―今回はMADOKAさんがヒロインとして出演した「二度めの夏、二度と会えない君」の主題歌、劇中歌をまとめたアルバムということですが、まずは映画に関してのお話しを伺えたらと思います。映画出演の話を聴いた時は相当驚いたんじゃないですか?
MADOKA(写真中央 VO,Gt 以下…M):まさかのお話しでしたね。どうして私のところにオファーがきたんだろう!?って(笑)。
―不安も大きかったのでは?
M:過去に演技の経験があるわけではないし、最初はすごく不安もありました。でもせっかくこうやって私を選んでくださったのなら挑戦したいなと思いましたし、たんこぶちんというバンドにとっても今まで私たちを知らなかった方々に知ってもらえるかもしれない大きなチャンスだなと思って、全力で挑みました。
―実際撮影に挑んでみてどうでしたか?
M:撮影に入る前に数か月演技指導もしていただいて、自分の中でのイメージをしっかり膨らませて臨むことはできたのですが、やはり撮影現場に入った瞬間は緊張しました。でもたくさんの方々が一つの作品を作るために同じ方向に向かって進んでいく感覚はすごく楽しかったです。
―ボーカルという表現者として今後のバンド活動にも活きてくる部分もありそうですね。
M:歌うときの感情移入が以前より強くなった感覚がありますね。ボーカルとしてすごく良い経験をさせてもらえたなと思っています。
―今作はたんこぶちんのMADOKAであり、吉田円佳が演じる森山燐である部分もあると思うんですが、MADOKAさんの中で切り替えるポイントなどはあるのでしょうか?
M:完全に切り替えるというわけではなかったですが、今作においては森山燐としての比重が大きかったと思います。『遠距離恋愛爆撃ミサイル』と『夏のおわりに』以外の曲はたんこぶちんとしてというより映画に出てくるPrimemberの森山燐としての感覚が強かったので。特に『蝉時雨ライダーズ』という曲は映画の中で最も大事な曲ともいえる存在で、文化祭で森山燐にとって最後に歌う曲でもあるので、すべての感情を絞り出すように歌う意識を持ったり、たんこぶちんのMADOKAとはまた違った感覚でのレコーディングではあったと思います。
―そんな作品に収録曲についてお話しを伺っていきたいと思います。1曲目の『遠距離恋愛爆撃ミサイル(Movie version)はたんこぶちんVerとは歌も別物ですよね?これは森山燐としてのこの曲のボーカルということになるのでしょうか?
M:そうですね。このバージョン用に録った物で、自分で聴き比べてもたんこぶちんMADOKAの歌声より若くはじける感じで、青っぽさがあるかなと思いますね。
―同じ人が歌ってもこんなに違う感覚になるんだなと思いました。しかもキーボードの音色がなかったり、アレンジ面が違うから原曲と相当印象が違いました。
M:シンプルなアレンジになっている分、高校生がバンドで演奏しているような若さや青っぽさが残る雰囲気になっていますし、このシンプルな形での表現はバンドとして新しい感覚だったので幅が広がったかなとも思います。原曲とこの曲の違いは面白いと思うのでぜひ聞き比べてほしいですね。
―2曲目の『さよなら監獄教室』はタイトルにまずびっくりしました。
M:すごいタイトルですよね(笑)。歌詞の内容も具体的な言葉使いで攻撃力が強い感じがありますし、この曲はくすぶっている心の中の感情だったり、なかなか一歩踏み出せていない現状の殻を破って羽ばたいていくような印象の曲で、レコーディングの時は自分の中で感情がウワッと昂っていくのを感じましたし、その感情のままに歌いました。今までのたんこぶちんの曲とは違った曲ですし、今回こういった曲にも挑戦できたのは大きな経験ができたと思います。
―3曲目『TIME』は作詞に参加している楽曲ですね。
M:Primemberがこういうシーンで演奏する曲を追加したいという話から制作がスタートした曲で、1コーラス目が最初に出来上がっていてそれを聴かせていただいて、そこから私なりの解釈やイメージを膨らませて2コーラス目以降を作っていきました。個人的にはこの曲が一番映画のストーリーや色、景色などの雰囲気に合う曲かなと思っていて、爽やかな夏の季節感とTIMEというタイトルにも繋がってきますが、物語の重要なポイントであるタイムリープにもリンクする部分が強いかなと感じています。毎日過ごしている中で後悔をすることもあるけど、それでも前に進んでいくからこそ、そのマイナスがあったからこそプラスがあるということに気付くことができたりすることがあるなと感じることが多々あるので、そんな気持ちをこの曲に詰め込むことができたかなと思います。
―映画のシーンにリンクした明確なイメージがあっての制作というのは今までになかった経験だったんじゃないですか?
M:今までにない経験をさせてもらいましたね。いろいろな方々が携わっていますし、映画を彩る上で楽曲というのはすごく大きなポイントでもあると思うので緊張もしましたけど、イメージ通りの楽曲に仕上げられたかなと思います。
―そして4曲目の『グライダー』にも作詞で参加していますね。韻を踏んでいたり“ねえ”“ボクラ”など歌詞にでてくる言葉が印象に残りました。
M:歌詞の中にも具体的に“夏”や“地平線”という言葉を使っていますし、収録曲の中で一番夏のハジける雰囲気がある曲かなと思います。“ボクラ”や“ねえ”という言葉では映画の中でPrimemberのメンバーが一人ずつ出会って、一つずつ音を重ねていって、バンドとして固まっていく様子を描いたようなイメージがあります。バンドを組んで活動していくキラキラした感じや青春感がこの曲では表現できたと思っていて、Primemberの雰囲気が一番感じられる曲に仕上がっていますね。
―そしてそこに続く5曲目は『蝉時雨ライダーズ』。これは先ほどもお話しがでてきましたが森山燐の世界観ですよね?感情表現がすごく難しい曲かなと思いました。
M:そうですね。すごく複雑な感情でした。森山燐にとってこの曲は入院している時からずっと頭の中にあった曲で、Primemberというバンドを組んでようやく歌うことができたという大事な大事な曲で、でもこの曲を歌った先にはもう森山燐としての未来がない状況で。でも私はありがたいことにたんこぶちんというバンドがあって、歌うことができなくなるという状況がリアルではない中で、終わりを意識したことないので、MADOKAと森山燐の抱えている物のギャップもあって、そこをどう私が表現していくかどうかはすごく悩みましたし、映画で最後にこの曲を歌うシーンでは「MADOKAとして最後に歌う歌だと思ってください。」と監督さんから言われて、たくさんたくさん考えました。私の中で“とにかく歌うことが好きだという素直な感情のままに全力で一生懸命歌うこと”という答えを持って撮影に臨んだんですけど、森山燐としての気持ちが溢れ出してきて、今まで感じたことのない感情で、鳥肌が立ちました。
―そんな大事な曲に続くのは主題歌である『夏のおわりに』。ここまでの曲が構成がシンプルな分、この曲がより際立つ印象でした。
M:そう言ってもらえると嬉しいですね。一つ一つのピースが集まって映画の世界観をすべて集約されている曲ですね。ストーリーをそのまま描いたような歌詞ですし、この曲があることでほかの曲も含めて映画を締めくくるというイメージです。既にライブでも披露しているんですがすごく好評で、たんこぶちんというバンドにとってもすごく大事なこれからたくさんの方々に愛される曲になっていくだろうなって思います。
―MVの世界観もすごく良いですね。
M:私もあのMVはすごくお気に入りです。メンバー全員の表情がすごく良くて。今公開されているのは映画のシーンも盛り込んだverなんですけど、DVD付きCDに収録されているMVは映画のシーンが入っていないverなので、それもぜひみなさんに観ていただきたいです。MVの枠に収まりきらない一つの作品として素晴らしい出来になっているので、楽しんでもらえるんじゃないかなと思っています。
―僕がたんこぶちんと接するようになってまだ何年かしか経っていませんがすごく大人っぽくなりましたよね。
M:いろんな方々がそう言ってくれますね。すごく嬉しいです。
―今こうやって話を伺って、ライブでも見てみたいという気持ちがどんどん湧いてきているのですが、今作の収録曲をライブで演奏する予定などはあるんですか?
M:実は、、、やる予定です!キーボードも入れた新たなアレンジで絶賛準備中です。CDで聴くのとはまた違った印象になると思いますので楽しみにしていてほしいです。
―先日写真集も発売されましたが、作品タイトルが「MADOKAと円佳」。両者の違いを自分で感じる部分はありますか?
M:もちろん違いはありますがどちらも私ではあって、今回の写真集でいうと普段はたんこぶちんというバンドのMADOKAで、映画では吉田円佳として出演させていただいて、バンドを元々応援してくださっている方も、映画で初めて知ってくださった方も、どちらも興味を持ってもらえるようにその二つとはリンクはしつつも、どちらとも違う新たな表情を見せられる部分があるものにしたいなという気持ちでした。これも新たな挑戦で貴重な経験をさせてもらえました。
―今回はこういった一人での活動も多いと思いますが、普段バンドで活動しているので寂しさもあるんじゃないですか?
M:改めてメンバーがいることの有難みをすごく感じます。みんながいてくれるおかげで私がいるんだなと思います。でも一人でこうやって活動していろいろなことを吸収してパワーアップしてたんこぶちんというバンドに活かしていきたいなという気持ちがすごく強いです!
―そんなMADOKAさんが見据える今後のたんこぶちんについて聞かせてもらえますか?
M:ガールズバンドという文化がこの先も続いていくように私たちが頑張っていきたいという気持ちはありますね。あとはバンドを結成して10年で一歩ずつですが成長できているかなとは思いますし、5人でどういう道を進んでいきたいかというのはどんどん明確になってきている中で、3月から10周年企画として2マンライブを5回やらせてもらって、それもすごく大きな経験になっていて、そこで掴めた自信もありましたし、逆に反省点もたくさんあって、良いところも悪いところも見えた部分があったので、そこを次に繋げていって大きな規模でライブができるようなバンドになっていきたいです。
―実は僕もeggmanで働き始めてもうすぐ10年なんです。
M:同期ですね!(笑)。
―同期としてこれからも共に頑張っていきましょう!
M:これからもよろしくお願いします!