水):前身バンドから一緒に組んでいて、そのバンドが解散することになったのがきっかけですね。
岡田安未(Gt,Cho 写真左 以下…岡):もう一回二人でやろうってなったんです。
―二人でという形は当初から決まっていたんですか?
水:ベース・ドラムをメンバーとして探すという案もあったんですが、まずは二人でしっかり基盤を作ろうということになりました。
岡:あとは純粋に二人だけのほうが意思疎通とか含めてやりやすいなっていうのもありまして。
水:二人ともひねくれているので笑。
―ひねくれ同士でぶつかることはないんですか?
水:全然ありますよ笑。
―それでも二人でということはきっと波長が合う部分があるんでしょうね。バンド名の由来も教えてください。
水:弾き語りでシングルを作ろうかなと思っていた時に、その作品のタイトルにしたかったんです。その時にバンド名なににするかっていう話し合いもしていて、自分の中ですごくしっくりきていたこの“なきごと”というワードをそのままバンド名にすることにしました。
―murffin discs audition 2018の準グランプリを獲得したわけですが、初ライブからまだ半年足らずという異例のスピード感ですね。
水:そもそも応募した段階ではまだ初ライブすらやっていない時期ですからね。
岡:オーディションに応募することになって急いで音源を作ったもんね。
―オーディションに応募するという結果に向けて動いたということですね。まさに異例。一気にいろいろなことが動いていく速度感に戸惑いはあるんじゃないですか?
水:びっくりするくらい早いですね。
岡:まだまだ慣れていないことも多くて。こういうインタビューも初ですしね。
水:正直戸惑いや不安もあって、今はその速度に置いていかれないように必至という感じです。
―そんな中リリースされる今作「nakigao」。タイトルの由来から聞かせてもらえますか?
水:1曲目の『Oyasumi Tokyo』のサビの“泣き顔が一番綺麗だ”という歌詞からとりました。レコーディングがすべて終わってから決めましたね。
―作品全体のコンセプトも聞かせてもらいたいです。
水:デモCDにも収録していた『メトロポリタン』はオーディションに応募した曲でもあるし、MVも作ったのでこの曲は入れて、なきごとというバンドを改めて知ってもらえるような入門編的な作品にしたかったのと、シングルという収録曲が少ない中でもしっかりいろいろな側面が見られるような作品にしたいなという想いで作りました。
岡:いろいろな泣き顔が見られる作品になったなと思います。
―曲順が結構意外でした。てっきり1曲目は『メトロポリタン』だと思っていたので。
岡:おそらくセオリー通りにいくとしたら『メトロポリタン』か3曲目の『忘却炉』から始まって『Oyasumi Tokyo』で締めるという形だと思うんですが、1曲目ってバンドの印象を決める大事なポジションだなと思って、『Oyasumi Tokyo』が一番バンドカラーに近い曲なので1曲目にしました。
―そこもちょっとひねくれているんですかね笑。
~一同爆笑~
―たしかオーディションでのライブ審査でも応募曲である『メトロポリタン』をやらなかったですよね。
水:そうでしたね。
岡:確かにやらなかったね。
―その時からすでにひねくれていた笑。
水:ひねくれていたというより応募曲は既に聴いてもらっているから、他の曲も聴いてもらいたいなっていう考えでした笑。
岡:セオリー通りにいきたくないっていう想いは二人ともありますね。普通になりたくない。
水:というか普通になれなかったのかな笑。
―なきごとというバンドとしての精神性なんですかね。そんななきごとがリリースする今作の収録曲についても聞いていきたいと思います。まずは1曲目の『Oyasumi Tokyo』。
水:疲れ果てて電車で帰っている時にふと曲が思い浮かんで、携帯にババっと歌詞を打ったのがきっかけですね。本当に疲れている時って家に帰ることすらしんどい時ってあると思うんです。自分の居場所ってどこなんだろうとか考えちゃったりして。そんな泣きたくても泣けない時に無理に励ますのではなく、泣いていいんだよって言える存在っていいなと思ったんです。この曲はそういう存在でありたいなと。
―実話に近いところから出来た曲なんですね。そんなザ・なきごとといえるような曲に続くのは『メトロポリタン』。オーディションでの応募曲でもあったし、僕はこの曲がなきごとというバンドのイメージがすごく強いです。
水:そう言ってもらえるのは嬉しいですね。
岡:えみりが弾き語りで原型を作ってきてくれてスタジオで合わせながら作りました。
―この曲って2番が終わってアウトロで終わるじゃないですか。ラストサビがあってもいいのかなという印象もあって。
水:自分の中ではこれが一番しっくりきたんですよね。あんまり長い分数の曲が好きではなくて。
岡:なきごとの曲って大体3分くらいとかなんです。
水:前身バンドの曲は全部長かったんですよ。それこそ5分以上とか。リスナーとして聴いたときに3分くらいとかの曲が聴きやすいなと感じるようになって。
―その時のイメージが僕の中では残っているのかもしれないです。
水:その時は長い分数の曲を自分で作って、そこでなにか意見があっても自分の考えを変えることができなかったんですよね。これが良いと思ったらもうそれで頑固に突き通すみたいな。岡田と一緒にアレンジとかをするようになって、そこはだいぶ変わりました。ちゃんと丸くなろうと思って笑。
~一同爆笑~
―では3曲目の『忘却炉』についても伺いたいです。
水:“過去”ばっかり引きずっていると“今”が疎かになるぞ!っていう警告の歌です。過去って美化しがちで、思い出ってつい引きずってしまうものだと思うんです。それは自然なことだし、過去があるから今があるというのは紛れもない事実だと思うんですけど、それで人に迷惑をかけたりするのは違うなって。以前そう思った出来事があって、その時の感情で書いた曲です。
―だからかなり言葉が強いんですね。
水:ほかの曲に比べるとそうですね。正直その時のヘイトな感情が詰まってます。それに合わせてサウンドも激し目で。1,2曲目が優しい音色たちなのでこの曲で違う側面を出すことができたかなと思います。しかも“「終わりにしようか。」”というフレーズで曲が終わって、また新しく始まるというイメージで1曲目の『Oyasumi Tokyo』に戻るみたいな感覚ですね。
―3曲というボリューム感も含めてスッと聴ける作品ですよね。
水:10分くらいですからね。短い分、繰り返し聴いてもらえたら嬉しいです。
―新録である『Oyasumi Tokyo』と『忘却炉』は櫻井陸来と河村吉弘というスーパーなサポート陣というところも驚きました。
水:自分たちでも驚きました笑。
―今の若さでなかなかこのレベルのミュージシャンと出会うことはないですからね。
水:そうですよね。相当な刺激を受けましたね。
岡:レコーディングがすごく楽しかったよね。
水:そうだね。本当にありがたいことです。自分たちの楽曲なのに、自分たちでも驚くようなクオリティに仕上げてくださったから。
―そしてレコ発イベントとツアーがありますね。
岡:各地の反応が楽しみですね。
水:ツアーはもちろん初めてですし、たくさんの人に出会うツアーにしたいです。このCDをみんなに届けたいですね。あとはosageと一緒に回るのでバチバチに戦いつつ、同レーベルの同期バンドとして共に成長できたらいいなと思っています。
岡:強くなりたいツアーだね。
水:そうだね。現時点でまだ15本くらいしかライブをやっていなくて、経験が浅いのでしっかりこのツアーで成長したいです。
岡:3回りくらい大きくなりたいね。
水:一気に結構大きくなるね笑。
―でも今の速度感だとありえそうな期待もあります。最後にバンドとしての目標を聞いて終わろうかなと思います。
岡:聴いてくれる方に寄り添えるようなバンドになりたいです。あとは女の子二人で弱そうに思われがちなので強くなりたいです。
水:オーディションの時に武道館でのワンマンを即完売できるようなバンドになりたいって言ったんです。それを必ず実現させたいです。
―楽しみにしています。