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the quiet room interview
- SPECIAL -

the quiet room interview

表情豊かに生きる、放っておくと流れてなくなってしまう日常を、切り取って意識をそこへ向ける。 無だったところに自分やそれを取り巻くひとたちの物語が見えて来る、これはこのバンドがずっとやり続けている表現のひとつ。 初めての日本語タイトルとなるニューアルバム『色づく日々より愛を込めて』には、そんなこれまでのバンドの描写の延長線上にありながら、歌詞の面では奥行きのある表現を、楽曲の面ではこれまで以上に曲調の振れ幅に左右されない軸のようなセンスを携えて、the quiet roomの音楽を一段階明確に仕上げたしたようなフィット感がある。 このなんとも言えない変化を、俯瞰で言えば、バンドのレベルアップ、と表現するんだろう。 奇をてらった飛び道具でなく、自分たちの音楽をより深く理解した結果で得られる説得力、今作はこれの最たるものだろう。 今号〜次号にかけては“クワルー特集”、2号に渡ってインタビュー内容をご紹介します。

Interview & Text : 鞘師 至

— まずは今回のアルバムタイトルについて聞かせてもらいたいんですが、初めての日本語タイトル。 これはどんなきっかけで付けたものですか?

■ K: 最近、日本語と向き合う機会が増えたんですよね。 本も前より読むようになりましたし、Twitterでも毎日アウトプットしてるし、この冊子でも毎月コラムを書かせてもらってるし。 そういう状況にいるから歌詞でも、日本語の扱い方にこれまで以上にこだわるようになったんですよね。 今までは響きとかキャッチーさで言葉を選んでた事が多かったんですけど、最近は日本語の美しさにフォーカスして書こうと思って作ってます。 だからタイトルも日本語にしたいな、っていうのは前々からあって、今回はこのタイトルになりました。 

— 当初からのこのバンドのコンセプトとリンクするような、バンドを代名するタイトルですね。 日常から切り取るドラマ性、というか。

■ K: そうですね、そのタイトルに沿ってそれぞれの曲の歌詞も、言葉にこだわって作ったので、是非歌詞にも耳を傾けてじっくり聴いてもらいたいです。
■ S: 僕的に歌詞で一番気に入ってるのは「夢で会えたら」(M7)ですね。 分かりやすい。

— この曲、今回のアルバムの中で歌詞が一番リアルな感じですよね。 他の曲は、聴く人の尺度によって受け取り方が色々できる感じで抽象的ですけど。 バンドマンと彼女のあるある的な場面にちょっと涙しちゃいました。

■ K: ね、何があったは分からないですけど、何かあったの”かもしれない”ですね(笑)。 是非CDを手にとって歌詞カード見ながらいろいろ連想してもらえたらと思います。

— 他の曲でも、菊池さん何かあった?系の歌詞がいくつかありますけど、「ハイライト」の1サビ後、2番の平メロ部分では珍しくディスりが入ってますね。

■K: そうですね…(笑)、普段あんまり物事をディスったりしないんですけど、これは結構尖ってますね。 やっぱりアルバムに1曲くらいこういう尖ったものがないとな、というのがあるんで、今回はこの曲でそういう部分を出しました。 

— ロックバンドですからね、当然の沙汰ですね。

■ K: 今回のアルバムがどちらかと言えばポップス寄りな傾向なんで、激しいのもやりたい!っていう僕らの欲望もあって。 ほら、僕ら茨城のバンドなんで(笑)。

— …はい(笑)。

■ S: その切り口合ってるのかな(笑)。
■K: 茨城と言えば、THE BACK HORN、BRAHMAN、etc.の流れがあるじゃないですか!やっぱり僕にもその血が流れてる訳ですよ。 そういう自分の中の燃えたぎってる感情は、今回この曲に全部詰め込みました。 
■ S: そうね、ライブやってても、ただのポップスバンドかと思われがちなんですけど、それだけじゃないぞ!っていうところをちゃんと自分たちの現実として表現していきたいですしね。
■ K: アルバムに1曲は最低でもこういう尖った曲がないと、欲求不満になっちゃうんで、こういう曲で発散して、ライブでもお客さんと楽しめたらな、と思います。

— 前作だと「Locus」がそういう立ち位置の曲でしたけど、MVもバッキバキ、男らしさを見せた曲だったな、と。 あの曲ってやっぱり男性受けが良かったりしたんですか?

■K: そうですね、最近男性のお客さんが少しずつ増えてきてるのも、こういう曲をちゃんと織り交ぜてアウトプットできてるからなのかな、って思ってます。 実感があるんで、こういう曲も諦めずに続けていきたいですね。 今作の「ハイライト」もそういう意味では重要な1曲だと思います。 昔は悩んでたんですけどね、こういう激しい曲もあったり、でも基本的にはポップスの曲が多いし、自分たちの軸はどこにあるんだ?って。 でも今はそれが僕らの個性だなって納得したんで、両方とも僕らの本当にやりたい音楽として胸を張れるようになりました。 いずれはこれをもっと幅広くやれるようになって、長尺のライブでもその中でいろんな魅せ方ができるようになっていきたいと思ってます。

— 今ならではの捉え方で自分たちの音楽を肯定できてるっていうのは強いですね。 始めた当初にはその悟りと度胸はここまでなかったんでしょうね、やってきて培ってきた感覚、というか。 ロックな曲もポップスも、両方あっても成立するこのバンドの軸ができてきて、かつ自分たちでも見えてきた、っていう証拠なのかな、と。 そういった意味での安定感、変に外れた道へいっちゃうような不安感がないっていうか、軸が固まってきた説得力みたいなものを今回のアルバムからは感じました。 

■K: 元々このアルバムを作るときに、曲調の幅は持たせたいと思って意識していて、ゆったりな曲から激しい曲から、ポップスまで、いろいろやろうと思ってたんで、実際作ってみて「これはやりすぎたな…」っていう逸脱した感じの曲はひとつもなかったんですよ。

 

— ライブでも曲調より以外とロックなステージングなのが最近はすごくハマってますしね。

■ S: 結構僕もライブで煽ったりする方なんですけど、やっぱりただのやさしいポップスバンドで終わりたくない、っていうギラつきはありますね(笑)。 熱量感があるライブをやるのがこのバンドだ、っていう気持ちもあるし。 曲聴いてかわいいなぁ、と思ってライブ見てみたら結構ロックでびっくりする、みたいなギャップなんですかね(笑)、でもそれが僕らの今の武器だと思います。
■ K: 一歩間違ったらほんと情緒不安定なバンドですよね(笑)。 怒ったり笑ったりやさしかったり、感情が忙しい ……(次号へ続く)