-今回配信という形でリリースされる『ひなた』は「でも、結婚したいっ! BL漫画家のこじらせ婚活記」というドラマの主題歌ということですが、この話があったときの率直な感想を聞かせてほしいです。BL漫画家の結婚というちょっと難しいテーマだったのかなと感じました。
柳沢亮太[Gt/以下…Y]:BL漫画家のというところだけ切り取ってしまうと少し難しく思えるかもしれませんが、原作の内容も根本にあるのは人と人との付き合い方、向き合い方というところがテーマになっていると思いましたし、そこが主軸になっていたのでそういった側面では普段から僕たちが作品にしている内容とすごく近いものなんです。
渋谷龍太[Vo/以下…S]:制作スタートのタイミングでは少し悩んだけどね。切り口は大事にしたというか。
Y:そうだね。結婚ということは恋愛もそこには紐づいているけど、ただのラブソングにはしたくなかったからね。
-外部からの明確なきっかけで制作を進めていくというイメージがあまりSUPER BEAVERにはなかったのですが、そこの難しさはありましたか?
Y:難しさはなかったですかね。自分たちの内面からのきっかけではないという部分で違いはありましたが、そこが違うからといって普段の制作とはすごく変化があったということはなかったです。
-ライブも非常に多い中での制作はスケジュールのやりくりが大変だったのかなと思いました。
S:ちょうどライブとライブの合間で上手くスケジュールがハマった感じです。柳沢が曲を作ってから完成まではすごく早かったですし。
-ライブの合間と言えど1ヵ月とか間があったわけではないですよね?
Y:まぁでも常に動いていて、スケジュールが詰まっているほうが僕たちには合っているのかなと思っています。逆にもしお休みが長くあったらなにをしていいかわからなくなってしまうタイプなので(笑)。充実してこうやっていろいろなライブや制作ができる環境というのはすごく幸せなことですからね。
S:ずっとこういう流れで活動してきているし、それこそずっとある程度の緊張感を持って1日のどこかでは音楽と向き合う時間があるかなと。それがSUPER BEAVERには合っていると感じます。
-それが自然になっているというのはバンドとしてすごく良いスタンスですね。客観的に見て本当に仲が良い(笑)。メンバー同士がちゃんと人として向き合っていて、人として繋がっているバンドだからこそ、こういった楽曲や人と人の繋がりとかを歌っても嘘がないし、説得力があるんだと思います。
Y:ありがとうございます。今作も含めてですが、人間関係・人と人という観点で捉えて楽曲制作ができるのはこのバンドの特徴だと思いますね。常日頃そういう音楽を発信している4人だからこそ、切り口は曲ごとに違いはあれど、バッとそこにパワーが集約できるのかなと。
-今作の『ひなた』というタイトルに関してなのですが、温かさをこの言葉でタイトルにできるセンスはさすがだなと感じました。
Y:安心感・信頼を持てる人の傍って温かさがあるというような楽曲イメージを事前に伺っていて、それってすごくわかるなぁと共感したんです。それをSUPER BEAVERというフィルターを通してどうやって伝えようかというところで、全体的に温かみのあるような曲にしたくて。それをなんて表現しようかなと思った時にこの「ひなた」という言葉が浮かんだんですよね。でもこれって僕たちの曲では結構珍しいパターンで、タイトルが歌詞の中にでてこないんですよ。ここは新しい部分だったかなと思います。
-曲中に「どうせ」というワードが4回でてくるのですが、一番最初にでてくる鍵括弧の「どうせ」とサビに出てくる「どうせ」は意味合いが全然違っていますよね?この言葉がキーワードかなと思いました。この曲がタイトルになってもおかしくないくらい。
Y:まさにです。最初の鍵括弧の「どうせ」はいわゆる一般的なこの言葉のイメージとしてある諦めのネガティブな側面で、サビにでてくる「どうせ」はちょっと違うんですよ。ポジティブな「どうせ」。【あなたといる場所があたたかい】という言葉に繋がるネガティブじゃない諦め。そう思える相手がいることってすごく大切なことだし、この曲においては重要なキーワードになっていて、この言葉が印象的になるように使っていますね。
-伏線になっていたんだなって一通り聞いてから感じました。ある種歌詞が作品としてしっかり構成されている。そして渋谷さんの声がこの曲にすごく合っているなと感じるし、「どうせ」という言葉に温かみがありますよね。リンクしている感覚。
S:そう言ってもらえるのは嬉しいですね。
-なにか特別に意識した部分などありますか?
S:自分の中で事前になにか意識したりとかそういったことはあまりなかったですが、原作やドラマの主人公が女性という部分では、女性特有の感覚だったりとか、ナイーブさ、男性の弱さとは違った弱さみたいなものを男なりに想像したりはしました。決して女性の気持ちになって歌うわけではなく男目線からの多少の想像というか。この曲に関しては僕たち男4人が発信する作品だけど、少しユニセックスな部分があるかなとは思います。
Y:ちょっと柔らかい感じとかね。あとこの曲に関してだとテンポとキーが温かみを生み出す役目を果たしています。いつもの渋谷の限界の高さではなくて、下の音域部分を意識しました。リハでも何回も確認して。
S:何回も確認されましたね(笑)。でもやっぱこの曲はこのくらいのキーがとテンポが一番良いなって。これじゃないと表現できない世界観かなと。
-Cメロの部分がこの曲の重要な部分を担っているかなと感じました。この部分が一番最初に出来たんじゃないかなと思うくらい。
Y:一番最初に出来たわけではないんですけど、確かに今言われてみて、この部分がこの曲で協調したい部分なのかなというしっくりきた感覚があります。日がさせば日影ができるのは当然なんですけど、それをどっちの視点で捉えるかどうかで見え方って全然変わると思うんですよ。それが今回の原作の大前提で奥底にある一番根っこの部分なのかなって。そこを遠回しな言い方ではなく、わかりやすい言葉で表現したのがこのCメロ部分ですね。
-曲の構造、歌詞にもいろいろな意味合いが含まれていて、こうやって紐解いていくと非常に興味深いし、曲への理解度が変わりますね。このインタビュー後にこの曲を聴くのがまたすごく楽しみです。話はガラリと変わってしまうのですが、先日shibuya eggman35周年記念として行われた武道館でのイベントありがとうございました。
S&Y:こちらこそありがとうございました。
-初めて立つ武道館で、さらに対バンイベントで限られた時間の中であれだけのライブができるSUPER BEAVERというバンドって改めてすごいなと思いました。
S:あの順番だからこそできたライブというのもあると思います。自分たちより前にやったバンドのライブも見てたし、MCとか含めてみんなの想いも受け止めて、自分たちの中で満を持して感を持てたというか。しっかりあの舞台に立つ意味を持てたのが大きかったかなと思います。
-近い将来あの武道館という場所でワンマンをやるんだろうなって感じました。武道館が似合いすぎだろって。
S:そう思ってもらえるライブをやりたいし、やらなきゃとは思っていました。そうでなければ。しかも先日ONE OK ROCKのツアー帯同で仙台の大きな舞台でライブをやらせてもらったんですが、こんな短いスパンで未体験のライブをやらせてもらったというのはすごく貴重でした。
Y:こうやって新しい経験をさせてもらえることが純粋に嬉しいですよね。12年バンドをやってきて結構いろいろな経験はしてきたとは思うんですが、ここ最近またバッと一気に経験値が溜まる機会が多かったですね。SUPER BEAVERは地道に一歩ずつ、繰り返し、大事に、いろいろなことを積み重ねてきたバンドなので、それがようやく活かせるようになってきたかなと思いますね。
S:所属事務所のイベントだったり、同い年でバンド歴も同じで、昔からの友人でもあるONE OK ROCKのツアーでそれが経験できたというのもすごく感慨深いですね。
-しかもさらなる大きな経験としてオールナイトニッポン0(ZER0)のレギュラー出演が決まったそうですね。
S:いやー、これは本当に大きな出来事ですよ。だれもが知っているラジオのレギュラーですからね。考えや想いを発信できる場をいただけるのは本当にありがたいことですし、やらせていただけることになって光栄です。バンドを背負って一人で喋るというのは貴重な経験です。
-今のSUPER BEAVERって12年という年月をかけて積み重ねてきた大きな土台にどんどんさらなる経験という武器が備わっていっていて、今後恐ろしいバンドになっていくんだろうなと思います。
S:たくさんたくさん土を耕してきて、土地と土壌はあると思うんです。そこにどんな種をまいてしっかりと育てていけるかどうかという勝負がようやくできるようになってきたと思います。
Y:サボらず育てなきゃね(笑)。
S:もちろんだよ。絶対にぶれずにこれだって決めたものを巨大な木にできるようにしっかりと活動していきたいからね。
-本当にこれからの活動も楽しみです。