―エッグマンフリーペーパーとしては約5年ぶりのインタビューです。
コレサワ(以下…コ):初の全国流通盤リリースの時からもうそんなに経っているんですね!ライブ会場でお会いしたりしていたからそんな感じはしなかったですが。
―僕も過去の原稿を見て驚きました(笑)。しかも今回はカバーアーティストとして6Pインタビューという特集なのでよろしくお願い致します。
コ:よろしくお願いします。
―では新年明けてすぐのインタビュー(インタビューは1/6に実施)ということで、まずは2019年振り返ってもらおうかなと思います。
コ:“暇”と“忙しい”のバランスがとてもよかった1年だったなと思います。趣味の時間や遊びにいく時間も確保できて、仕事もいろいろなことをやらせてもらえて、ヴァイオリンとのツアーとかもありましたし、今作の制作も含めてとても充実していたかなと。気付いたら時間が流れていたというような感覚はあまりなかったですし、しっかりと景色を見ながら進むことができたかなと思います。
―実は5年前のインタビューで今後の展望的なことを聞いたときに、全力で駆け抜けるというよりはしっかりと一歩ずつ進んでいきたいということを言っていました。理想に近い形で進めた2019年だったということですかね。
コ:そうですね。とても良かった1年だったと思います。夏も冬もフェス出演もさせてもらえましたし。特にカウントダウンジャパンは1年を締めくくるライブとして緊張もしましたが、良い年越しができたので毎年こういう形でやれたら嬉しいなと思いました。
―5年前に比べると確実にコレサワという名前の浸透度は高くなりましたよね。
コ:5年前は初の流通盤リリースですし、その時よりは少しずつそういう実感を持つことはできていますが、まだ自分の中での理想には届いていないですし、もっともっと広まってほしいなと思っています。まだまだ満足できるような状況ではないですね。
―そして2020年は今作と共にスタートすると。全曲失恋ソングというコンセプトミニアルバムですが、このコンセプトで作品作りをしようと思ったのは最初から決めていたのですか?
コ:いや、ミニアルバムを作りたいというのは想いとして最初からありましたが、内容は曲によって決めようかなと思っていて、その時にちょうど失恋ソングが多く作れたのでこれはそういうコンセプトで固めた方が面白い作品になるんじゃないかなと思って進めていったという感じです。制作としては理想的な流れでしたね。その時に作った曲たちで同一コンセプトでしっかりとまとめた1枚にできたので。他にも失恋ソングはあったんですけど、ミニアルバムという7曲がボリューム感もちょうど良かったし、良いバランスになったかなって。これが12曲だとさすがに重たいですよね(笑)。
―確かに12曲全部失恋ソングはちょっと重いかもしれないです(笑)。今の話を伺っていると制作は比較的自然にスムーズに進んでいった印象ですね。
コ:スムーズだったと思います。まだ事務所やレーベルに所属していなかった頃は楽曲制作に締め切りがなかったのと、それこそ前にインタビューしてもらった時にリリースした『君のバンド』はすでに出来上がっていた作品を収録したのですが、それ以降は結構正直、締め切りに追われるということも多かったんですよね。少しずつ制作ペースに慣れてきたというのはあるかなと感じます。自分の中に馴染んできたというか。今後もこの流れでいけたらいいなと思っています。
―その辺りは2019年を良い形で過ごすことができたからというのも大きいんですかね?
コ:それもありますが、楽曲提供とか作家としての側面だったりとかCMでの歌唱とか、新鮮な仕事がたくさんあって刺激も多かったですし、インプットが多かったからかもしれません。特に楽曲提供は1曲をプロデュースする気持ちで作りますし、なにかしらテーマがあるじゃないですか。そういったこともあって、今作の制作にも良い流れでいけたのかなと思います。1つのテーマみたいな物があって、それに向かって曲を書くというのが私には合っているのかなと感じますね。
―ソングライターとしての成長を感じますね。それでも同一コンセプトで曲によっての色を変えていくのは大変じゃなかったですか?
コ:湿っぽい作品にはしたくなかったですし、でも明るすぎても変だし、そのバランスは色々と考えましたが、楽曲制作自体はそこまで難産ではなかったですね。
―意外な回答でした。僕の個人的なイメージでは同一コンセプトで7曲作るって結構苦労したのではと思ったので。
コ:テーマを誰かに決められていたらそうなっていたかもしれませんが、今回に関しては一つのテーマでどれだけ書けるかという挑戦でしたし、一つのテーマでこんなに書いていいんだって楽しみながらできたので、むしろ今までの制作より苦労しなかった感覚ですね。
―なるほど。今作は様々なアレンジャーさんとの制作だったというのも大きいのでしょうか?
コ:それもすごく大きいですね。そこに関しては本当に良い経験をすることができました。私の引き出しの中にはないものを先輩方はたくさん持っていたので。前作の『コレでしょ』の時にアレンジに関しては正直、自分一人でやることの限界はちょっと感じてしまっていたんです。今回は私が信頼する大好きな方々にお願いできたのもあって、とても刺激的でした。それぞれの方の頭の中はもちろんわからないですが、この人はこういうフレーズがこの曲に合うって思ったんだとか、それぞれの方によって曲の解釈が違ったりして、そこがすごく面白かったですね。
―『失恋スクラップ』という作品タイトルはいつつけたのですか?
コ:失恋○○というタイトルにしたいというのは結構早い段階から決まっていて、その○○に入れる言葉を色々考えて最終的にこのタイトルにしました。今回の7曲は一つのテーマの中でありながらも色々な感情を切り取っていて、写真とかをスクラップにするような感じにも似ていますし、スクラップには潰すとか粉々にするという意味もあって、それが“失恋”という言葉とリンクするなと感じたのが由来ですね。
―語感もいいですよね。
コ:わかりやすいし、読みやすいし、シンプルだけど意味があるタイトルにできたんじゃないかなと思います。
―7曲が色々な感情で表現されていますが、それぞれに主人公がいる感じでしょうか?
コ:曲ごとに聴いてくださる方がどう捉えるのかなっていうのが楽しみというのが強いですね。なので私の中でそこに縛りは作っていないです。こんなに色々なサヨナラがあるんだなって自分で書いてみて感じましたし、聴いてくださる方それぞれの感情で受け止めてほしいなって思います。
ー失恋ソングとなると聴き手との共感ってとても大事だと思いますが、特に気にしたりとか意識した部分などありますか?
コ:今までの楽曲制作では同じ経験をした人に届いたらいいなと思って作っていたんですが、今作に関してはその経験をしていない人でもその経験をしたような感覚になる曲を作れたらというのは意識しました。そこは今までとは変わった部分ですね。具体的には本当は歌詞についてもう少し言葉を詰め込みたかったところもあったのですが、そこは詰め込みすぎず、一歩引いたような立ち位置で書いてみたりしました。
―僕はコレサワさんの初期の頃も知っているのもあってか、個人的に勝手なイメージを持っていて、もう少し毒っ気があるのかなって思ったんです。
コ:なるほどなるほど。そこは意識した部分ではありますね。自分が好きなように作りたいというアーティストとしての気持ちはもちろんありますが、それと同時にみんなが聴きたい曲を作りたいという気持ちもあって。だから今回は一歩引いたような立ち位置で書いてみたりもして。これで聴いてくださる方が喜んでもらえるならそれも一つの答えだなって。なので実験的な意味合いも今作は強いんです。コレサワというアーティストの次の指針にもなるのかと。私の好きな、ディテールがすごい細かい曲と聴きやすさとかわかりやすい曲を良いバランスで成立させられるようになりたいなって思っていて、今作ではそこが出来たと思うので。
―少しリアルな話になりますが、アーティストが作りたい物と求められる物のズレって少なからずありますもんね。
コ:そこが音楽の面白さでもあると思うんですよね。私はおばあちゃんになっても音楽を続けていきたいって思っていて、そのために、たくさんの方に聴いてもらえるためにはどうしたらいいかなとは考えています。でもアーティストとしてのプライドというか妥協はしたくないし、そのバランスが今作では良いところで成立できたかなと思うので、そういった意味でも今作をみなさんがどう受け止めてくれるかが楽しみです。
―そんな今作の収録曲について1曲ずつ伺っていきたいなと思います。まずは1曲目の「Day by Day」。
コ:この曲は思わせぶりをしてくる男の子に対して、そんな男の子にばかり時間を費やしていたらもったいない!、尊い時間を無駄にできないよっていうテーマで作った曲ですね。思わせぶりはやっぱり良くないですよ(笑)。そういう人に振り回された女の子を何人も見てきたし、私もそういう経験あるし。そんな状況に今いる女の子がいたら吹っ切れるきっかけになったらいいなと思います。
―なるほど(笑)。
コ:実は3,4年前にはこの曲の原型はあったんですよ。過去に一度だけライブでやったことがあったんですけど、そこからずっと封印していて(笑)。今作に収録したいなと思って大好きなHelsinki Lambda Clubにアレンジをお願いしたらとてもすごいサウンドになるだろうなって。そうしたら想像以上の出来映えになりました。やっぱアレンジってすごいなって思いました。聴きやすいし、1曲目っぽい雰囲気もちゃんとあるし、この曲が生まれ変わっていなかったら今作に収録できていないと思います。
ーそして2曲目は「最後の彼女になりたかった」。
コ:この曲はまさにタイトルの通りの曲ですね。女の子って一般的には結婚すると名字が変わるじゃないですか。だから好きな人ができたときに、その人の名字に自分の名前が合うかどうかとか私は結構考えちゃうんです。私の周りにも既婚者がちょっとずつ増えてきて、10代の頃の恋愛みたいなただの“好き”だけじゃなく、でもその頃って好きな人できたら結婚するとかってすぐ思うんですけどね(笑)。私もそうでしたし。今はその時よりリアルに将来のこととか色々考えるようになった私がいて、そんなところからこの曲が生まれました。タイトルが最初に思い浮かんでそこから広げていった感じですね。
―女の子ならではの視点ですね。
コ:でもみんなきっと経験あると思いますよ(笑)。字画がいいかとか気にしたり(笑)。だからいろんな世代の方に聴いてもらえたら嬉しいです。
―もしかしたら女性の共感ナンバーワンかもしれないですね。
コ:そうなってくれたら嬉しいですね。
―そんな曲に続くのは「恋人失格」。
コ:「たばこ」のアンサーソングとしてみゆはんちゃんに楽曲提供をさせてもらった曲のセルフカバーです。
―「たばこ」でコレサワさんを知った方も多いでしょうし、代表曲とも言える楽曲のアンサーソングを書くのってプレッシャーじゃなかったですか?
コ:「たばこ」ってみなさんに知ってもらうかなり前からあった楽曲で、ずっとライブでもやっていたし、書いた当時の気持ちというよりは、ある意味他人としてアンサーソングを書いたので実はあまりプレッシャーはなかったんですよ。「たばこ」を書いた直後に大きい反響があって、そこでアンサーソングを書くことになっていたら全然違っていたとは思いますね。あとはみゆはんちゃん以外の方への提供だったらもっと違っていましたね。みゆはんちゃんと話している過程で生まれた曲だったので。出会いやタイミングがよかったんだと思います。
―あとは楽曲提供だったからよかったかもしれないですね。「たばこ」のアンサーソングとして自分が最初に歌うという形だったら違ったんじゃないですか?
コ:そもそも楽曲提供という形でなければアンサーソングを書こうとも思ってなかったです。そういった意味でもこの曲を書くきっかけをくれて感謝ですね。みゆはんちゃんは“僕”という言葉が似合う子ですし、この曲にぴったりですよね。
―セルフカバーしてみてどうでしたか?
コ:みゆはんちゃんに合うようにキーも作ったので改めて自分で歌ってみたらとても難しかったです(笑)。ライブでやるととても喜んでくれるのでそれも嬉しいですね。
―余談ですが2曲続けてやったことあるんですか?
コ:ないですねー。どちらもバラードだし繋げてやるのはなかなか難しいかなって。
―僕はこの曲を聴いて改めて「たばこ」も聴いたので2曲繋がっていたら面白いのかななんて思ってしまって。
コ:それは嬉しいですね。ありがとうございます。きっとそういう方も他にもいるでしょうし、いつかチャレンジしてみようかな。
―期待しています!そして4曲目は「帰りたくないって」
コ:これは曲の内容そのまんまなのですが、元彼の家に荷物を取りに行く女の子の歌です。
―ありそうなシチュエーションですよね。
コ:経験者多いと思うなぁ。私も経験ありますし(笑)。やっぱ未練があると帰りたくないって思ってしまう自分と帰らなければいけないってわかっている自分。自分VS自分という葛藤がアレンジでも表現できたらいいなと思って作りました。
―他の曲も含めてですがコレサワさんの実体験が多いのですか?
コ:実体験から膨らませていくのが多いですね。その方が作りやすいというかリアリティがでますし。かなり身を削ってしまいました(笑)。
―削りましたねー(笑)。
コ:でも顔を出してないからそこは少し楽ですね。
―そっか。確かに顔を出していたらもっと恥ずかしさもありそうですもんね。
コ:このリアリティのある内容を聴いて私の顔が思い浮かんでしまうのは嫌なんですよね。そこは人間らしさみたいなものが出過ぎてしまうのは避けたくて。
―なるほど。そこにリアルと非リアルの面白いバランスがありますね。コレサワさんならではの世界観。
コ:そう言ってもらえるのは嬉しいですね。
―5曲目は「センチメンタルに刺された」。
コ:センチメンタルってずっと側にいると思っていて、それが急に牙をむけてくるのか、温かい気持ちにしてくれるのかの違いだと思うんです。で、この曲はその前者の方。センチメンタルに刺されてしまった女の子の歌です。
―この曲もアレンジャーさんとの制作ですね。
コ:過去にストリングスのアレンジだけやっていただいたことがあったんですが、とても大好きなアレンジャーさんだったので、1曲丸ごとやっていただきたいなと思っていたのでそれが叶って嬉しかったです。
―アレンジャーさんの選定はどういう基準で進めていったのですか?
コ:曲を作っている段階で思い浮かんだのがほとんどですね。そこのフィーリングは大事にしました。みなさんもれなく私の想像を超えたアレンジをしてくださいました。
―この曲はMVもありますが、アニメーションのMVってコレサワさんも案を出していくのですか?
コ:必ず打ち合わせはしますね。今回は部屋のソファーでリモコンを持って歌っている姿の動画を送って、私のイメージを伝えて。ウチボリさんにしっかりコンセプトを伝えることは大事にしています。そこのシンクロ率はどんどん高くなっている感覚はありますね。
―そして6曲目は「やっぱり泣くよ」。これはコレサワバンドでも演奏している藤澤有沙さんのアレンジ。
コ:彼女の影響でK-POPをよく聴くようになって、私も打ち込みの曲を作ってみたいなって思ったんです。この曲が出来たときに彼女のピアノやキーボードが入ったら良いだろうし、アレンジも任せてみたいなって思ったんです。ずっと一緒にやってきたメンバーであり、リスペクトできる音楽家であり、友達でもある彼女と改めてこうやって制作をできたのは嬉しかったです。向かい合って打ち合わせしたのはすごく恥ずかしかったですけど(笑)。
―きっと彼女も嬉しかったでしょうしね。
コ:とても愛情を感じましたね。そのおかげもあって新しいコレサワの世界観を作ることができたと思います。
―曲のテーマはどんな物ですか?
コ:7曲の中で一番別れを受け入れて、相手に感謝をしている女の子の歌ですね。この子は健気で泣けてきます。
―“やっぱり”という言葉がさらに泣けてくるなぁという印象でした。
コ:やっぱり別れって辛いですからね。
―そして今作のラストになるのが「バカでしょ」。
コ:冷静に考えたらなんでこんなことになっちゃったんだろうっていう、まさに“バカでしょ”って思うようなことを考えちゃうんですよ。この曲はそんな感情を表現しました。この曲はラストにしたいってずっと決めていました。一番シンガーソングライターっぽい曲かなと思っていて、しかもアレンジをしてくれた渡辺シュンスケさんがまさにエンディング感のある曲に仕上げてくださって。一番後ろ向きな女の子の曲だし、7パターンのサヨナラをスクラップした今作の最後にはぴったりの曲になったかなと思います。
―そして今作をひっさげてのツアーも決まっていますね。
コ:今までで一番ポップなツアーになるんじゃないかなって思っています。作品のテーマは失恋なんですけどね。今までツアー名が日本語だったんですけど、今回は英語で、とてもツアー感があるなって思っています。あとは去年のツアーでワンマンライブへの意識が変わったんですよ。今までももちろん楽しかったんですが、一気に吹っ切れたというか、楽しさが全然違うんです。自分の中で徐々にやり方がわかってきたんですかね。そこで得た物を今回のツアーではさらに爆発させたいなと思っています。
―最後に2020年の抱負を聞かせてもらいたいです。
コ:遊んで仕事して充実した年にしたいです。あとは色々なことに対してめげずに取り組みたいなと思っています。きっと初めての経験をすることもあるだろうけど、しっかりと自信を持ってやっていきたいなと思います。今作が受け入れてもらえたら自信は深まると思うんですよね。だからまずはこの作品をたくさんの方に聴いてもらいたいし、広まってくれたら嬉しいです。
―余談ですが5年前に“素敵なクズ”になりたいって言っていました(笑)。
コ:そう考えると大人になったなぁと思いますね(笑)。尖っていたなぁ。。。
―あんまりそういう印象はなかったですけどね。
コ:それならよかったです(笑)。
―これからの活躍も楽しみにしていますね。
コ:ありがとうございます!これからもよろしくお願いします!