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テスラは泣かない。 1/f
- SPECIAL -

テスラは泣かない。 1/f

1/fの揺らぎ、樹上のホワイトノイズ。羊水のなかで聞いていた、それ。》 吉牟田 直和[Bass] 

  音楽というものは本当に楽しい。そりゃきついこともある。色々と捨てないとやっていけないところもある。ドラッグのようなものだと表現した人間は、よく言ったものだと思う。体も心もボロボロになっても、やめられないような危険性がある。その代わりに得られるものはわずかだ。いや、嘘だ。そこにはロマンチックな何かがある。ただ、その不定形のナニカはいつだって手に入れたと思えばすうっと霧になって消える。それがミュージシャンの人生だ。

 人間という生き物が、どこまで理性的に生きている動物なのかは知らない。ミュージシャンでも小説家でも芸術家でも発明家でもなんでも良いが、そのような職を目指すような若者は誰しもが「業」のようなものを抱えている。そのような人間は一定数いる。何かを目指していなければ生きていけないような者。何かを作り上げていくことでようやく明日の朝日を感じられる者。そんな人間は結局、そこに辿り着く。それでいい。そうであって欲しいと思っている。ただ、現実というものは残念ながら悲しい。育ってきた環境がある。一般的な社会常識がある。このままで良いのだろうか?という漠然とした不安がある。それでも、叶うならばそこに飛び込んで欲しい。夢を目指して身を投げて、そしてその場所から消えてきた人間を見てきたし、私自身も今その場所から一時退場をしようとしている人間である。そんな人間が言えることは、ただただ、「大丈夫だ。みんななんとかやっている」その一言に尽きる。

 今ここにないナニカを探す人間というのは、絶対的に社会は必要としている。(世間の風当たりは強いし、生活も厳しいが、そんなことは無視して粛々と動け)可能性のどぶさらいのような職業なのだ。今はまだないナニカを追う人間がいなければ、世界は発展をやめて終わる。夢を抱えて生きていいのだ。色々な挑戦に飛び込んでいいのだ。あーああ、うだうだうるせえな。と、現実に唾を吐いても大丈夫なのだ。あなたを求める世界は確かにそこにあるのだ。と、前向きな言葉を言う。それは同時に自分のために言っていることでもある。私がその当時に伝えて欲しかった言葉を書いている。大丈夫だ。なんとかなる。と言うか、まあ、なんとかしろ。とりあえず言えることは、売れないミュージシャンとして過ごした10年間でも、死ぬほど楽しかったよ。あの時音楽をはじめていつの間にか東京に出てくることができて正解だったよ。ここからの人生も、なんとかして生きていけそうだよ。この言葉が、あなたの背中を押してくれることを祈る。

 

1/fって何すか。》 村上 [Vocal/Guitar] 

 今更ながらBluetoothのワイヤレスイヤホンを買った。テニスの大坂なおみ選手がbeatsのワイヤレスイヤホンをつけて音楽を聞いているのを見て、憧れてしまい衝動買いしてしまった。音質どうこうはサンレコなどの雑誌をご参照ください。で、結果。とても便利である。ジョギングするときに使うことがほとんどなのだが、やはり音楽を聞きながら走ると、苦しさが半減する。これは逆にメンタルを鍛えるには向いていないのかもしれないが、ライブ前の体づくりとしてはOKとしている。

 ジョギング中のプレイリストも作った。洋楽のヒップホップやテクノが中心で、邦楽は歌詞に気を取られ集中できないので除いている。しかし、その中で1曲だけ、プレイリストに入れている日本語の曲がある。松たか子の、いや松たか子さんの「イントゥ ジ アンノウン〜心のままに」である。かの有名な映画“アナと雪の女王”の「2」の方のテーマ曲だ。“アナ雪1”のテーマ曲“Let it go”(♪レリゴーレリゴー)より残念ながらあまり流行らなかった曲である。しかし私はレリゴーより、圧倒的にこの「イントゥ ジ アンノウン〜心のままに」が好きだ。曲調もアレンジもセリフっぽいところも全て。原曲Let it goが曲中に「♪レリゴー」を12回歌うのに対しInto the unknowは「♪イントゥジアンノーン」を6回しか歌わない潔さも好きだ。とにかく、大好きな曲の一つである。日本版の歌詞の中には「♪未知の旅へ〜踏み出そう〜」という部分があり、これは原曲の「Into the unknown(♪イントゥジアンノーン)」の和訳であり、この曲のメッセージの核となっている。 

 プレイリストをシャッフルして玉川上水に沿ってジョギングをしていたある日、いつもの折り返し地点で私は踵を返し、自宅方向へ帰ろうとしていた。その瞬間、松さんは私の耳の中でこう歌ったのだ。「未知の旅へ踏み出そう」と。すると私は、無意識にいつものジョギングコースを外れ、その先へ向かい走り始めた。見慣れぬ景色に孤独が襲うが、それでも走り続けた。まるで映画フォレスト・ガンプのフォレストように。ドラマいだてんの金栗四三のように。

 音楽は人を突き動かす魔法を持つ。音楽は、人を未知の世界へ連れて行く。

この先、どんな未知の世界が待っていようが怖くない。僕らには音楽も、そしてそれを共有する愛すべき大切な仲間がいる。なんせ私は、一度もアナ雪を見たことがないのだから、きっとそうに違いない。

 

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[テスラは泣かない。]
L→R
吉牟田直和(Bass)/飯野桃子(Piano&Chorus)/村上学(Vocal&Guitar)/實吉祐一(Drums)
印象的なピアノのリフレインを武器に、圧倒的なライブパフォーマンスで各方面から脚光を浴びる、鹿児島発4人組ピアノロックバンド。インテリジェンス溢れる音楽性と、エーモショナルなライブパフォーマンスを融合させた、他の追随を許さない孤高のロックバンドである。
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