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渋谷龍太 from SUPER BEAVER 愛すべきマイナー記念日達
- SPECIAL -

渋谷龍太 from SUPER BEAVER 愛すべきマイナー記念日達

7月16日
『外国人力士の日』 1972年のこの日、大相撲名古屋場所でハワイ出身の力士、ジェシーこと高見山大五郎(東 関親方)が外国人力士として初めて幕内優勝を果たしました。 最高位は関脇止まりでしたが、幕内通算出場や幕内通算連続出場などの記録を残しています。
「タベテミタイ」
「いや、やめとけよ」
「タベタイ」
「俺は、おすすめはしないけどなア」 そう言いながらも、目の青い男の前に小鉢を差し出した。おずおずと小鉢を受け取る姿を見て 男は「おすすめはしないけどなア」と繰り返した。
青い目の男は、改めて手を合わせた。
「イタダキマス」
「お前、偉いな」 きちんとした形で持った箸を小鉢に向けて構える。反応が楽しみで男は、青い目の男の顔を覗 き込んだ。
「ンン」口に入れるなり顔を歪めて、両手で顔を覆った。
「あはは、そうなるわな」 青い目の男は急いでお茶を口に含んだ。少し涙目になりながら、目の前のおしぼりで口元を 拭った。
「マダ、クチノナカガ、キモチワルイ」 「まア、な。もし俺がよその国行って、こんなもん出されたら絶対手なんかつけないよ」 「ナットウ」
「そう、納豆」
「誰ガハジメテ食ベマシタカ」 「いやア、わかんねエな。こんなにネバネバになってもまだ食えると思った誰かさんが食ってみた んだろ」
「ドウシテ」 「それは流石にわかんないわ、貧乏性なのか、それか腐ってもまだいける、と思ったんだろ」 「粘リ強イ」
「お前、うまいこと言うな」 いつもは混雑している定食屋であったが、昼飯時というには少しだけ遅めの時間だったので人 はまばらであった。いつもよりゆっくり腰を落ち着かせることができたので、お茶のお代わりを 二人分注文した。
「腐ッテルト言イマシタカ」
「えエと、正確には発酵っていうんだけどな」
「腐ッテルト、何ガ違イマスカ」 青い目の男の前から小鉢を取り返して、男はご飯の上に納豆を全てかけた。「腐ってる、は害 がある、発酵、は害がないってところかな」
「ガイ」

「うん、えエと。腐ってるは悪い菌。発酵は良い菌」
「ワカリマス」 青い目の男に頷いて応えてやると、男は納豆ご飯を一気に掻き込んだ。 「日本人は納豆のいい菌のおかげで、いつでも元気いっぱいだよ」 「ダカラ、オリンピックデモ、トレル」
「何?」
「キン」
「お前、なんなんだよ」
「マダ、クチノナカガネバネバデス」 「茶飲め、あっつい茶飲みな。もう納豆食べたくなくなったろ?」 青い目の男はゆっくりお茶を飲んで頷いた。「モウイイ」 男は笑うと、やおら立ち上がった。二人分の会計を済ませ再び席に戻ってくると、上着を羽 織った。青い目の男はその姿を見て立ち上がった。
「ゴチソウサマデシタ」
男と、店主にそれぞれ頭を下げる。
「お前、偉いな」青い目の男の肩を叩いた。「行くか」
「ドウシテ、ヒロマッタンデスカ」
「まだ納豆の話してんのか?」
「ハイ」
「なんでだろうな。うまいからじゃねエか?」
「オイシクナイ」
「あはは。そうだよな。本当になんであんなものが広まったんだろうな」
「誰カガ」
「ん?」
「糸ヲ引イテル」
「お前、本当は日本人だろ」
「スミマセン」
「謝ることじゃないよ、頭が良いんだろうお前は。才能が光ってるよ」 暖簾をくぐって店を出た。二、三歩歩いてから振り返ると、青い目の男が店の前で立ち止まっ ていることに気がついた。
「どうした」
「才能ガ光ッテイルトイウコトハ」
「ん?」
「ハッコウシテルトイウコトデスネ」
「うるせエよ」