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緑黄色社会 interview
- SPECIAL -

緑黄色社会 interview

愛知県在住POPカルテット、緑黄色社会のファーストフルアルバムがエモい。 既にツアーでは各地で会場を埋め尽くして活動規模を日に日に上げている彼ら、持ち前の明るくスカッと抜ける上質なPOPSから漂ってくるのは、ハッピーになれるだけの音楽ではなく、どこか記憶に残っていく確かな強さを感じる匂いだ。 自分たちの音楽背景にまっすぐに、嘘なく正面から向き合う姿勢が音に出ているのか、本人たちの実直さとクレバーなキャラクターが作品に表れている。 “POPで在ること”の彼らなりの最新解釈、時代をアップデートする音楽のまたひとつ新しいかたちを見ている気がする。

Interview & Text : 鞘師 至

ー 遂に初のフルアルバムリリースですが、今作を聴いてまず凄いと思ったのが、楽曲のレパートリーの広さでした。 このバンドはみなさん作曲されるとの事ですが、曲を作る時は、部屋にこもって缶詰状態でやるタイプ?

■peppe (Key/Cho 以下”P”) : 私は結構缶詰タイプですね、よしやるぞ!って気持ちのスイッチを入れて作業に取り掛かる感じです。 時間を割いても全然いいものでてこないこともあるんで、そういう時はプライベートにガンガン影響するんですよ(笑)。 やっぱりいいフレーズできると人生急に楽しくなるし、うまく出来てこないとガーンって気持ちが落ち込むし。 割り切ってるつもりなんですけど、やっぱり作曲に人生振り回されてますね(笑)。
■小林壱誓 (Gt/Cho 以下”K”) :  煮詰まったら一旦離れて、次の日に聴いてみてその時の感覚で良い悪いを判断すると結構フラットな目線でやれるっていうのもあるよね。 頭がすっきり整理されるっていうか。

ー 曲はスタジオでせーの!で合わせて作るんじゃなく、それぞれで作って持ち寄るんですね。

■N: そうですね、今は役割分担ができていて作曲もスムーズにやれるようになりました。 私が歌詞を作って、曲はみんながそれぞれ作って。

ー 歌詞からですか、長屋さんは歌詞先行で作るんですね。

■N: 歌詞からか、歌詞とメロディー同時か、どちらかですね。

ー このバンドを始める前は、弾き語りとかで歌ったりしてたんですか?

■N: 歌を歌うのはこのバンドが初めてでした。 昔から歌は好きだったんですけどね。 中学校まではずっと吹奏楽をやってて、中学時代にチャットモンチーさんとか、RAD WIMPSさんとかの存在を知るまで、世の中にバンドっていう形態の音楽があることを知らなかったんですよ(笑)。 それまでは吹奏楽の世界とか、歌手の存在しか知らなかったから…。 自分たちで演奏してアレンジして歌えるんだったら、すごく楽しいだろうな、バンドで歌いたい!と思って、軽音楽部のある高校を選んで入った先で今のメンバーと出会ったんです。 

ー 今回のアルバム曲の中には管楽器とかストリングスの音も入ってますが、こういうアレンジは長屋さんの吹奏楽時代の感覚も活きてるんですかね。

■N: 確かに元々クラシックも好きだし、そうかもしれないですね。 peppeも小さい頃からずっとクラシックピアノで育ってきてるし、そういう壮大な感じの音を入れていきたいっていう意識は最初からありました。 

ー クラシック出身でバンドミュージックをやり始める時って、色々とカルチャーショックなかったですか?

■P: ありました、最初はバンドの音楽のやり方が分からなかったから、正解かどうか分からないけど、まずは自分のやりたいように弾いてた感じでした(笑)。 そこからバンドでのピアノをちょっとずつ勉強していって。 それでもクラシックを弾いてきたっていう自分の持ち味を大事にしたいと思ってたんで、そのバランス感覚に一番こだわってやってきたかもしれないですね。 

ー そのバランス感覚、今回収録の曲に確かに反映されてますね。 そう考えるとこのバンドはメンバーそれぞれのバックグラウンドがちゃんと尊重された上で成り立ってる音楽をやってますね。

■N: 全員このバンドが初めてやったバンドなんで、バンドの音楽っていうものをあまり知らない状態から一緒に作ってこれたのが良かったんだと思います。 知識があり過ぎないからこそ、自分たちなりの音楽にできていったのかな、って。
■穴見真吾 (Ba/Cho 以下”A” ) : だからメンバー間で意識の方向性に全くズレがないんですよね。 進み方も一緒だし、初めての経験もみんな同じタイミングで初めてのものとして経験するし。
■K: 初ライブも全員にとって初ライブでしたしね。

ー 飲食店とかのオープニングスタッフみたいな感じですね。

■N: まさにそんな感じです(笑)。 オープニングスタッフどころか、お店すらまだ開店してないところからのスタートだから、みんなで意見を出し合ってないものを作っていく感じですね。
■K: あと、このバンドは明確にリーダーっていう存在を決めてないんで、みんなで作れてるっていうのもありますね。

ー 穴見さんは最年少ですけど、その辺は他メンバーと対等なんですか?

■A: 音楽に関しては対等にやらさせていただいております、私生活では結構怒られますけど(笑)。
■N: ベースをどこかに忘れてきたりね(笑)。 憎めないキャラなんですけどね、本当に困ることがあるんで、そういう時はビシッと、ね(笑)。

ー さて、曲ごとでも色々聞いていきたいんですが、まずは1曲目の「Re」。 これまでの曲の中でもかなりしっとりした曲ですね、アレンジもピアノと歌中心でシンプル。

■N: 元々私の作る曲は、こういうスローなテンポの曲が多いんですけど、みんなのアレンジの段階でビートが加わって結果的にアップテンポになっていく事が多いんですよ。 だからこの曲では自分の本性を出せたかな、と思ってます。 この曲は素のままの雰囲気を尊重した方がいい曲になるイメージができてたんで、アルバムの最初の曲として意識して作った訳ではないんですけど、こういう序章みたいな落ち着きの曲になっていきました。

ー それを経て次が「始まりの歌」(M2)、流れが綺麗ですね。 この曲も象徴的ですけど、ギターサウンドに関しては、全編通して基本的に歪みが抑え気味なクランチトーンがメイン。 ギタリストは歪んだいかにもロック!な音にしがちだったりしますけど、小林さんのこのスタイルはどうやってできていったんですか?

■K: 本当は僕、歪ませてごまかしたいタイプなんですけど(笑)、長屋の歌を活かしたいっていうのがモットーなんで、ギターの音に耳がもってかれ過ぎないような音作りはずっと意識してるんですよ。

 

ー 歌に関してはこの曲、長屋さんと掛け合いになる小林さんのボーカルも特徴的ですが、絶対的エースの長屋さんのボーカルワークに最初入っていく時って、勇気要りそうですね…。

■N: 昔はこういう掛け合いの曲、多かったんですよ。

ー 確かにeggmanに初めて出てもらった時のライブでは掛け合いの曲、沢山あった記憶が。

■K: そうなんですよ。 僕元々は、歌を歌うつもりでこのバンドに入ったんです(笑)。

ー …そうなんですか?!

■N: 入学前から壱誓(小林/Gt)と私はSNSで繋がってて、「この学校の軽音部に入るからよろしくね!」ってやり取りがあったんですよ。 私はバンドを組む為に入った高校でバンド組めなかったら元も子もないんで、もう事前に繋がっておいて「バンド組もうね!」って宣言してたんです。 でもバンド組みっぱぐれたくない一心で、お互いがボーカル志望なのを知ってて、それでもバンド組んじゃったから、こうなっちゃったんですね(笑)。

ー で、長屋さんが勝負に勝って王座を?

■K: 最初はきっとお互い譲る気なかったと思うんですよ(笑)、でもメンバーが決まってきて、初めて当時スタジオ代わりにしてた小さい部室に集まった時ですよ。 まだぎこちない感じで楽器を準備してた時に長屋がSEKAI NO OWARI「幻の命」だったかな、鼻歌でさらっと歌ったんですよ。 それを聴いた時に「あ、俺はこのバンドでは歌えないんだな…」って悟りました(笑)。 
■N: 私はその話覚えてないんです(笑)。 しかもその時にボーカルをどっちにする?っていう会話がなかったんですけど、なぜか気付いたら今の編成になってて(笑)。
■A: でも、そういう過去があるから歌に理解があって、ギターの音もクランチメイン、っていう。

ー そこに繋がる訳ですね。

■N: だから壱誓の歌もすごく良いので、それを活かしたくてこの「始まりの歌」でも掛け合いパートを作ったんです。 この歌に関しては、歌詞のことを考えたら男性の声がばっちり合うんですよね。 このバンドはメンバー全員がコーラスをするんで、曲全体で男女の声の割り振りを考えてコーラスワークも作ったり。 声にフォーカスした曲に仕上がりました。 

ー みんな歌えるっていうのはすごい武器ですね。

■N: そうなんですよ、強みだと思います。

ー 今後は小林さんソロ曲も?

■N: あってもいいかもしれないですね(笑)。

ー しかしまあ綺麗にみなさんのやってきた音楽だったり、今の編成になる経緯だったり、全部がしっかり今回の作品の音楽性に活きてますね。

■N: ボーカルに関しては経緯がめちゃくちゃですけどね(笑)。

ー でもそれがこのバンドらしさになってますからね、すごい事だと思います。 そして「大人ごっこ」(M3)、長屋さんのファルセットとか、サビ後半の壮大さとか、このバンドらしい要素が整頓されて詰まってる感じがしました。

■N: 確かにしっかりまとめられた感じが強いかな。 この曲にはタイトル通り「大人」っていうコンセプトがあって、フレーズ的にも今までやってこなかったようなかっこいいフレーズを入れたり、出したい雰囲気をちゃんと具体化できた曲だと思います。

ー 「君が望む世界」(M6)は、穴見さん作曲ですね。 ベーシストですけど、作曲は何でするんですか?

■A: 僕はギターを弾きながら曲を作ってます。 この曲はイントロのメロディーが最初に浮かんで、それを乗せる為のドラムのビートをまず作って、そこからコードだったり歌だったりを乗せていきました。 僕の場合、曲はビートから作る事が多いんですよね。

ー ドラマーのメンバーがいないにも関わらず、ドラムのフレーズ、リズムパターン、フィルなんかもすごくこだわった攻めてる感じがするんですよね。 他の曲に関しては誰がドラムのフレージングを?

■N: 他の曲も基本的にビートはベースの真吾が作ってます。 ドラマーがいない分、作曲は打ち込みになるんで、実際のドラマーの感覚とまた違った感じでリズムを作ってるんでしょうね。
■A: 実際に叩いてないからこそ、っていう発想は持ててるんだと思います。 遊び心というか。

ー この曲、メロディーはどこか90’th J-POPな感じがしますね。

■A: 僕、90’th大好きなんですよ。 ギターのフレーズとかもこの曲は僕が作ってたりして、自分の好きな感じを入れまくりました。

ー 「真夜中ドライブ」(M9)ではpeppeさん、ここぞとばかりにクラシックピアニストぶりを遺憾なく発揮されたフレーズが伸びやかですね。

■P: 自分で作ったし、ここはやっちゃえ!と思って、抑えることはしなかったです(笑)。

ー そして最後には「またね」(M10)。 この曲、リード曲のひとつだと思うんですが、最後に持ってきた理由は?

■N: この曲は、ある種の決意表明の曲、モヤモヤした気持ちにさよならして前へ進んでいこう、っていう曲なんで、こういう前向きなメッセージの曲を最後に持ってきたくて。 

ー このバンドではそういうモヤモヤしていた時期って過去ありました?

■N: ありましたね。 最初がとにかく右も左も分からない状態でバンドを始めたんで、作曲方法、活動の進め方、自分たちの音楽のコンセプト、いろいろ悩みが付きものでした。 でも徐々に見えてきて、例えば最初は自分たちがやっていて楽しいものを目指してたんですけど、聴く人が楽しめるものを作りたい、っていうメンバー共通の意識ができてきたり、今は軸が定まった感じがします。
■A: メンバー全員が長屋の歌を主体に考えて動くようになってから、ガラッと変わったと思います。 今回アルバムに入ってる曲も全部そうですけど、みんなの向く方向が定まった感じ。 行く先が明確だと、進みやすいですよね。
■K: 今はモヤモヤから抜けて、開けていってますね。

ー ちなみにこれから先は、どんな音楽を作っていきたい?

■K: 僕らドラマーがいないですけど、でもやっぱり生の楽器の音が好きだし、バンドで出す音が好きなんですよね。 だから長い目で見てもそういう姿勢は変わらないしそういう音楽をやっていきたいと思いますね。
■N: 世界的には電子的なサウンドが流行になってる中、私たちはバンドサウンドを貫きたいなって。 変にそれだけにはこだわらずに、ですけどね。 電子的な音楽も好きなんで、取り入れたりはしながらも、元々好きな自分たちの音楽の感覚にちゃんと目を向け続けたいって事ですね。 自分たちが考えてるPOPをやり続けたい、って思います。