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テスラは泣かない。 1/f
- SPECIAL -

テスラは泣かない。 1/f

《1/fの揺らぎ、樹上のホワイトノイズ。羊水のなかで聞いていた、それ。》 吉牟田 直和[Bass] 

 シベリアが美味い。シベリアはシベリアでもあのロシアの凍てついた大地のことではない。お若い方はご存知ないかもしれないが、カステラ生地で羊羹をサンドしたあの魔性のお菓子のことである。先日、コンビニに行き、レジ脇のセールコーナーに「シベリア/バナナ味」なる商品が置いてあったのをヒョイっと出来心で拾ってしまったのだ。ガツンとくるあの糖分。羊羹の深い甘味が、洋菓子のネットリとした甘味と混じり合って濃厚に舌を刺激する。ああ、なんという甘美!ところで、私は和菓子が好きだ。何かの折に、例えば、誰かにきちんとした身なりで挨拶しに行く時などには、和菓子屋さんにひょいと寄って新作を味見しつつ、手土産と自分用の和菓子を選ぶくらいには好きなのである。そんなことを考えていると、ふと、鹿児島の郷土菓子のアクマキという和菓子も長いこと食べていないことを思い出したりもした。食への夢想が続くのは、きっと腹が減っている証拠だろう。
 さて、私は和菓子も好きだが、白米もまたその誘惑に抗えた試しがない。どうもこの糖分というものは自分の胃袋をガッツリ掴んで離さないものであるらしい。齢三十三。もちろん、こんな生活スタイルでは太る。逆ストイックな食生活。今までならばリハに、遠征ライブに機材運びにと肉体労働であったものだからまだ良かったものの、この自粛生活である。しかも、人に会う予定自体がないものだから、頑なに見て見ぬふりを続けてきた丸二ヶ月。ついに、私は体重計に乗った。
 そこで受けた衝撃は、しばらく忘れることができないだろう。過去見たことのない数値。友人と遠隔で飲んでいて、「まあ、増えていても二〜三キロだろう。ごっつぁん、ごっつぁん」と、軽い気持ちで体重計に乗ったのだが…。すぐさま私は飲んでいたお酒をシンクに捨てた。「ちょっと俺、走ってくるわ」ほろ酔いのまま、運動服に着替えて走り始めた。なんせ、「この体重計ずっと使ってないし壊れてるんじゃねえ?」と本当に思ったくらいの増加だったわけである。
 さて、そんなこんなで六月も終わる。ようやく身体も絞れてきて、少しずつ東京の社会生活も解禁されていくわけであるが、やはりライブの未来はなかなか見えない。ライブさえあれば、ライブさえあれば…どれだけ白米を食べてもなんとかなるというのに。というライトな恨み言にさせてもらう。またいつかライブハウスで会いましょう。

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《1/fって何すか。》 村上 学[Vocal/Guitar] 

 2020年も半年が経ちました。今年の流行語大賞を決める委員会の人たちとか、今年の漢字一文字を書く清水寺のお坊さんはさぞかし気が進まないだろうなと思います。コロナにまつわるニューフレーズが溢れて選びきれないし、選んだところでうんざりさせてしまう。

そんななかで、10代20代が選ぶ上半期の流行語にこんな言葉がランクインしていました。

「ぴえんこえてぱおん」。

冴えている。とてもキャッチャーだし、なんだか悲しい気持ちもふっとんでいきそうだ。涙を流す様子や、悲しい気持ちを表す用語「ぴえん」、そしてその上位互換にあたるのが「ぴえんこえてぱおん」です。「ぴえん」が流行り始めたのも最近だそうですが、世の風潮を受けてなのか、あるいはそんなの全く関係なく独自の進化を経て誕生したのか、「ぴえんこえてぱおん」は生まれました。
「あーライブができない、ぴえんこえてぱおん。」なんて言えるほど、実際のところはあっけらかんと出来るはずもないし、不安や焦燥感はこれまで経験してきたものとは比べることさえできませんが、なんだかこうやって文字にしてみてみると、「ぴえんこえてぱおん」を更に超えた向こうが側に、何かが待っているような不思議な気持ちになります。あるいは、とりあえずその向こうに行ってみようと、そんな気持ち。(多少は自分を騙す努力と技術も必要)
「ちくしょー!」「くそったれ!」と拳を握った後に「ぴえんこえてぱおん。」と呟いてみると、ほんの少しだけ、心を覆っていた雲が散っていくかもしれません。もちろん、余計にイラっとする場合はすぐにやめてください。
 本来「ぴ」の後であれば「ぷ」なのに、あえて「ぱ」に戻ってる、その柔軟さに、おじさんは脱帽です。そのフレキシブルな対応力を見習って、歩きつづければ、「ぱおん」の向こう側に、思いもよらぬグッドニュースが待っているかも。しれません。

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[テスラは泣かない。]

L→R
吉牟田直和(Bass)/飯野桃子(Piano&Chorus)/村上学(Vocal&Guitar)/實吉祐一(Drums)
印象的なピアノのリフレインを武器に、圧倒的なライブパフォーマンスで各方面から脚光を浴びる、鹿児島発4人組ピアノロックバンド。インテリジェンス溢れる音楽性と、エーモショナルなライブパフォーマンスを融合させた、他の追随を許さない孤高のロックバンドである。


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