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神はサイコロを振らない interview
- SPECIAL -

神はサイコロを振らない interview

ポーション的癒しの属性を持つ救いの歌で、リスナーの涙腺を崩壊させて回る邦ロック新世代層の救世主、神サイの最新作『理 -kotowari-』には、これまでの彼らの活動を裏切ることない極上の5曲が収録され、先日解禁されたリード曲「ジュブナイルに捧ぐ」MVには早くも多くのコメントが寄せられていた。”センター試験前日に勇気出た”など、浮世の若者達のリアルな声が寄せられているネット上を見ても、フロアで静かに涙を流しながらステージを見届けるリスナーが集まるライブを見ても、確実にファンの心にぶっ刺さり、多くの人のどこか虚しかったり寂しかったり、やりきれない思いの類を払拭し続けている彼らの音楽は、バンド結成当初の初期衝動と同じレベルで鋭角に尖りながら、共感するファンの思いも背負って更に包容力を付けて肥大化しているように思える。 

Interview & Text : 鞘師 至

ー 最新作「理 -kotowari-」、タイトルに違わずこの世の理を描写した作品だなぁと思いました。 俗世間的に認識されているマジョリティーを基準とすると、裏に隠れたマイノリティーかもしれないような、本当だけど隠された部分の今の時代に生活している人たちの真実みたいな部分。 それこそ1曲目のタイトルにあるようなジュブナイル(10代中心の多感な世代?)の裏を暴くような歌詞とそれに絡んだ楽曲はなんだか聴いていると泣きそうになりました。 しばらくバンドを続けてきてのこのタイミングの作品、これまでも表現の軸は変わってないと思うんですが、今作ならではの歌詞と楽曲でアウトプットできたもの、ご自身ではどういう部分だと感じてますか?

■ 柳田周作(Vo): 今作では人間一人一人の存在意義や、本来であれば人を守るために作られた法が本当の意味で人を守れているのかとか、文字通りこの世の理に対するクエスチョンみたいなものを提示しています。

ー「ジュブナイルに捧ぐ」(M1)、「不条理~」から始まる歌詞の曲が冒頭を飾る作品となりました。 これは若い世代の人たちへのメッセージ? それとも自分を形容したもの?

■柳田: 「ジュブナイル」はこれからの未来を作っていく若者はもちろん、 大人になってから何かを始めたり、年老いても諦めきれない夢を持っていたり…そんな今を生きる全ての人に向けて書いた楽曲です。
 年を重ねるにつれて言い訳や逃げ方が上手くなるかもしれない、でもいくつになっても自分の心に正直であって欲しいという願いであり、ねじ曲がってしまった大人たちに敷かれたレールを生き抜く若者たちに対しても、どうか自分の為の人生を歩んで欲しいというメッセージです。

ー 楽曲の印象を左右するギターのサウンドは相変わらず瑞々しい音像がメイン。 ロックだったり歪んだ音だったりするコンテンツをあえて透明性に寄ったような音像でまとめているのはどういう判断から?

■ 柳田: 今作のレコーディングも前作に引き続き、アンプはFenderのTone Master、Nush Guitarsのジャズマスと、試しにヴィンテージのGibsonレスポールも使用してみたのですが…。やはりTone Masterでジャズマスを鳴らすと最高なんですよね。歪みもエフェクターは一切使用せず、男のアン直です。音色はジャキッとしているはずなのに、歌と楽曲と混ざると不思議な事に透明感がでるんですよ。楽曲のパワーですね。

ー 「揺らめいて候」(M2)の歌詞、こういう妖艶な描写も柳田さんのリアルと捉えていいんでしょうか(笑)?

■ 柳田: 25年間生きてきて、それなりに人生経験は積んできたつもりです(笑)。

ー 「胡蝶蘭」(M3)ではバンドの生音以外のシンセサウンドも入っていたりしますが、こういう要素は抵抗なく取り入れてますか? それとも結構葛藤ありますか?

■ 柳田: 生音に拘り続ける格好良さみたいなものもありますが、頭の中で流れた音のイメージを具現化するにあたって、可能性を狭めたくはないですね。

ー 地元九州で活動開始、東京での活動が中心になって、という経路の中で巷のオンライン音楽事情ではYoutubeやサブスクなどで音楽をシェアするスタイルもどんどん変わっていってます。 バンドを続けていて、音楽に対して現場で感じる事と、 オンラインで感じる事、現状を聞かせてもらえますか?

■ 柳田: 結局僕らの生み出す音楽って、聴いてもらわない事には意味がないじゃないですか。 ボタン一つでプロアマ問わず自分の作品を世に出すことができ、それに対してリスナーは簡単にアクセスできてしまう。 素晴らしい時代だと思います。 このまま発展し続け、いずれ音楽が人々にとって、より一層身近なものになりますようにと願っています。

ー 歌詞で書く世界は結成当初からずっと苦しかったり切なかったり。 でもなぜか曲に乗った歌声から聞き取ると癒される不思議な感覚。 今作もそういう体温の歌詞が並んでますが、結成してから結構楽曲を世に排出してきたと思います。 吐き出して幾分気持ちは昇華されたりしてますか? それとも変わらない感受性で今作まできている?

■ 柳田: 過去の痛みや悲しみを音楽に変換・アウトプットしたところで、その気持ちが綺麗に消えてくれるなんて事はないんですよね。 むしろ文字に起こす事で自ら追い討ちかけるみたいな所もありますが…(笑)。 それでもなお書き続けるのは、過去を消す為ではなく、過去を肯定する為なのかなと思っています。

ー バンドの特性的に、今バンドシーンで主流となっているようなポジションにも片足突っ込んだ立ち位置でもありつつ、寄り添う気は全く無さそうな独自感覚を大切にしている意思を作品から感じますが、今こういう音楽情勢の我が国日本のエリアにおいてこれから、どういう音楽家でいたいですか?

■柳田: 僕らのやってる事が万人に受けるか、メインカルチャーに食い込めるか、正直イエスとは言い切れないかもしれません。 それでもたった一人誰かの暗闇を照らす事ができるとしたら、未来を変えられるとしたら、それが僕の歌う理由になります。 痛みを分かち合える音楽家でありたいですね。