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sumika interview
- SPECIAL -

sumika interview

多彩な音と言葉達が駆け抜ける7曲のストーリーが
あなたの中に深く染み込み
そして、あなたの毎日に色を付けてくれる
“sumika”が届ける 『I co Y』が
あなたの中にまで届きますように

interviewer:森村俊夫

―sumikaのライブでは3人のメンバー以外にも、毎回ゲストメンバーを入れてのライブを行っておりますが、どのような意図があるのでしょうか。

片岡健太(以下 片岡 Vo.Gt.):メンバーの3人では、パートの編成的にも自分達だけでは満足にライブもできない中、頑張ってもいいところで75%ぐらいの完成度までにしかつくる事ができなくて、足りない25%をどうしたら埋められるだろう?と常に考えていました。その末に、様々なゲストメンバーと共に音を鳴らす。という今の形態に辿り着いて、不足していた25%だけではなくて、50%、100%を更に足せる事に気が付いたんです。メンバーが常にハングリーな気持ちである事により、適当な合格ラインを作らず、常に向上していく空気感を持った、プラスのパワーに満ちたチームになっていると思います。
“あなた”の中にいる”私”に届くように

-今作『I co Y』のタイトルの意味を教えて下さい。

荒井智之(以下 荒井 Dr.):”I care of You”という言葉の略からタイトルが付けられています。

片岡:例えば会社の中の部署であったり、大きな組織の中にある小さな組織の中に郵便を送る際に”C/O(care of)”と表記して海外などでは郵便を送るのですが、その言葉を使って”あなた様方 私行き”という意味で、自分達の分身である”音楽”というモノが、あなたの中に届いて、”あなたのカラダの一部になってくれますように。”という願いを込めて、”あなた”の中に”私”(分身)は届いていますか?と尋ねるように、手紙を送るイメージでこのタイトルを付けました。

-今作のジャケットも郵便物を想像させるようなジャケットになっていますね。

片岡:作品タイトルが手紙をイメージして付けたものだったので、デザインもそこにリンクさせて、消印のようなスタンプを各曲ごとに制作したり、細部にも手紙を彷彿とさせるようなアイデアを散りばめたアートワークに仕上げました。
今作のタイトル『I co Y』には”憩い””安らぎ”という意味も込められていているので、自分の安らげる居場所(HOME)をイメージした、家のオブジェクトをメインジャケットに使用しています。
撮影場所が外なのは、場所を選ばず、どこにだってHOMEや”憩い”は創れるという意味も込められています。

黒田:オブジェクトに色を塗らず、真っ白にしたのは、自分のHOMEが必ずしも自宅ではなく、人によって安らげる場所が違くても良いと思いますので、聴いてくれる方々に、自分自身で色を塗ってもらえればと思っています。
“優しさの履き違え”

-1曲目「ソーダ」は爽快感がある、切なくもポップな楽曲ですが、この楽曲はどういった心境から制作されたのでしょうか。

片岡:この曲は自分の体験にも基づいて書いているのですが、ある人との煮え切らなかった関係を清算させた時に、”もっとこうすれば良かったのに”というモヤモヤした感情を、ソーダや炭酸に描写して書いています。
この曲は自分自身の中に全く曇りが無く、ほとんど一晩で書き上げました。

荒井:レコーディングしている時に、演奏しながらこっちも泣きそうになっちゃいました。

-切ないストーリーがある楽曲ですが、ソーダや炭酸の描写により爽快感を感じる綺麗なイメージの楽曲に感じました。

片岡:当時の自分ができなかった事が、この楽曲の中では成し遂げられています。どうせならちゃんと言い合いたかったですし、傷付け合いたかったという後悔も、炭酸の泡のように止まる事なく、きちんと溢れさせる事が出来ました。
これから戦っていこうとしているさまが、sumikaの活動に対する心境に近いような気がしています。

-2曲目「ふっかつのじゅもん」のですが、制作した心境はどういったものがありますでしょうか?

片岡:自分達のバンド活動を現しているような曲でもあります。自分達がモンスターだらけのフィールドに飛び込んで、進むにつれて始めにいた仲間達はどんどん居なくなり独りぼっちになっていって。
でも、その険しい道の先を行ききった所には新たな仲間達が待っていて、そして、その仲間達とまたこれから戦っていこうとしているさまが、sumikaの活動に対する心境に近いような気がしています。
仲間と出会って、武器を手に入れて、ダンジョンで迷って、強力なモンスターを倒して、宝を手に入れて…、ロールプレイングゲームの展開と、自分達の境遇が見事にハマるなと思い、そのようなイメージからこの曲をつくりました。

-この楽曲のMVは何も無い白い背景の中での演奏シーンと、とてもシンプルなモノになっていますが、そこにはどういった意図がありますか。

片岡:白バック・4つ打ち・和メロと、現代音楽シーンに溢れ返っている材料を、意識的に取り入れて制作しました。
自分達の音楽を料理に例えるならば”ナタデココ”や”ティラミス”のように今まで食べた事の無いような新しいモノを生み出している訳ではなくて、”カレー”や”ハヤシライス”のように誰もが作れるありふれたモノだと思うんです。
新しいモノを生み出すことは難しくて評価される事だけれど、ありふれたモノを”美味しく”作るという事もとても難しい事だと思っていて、自分達の音楽はそのような、”ありふれているけれど美味しい音楽”だと思っています。
後悔しているという事は、今は”悲しい自分”がいて、過去に思い出されるのは”楽しい自分”がいます。

-「リグレット」のMVは逆再生という手法をとっていますが、そこで表現したい意図はなんでしょうか?

片岡:「リグレット」には”後悔”という意味があって、ただ、後ろ歩きしている訳ではなくて、過去に前向きに歩いているというところが、あのMVで伝えたいところで、切ないところなんです。前向きに過去に戻ったからこそ、両方の目で過去を見つめているから辛いし、ただそれでも笑わなきゃっていう歌詞の中では描かれていない部分を、映像の力を使い、エピローグ的なイメージで表現しました。
MVは逆再生なので、すなわち冒頭部分がエピローグになる訳ですね。

-先ほど話にも出てきた”Dress farm”という企画の事も聞かせて下さい。”価格設定自由方式”という購入者が自由に価格を決めて購入できるという新たな企画はとても挑戦的だと感じました。

片岡:定価で音楽を売るという事に実は以前から疑問がありました。中学生の1,000円と40歳の人の1,000円は同じお金であっても、その人にとっては全く違う価値観でお金と向き合っていると思いますし、自分自信の価値観と向き合って、自由にそのモノの価値を決められるっていう機会がそもそもあまりないんじゃないかな?って思っていて、だから大事なものを大事にする方法もあまり分からないんじゃないかって気がするんです。
なのでこの機会に一度自分自身の大好きな音楽の価値観をみんなと一緒に作り直して、向き合っていきたいなと思い、この企画を実施しました。

-この”Dress farm”という企画から出た2枚のシングルの中から、『I co Y』の中に2曲を収録した経緯はどういったところからでしょうか。

片岡:この2枚のCDは特殊な販売方法という事もあって、自分達で販売し続けるには手間も時間も限界があった為、枚数限定で制作して、無くなったら販売終了にしよう。という事を決めてスタートしました。
当初、今作に収録する予定は無かったのですが、ありがたい事にこの2枚が当初の予定よりだいぶ早いスピードで完売するという状況が見え、2枚を購入できる場所が無くなるという中で、何度も話し合った上で、今のsumikaにとって大きな武器となっている大事な2曲を今作に収録する事に決めました。
購入者の方々にそれぞれの価値観と向き合って頂いて、価値を付けて頂き、自分自身も音楽家として、ひとまわり成長する事が出来ました。
いずれまた絶対に、この”Dress farm”企画はやりたいです。
“自分自身の中にヒーローがいる”ということ

-「MY NAME IS」は、他の楽曲とはまた違ったつくりになっている楽曲ですね。

片岡:この曲は前身のバンドの頃に制作したのですが、その後2011年の東日本大震災があって自分の無力感を感じた時に、この「MY NAME IS」の歌詞の”自分自身の中にヒーローがいる”という部分を歌っていた自分をなんだか情けなく感じてしまって、すっかり意気消沈してしまったんです。
だけど、震災から3年経って、震災に対しての、自分なりのアクションも「おんがくのじかん」という企画で世の中には発表して、その上でやっぱり弱い自分を救ってくれるのは、自分自身の歌でしかないのかな。と思うようになってきました。
自分が救われた歌で、誰かを救う事もできるのではないか。普段の自分は全く駄目でも、やっぱり音楽をやっている自分はヒーローになれるのではないかと思うような心境の変化があったから、今作に入れる事がスムーズに決まったのだと思います。

-「リフレイン」はどこか温かさもある楽曲で、タイトルには”何回も繰り返す”という意味もありますが、どういった楽曲でしょうか?

片岡:部屋のベットの真横に、いろいろな写真をたくさん貼ってあるのですが、久しぶりに家族の写真を見た時に、何年も忘れてしまっていたような両親への気持ちが溢れてきました。
でも、そんな気持ちも時が経つとまた忘れてしまっていて、忘れないようにする為には、いったいどうすれば良いのだろう?と考えた末に出た答えが、”忘れないように何回も思い出せば良い”ということでした。
そのような気持ちを込めて、リフレインというタイトルを付けました。
ちなみにまだ両親に、この曲は聴かせていないので、12月のワンマンあたりできちんと聴かせたいなと思っています。

-「イノセンス」の楽曲のタイトルにはどんな意味がありますでしょうか?

片岡:エイプリルフールという嘘を付いて良い日に、嘘を付かずに別れを告げた女の子の”無邪気さ”を歌った楽曲なので、無邪気という部分からとってこのタイトルにしました。
この楽曲は数年前に制作した楽曲で、今作の収録にあたり歌詞を修正しようかとも思ったのですが、昔お世話になったプロデューサーの方から”歌詞と曲が同時に生まれたものは、どんな状況であれ、そのまま一緒に出してやった方が良い”とアドバイスを頂いた事を思い出し、生まれ方を優先して、歌詞は制作当時のままで修正せずに、レコーディングをしました。
逆に今では絶対に書けなそうな歌詞なので、とても貴重です。
“殺して殺しても蘇る”

-今作の最後に収録されている「彗星」という楽曲は、”殺して殺しても蘇る”など、他の楽曲とは違う言葉の使い方をしている楽曲だと思いますが、どういった意図があるのでしょうか。

片岡:正直、もっと丸いイメージになるように、他の言葉を選ぶ事もできたのですが、この楽曲に関しては現実ときちんと向き合う部分も隠さずに表現したくて、あえて頭の中にあるイメージ通りに、過激な言葉のまま歌詞を書きました。
彗星は一見綺麗なモノですが、いずれ燃え尽きてしまいますし、夢を叶えている人達は自分達には関係のないテレビの中の人達だけの話だったりもします。
しかし、燃え尽きない彗星があったっていいじゃないか。と僕は思うんです。
そんな瞬間を自分達で体現してやろうという決意の楽曲になっています。
自分達3人だけではないところで、この”sumika”というモノが進んでいる事にすごく意味があると感じています。

-このインタビューを通じて、sumikaは自分達のやりたい事をとても大事にしているという事がすごく伝わってきたのですが、sumikaとは改めてどういったバンドでしょうか。

片岡:始めにも話しましたが、sumikaは自分達だけでは無力な分、様々な方と関わって進んでいく事になんの躊躇も抵抗もなく、それが今の自分達の強みなっていると思っています。
映像作家であったり、音楽家であったり、画家であったり、様々な芸術家の方と関わったり、
“Dress farm”という企画でもsumikaの音楽を聴いてくれている方々と共に企画を進めていって、自分達3人だけではないところで、この”sumika”というモノが進んでいる事にすごく意味があると感じています。
お客さんも当事者意識を感じてくれていて、「私こんな事ができます。」と手を貸してくれる方が本当に多くて、本当にたくさんの方々に支えられているバンドだと思います。

-リリース後、間髪入れずにリリースツアーが始まりますが、どういったツアーにしたいですか?

片岡:歌詞が少しでも伝わるようにコーラスワークやアレンジなど、様々な工夫をしてライブに挑みますので、是非歌詞を感じてほしいなと思います。

黒田:楽曲の良さを最大限伝えるライブをしますので、是非とも楽しみにしていて下さい!

荒井:本当に楽しんで演奏しているバンドだと思いますので、是非表情を見てライブを楽しんで欲しいです!

-そして、ツアーファイナルは12月8日(月)渋谷CLUB QUATTROでのワンマンライブですね!

片岡:今後また発表されていくかと思いますが、この日は様々なゲストメンバーと一緒に、普段とは違うアプローチで、新しい角度から楽曲を伝えていければと思っていますので、CDとはまた違った楽曲の魅力を見つけて頂ければと思います。
文字だけでは伝えられない事もたくさんあるので、もし少しでもこのインタビューで”sumika”を気になってくれた方がいましたら、是非ともライブ会場にも足を運んでもらえると嬉しいです。

-12月8日のワンマンライブの先行チケットはすでに完売し、残りは『I co Y』リリース直後11月16日から販売される一般チケットのみとの事。sumikaのライブには音源とはまた違った良さがあります。一度ライブを観れば虜になる事間違い無しなので、完売してしまう前に是非とも。