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androp interview
- SPECIAL -

androp interview

andropが待望の最新アルバム[period]をリリース。
〈繋がりたい〉〈今度は誰かのテーマソングになるような曲が書きたい〉という気持ちが込められた今作は、ボーカル内澤の新しい一面を見る事が出来る作品だ。この作品を作り上げるまでに、沢山の葛藤をしてきた彼ら。そんな彼らが生み出した曲の数々は、本当に素晴らしく、自分たちの何気ない日常に色を添えてくれるに違いない。ポップでキャッチーな[M2:Voice]や、今までのandropには考えられない曲調の[M3:Lit]、悲しみの中から生まれたバラード[M13:Missing]まで幅広い曲達。そんな最新作について、内澤崇仁(vocal & guitar)に語ってもらいました。

interviewer:Shoko Ishikawa

―andropというバンド名の由来は、〈and〉と〈drop〉重ねた造語なんですよね。どうしてこのバンド名にしたのですか?

内澤崇仁(vocal & guitar):自分たちの音楽が、聴く人にとって生活の中で寄り添うような音楽であってほしいと思っていたので、寄り添うという意味で〈and〉を入れました。そして、感情的な物を入れたいなという気持ちもあったので、喜怒哀楽を意味するもので、涙は形の無いものだけど、どの感情でも出てくるものだと思ったので、〈and〉と付随するものだと思い〈drop〉にしました。造語って意味の無いものだと思うのですが、あえて意味の無いものにしたかったんです。

-それはどうしてですか?

内澤:自分たちが音楽活動をしていく中で、〈androp〉という言葉に意味を持たせられれば良いなと思って、まっさらな単語にしたかった。そこに自分たちのストーリをのせていって最終的に意味のあるものにしようとしていたので。

-1st album[anew]から、今作までのアルバムタイトルが、バンドの頭文字だったと思うのですが、そもそもバンドの頭文字にしようとした意図はありますか?

内澤:さっきも言った〈androp〉という意味のない単語に意味を持たせる為にアルバムの頭文字をバンドの1文字1文字にしました。アルバムそのものが、〈androp〉になるようにと、このバンド名を付けた時点で考えていました。自分が音楽を諦めなければメジャーだろうが、インディーズだろうが、自主だろうが、CDは出せると思っていたので、今回最後の〈P〉まで作品を作れて本当に嬉しいですね。奇跡だと思っています。それは、今までも今も納得出来る音楽が出来ている証だと思っているので。だから、今作は本当に妥協をすることだけはしたくなかった。

-私は[period]と聴いて終わってしまうのかなとネガティブなイメージを持ったんですが、音楽を聴いてみたら全然真逆で。本当に集大成だなと思いました。

内澤:そうですね。〈anew〉を作った時点から〈p〉までいけたら、〈period〉にしようと思っていたので。僕等のアルバム全部で〈androp〉という意味だし、1つの終止符を打つ、という意味で〈period〉とつけました。今作は本当に命を削って作りました。この頭文字のタイトルというのは、バンドを結成したときからの壮大な計画だったからこそ、達成出来て本当によかったし、3月の代々木体育館で演奏できるのも楽しみだし、今は作品が出来てぼーっとしてます。

-まだ今作の制作が終わったばっかりですが、次回作のことは考えていますか?

内澤:いや、全然。ただ、今後こういうことをしたいなとか、こうしたら面白いかなという何となくのビジョンはあります。それがまだふわっとしているので、代々木でのライブを通して何か得られたらいいなと思っています。

-制作は結構ギリギリまで行われていたんですよね?

内澤:そうですね。大体いつもギリギリまでやるタイプなんですけど、今作は本当にギリギリの中のギリギリまで攻めましたね(笑)。あと数時間遅かったら、本当に発売に間に合わなかったです。でも、本当に妥協したものにはしたくなくて、納得いくまで制作していました。

-アルバムを聴いた時、お客さんも一緒に歌っているビジョンが見えました。今作にはそのようなお客さんとシンガロングできる曲が多いなと感じましたが、意識しましたか?

内澤:今作はそこがキーになっていると思います。最近繋がりたいという気持ちがとても強くて。それはなぜかというと、前作の2nd full album[one and zero]を制作した後に、燃え尽きてしまって、曲が作れなくなってしまったんです。やりたいことを出し尽くせた作品でもあったので。

-曲はいつ頃からかけるようになりましたか?

内澤:発売してから三ヶ月後にツアーがあったんですが、それまではどうしても曲がかけなくて、焦りの気持ちがあったんです。ただただどうしたものかなぁと考えていて。で、ツアーが始まってステージに立った瞬間に、ここに立てているのは今、ライブを観に来てくれているお客さんがいて一緒に音楽を奏でているからなんだというのを再認識できて、そのときに、今度は自分たちのための曲じゃなくて、聴いてくれる人にとってのテーマソングを作りたいと思って[M2:Voice]が出来ました。そこからどんどん曲が出来る様になったので、今回のアルバムは[M2:Voice]が先頭をきってくれましたね。だから、一緒にシンガロングしたり、繋がりたいという気持ちが詰まったアルバムになったと思います。

-[M2:Voice]のMV撮影はMETROCKでの撮影もありましたね。緊張しました?

内澤:本当に緊張しました。誰も聴いた事の無い曲をやる不安感もありましたし、その撮影の為に色んなスタッフが動いてくれていたので、失敗はできないなと思っていました。サビ前に後ろから、マイクに向かって歩くシーンがあったんですが、「そこだけは絶対失敗しないで」と言われていたので、忘れたらどうしようって思っていました(笑)。初めてみんなでシンガロングしてる光景を見て、本当に理想が現実になったし、感動しました。この曲を作って本当に良かったと思いました。

-代官山UNITから、METROCKという大舞台に進んでいくという演出がとてもバンドらしいなと思いました。

内澤:とてもシンプルなものでは有ると思うんですが、色んな方の気持ちが本当に沢山詰まっていて、すごく斬新で素敵なMVになったと思います。

-MVをみて、音楽っていいなと思いました。

内澤:それは僕も本当に思っています。本当に[M2:Voice]のMVを撮った時に、METROCKでみんなが全く知らない曲を演奏したのにも関わらず、みんな曲を知ってるんじゃないか?と思えるくらい手を挙げて歌ってくれていて、凄かったですね。

-andropの楽曲は、デザイン性も素晴らしいなと思います。例えば、[M2:Voice]の2番のAメロのとこが、ダンスミュージックぽくてとても好きです。

内澤:ダンスミュージックでよく使われているサイド・チェインという手法なんですが、それを生楽器で出来ないかなと思って試みました。キックが信号としてキックがなくなると別の楽器の音量があがってきて、またキックが入ると他の楽器が消えるっていう感じなんですけど、普通はシンセに使うんですけど、それを生のバスドラムに対して生のギターでやってみたかったので使ってみました。この手法実は、1st single(double A-side) [World.Words.Lights.]でも使っているんですが、その時はシンセとドラムでやっていて、ギターとドラムでは今回が始めてです。他のバンドでこれをやっているバンドをみたことがなかったので、絶対やろう!と思っていました。基本的にアレンジは直感的にやる事が多くて、興味とイメージからやっています。

-曲作りは内澤さんがある程度作ってからメンバーと練り合わせる感じですか?

内澤:大体かなり曲を作り込んで、打ち込んでから、メンバーに聴かせて生音にどんどん変えていくっていう感じですね。

-他にも、[M4:RDM]のバスドラが変速的に入っている部分も面白いなと思いました。

内澤:これも直感的です。普通の鳴らし方をすればごく普通の曲なんですけど、少し違った事をする事によって、あまり聴いた事の無い音像になるなと思って作りました。音楽を作るときに、音楽を詳しい人にも、単純に音楽が好きな人にも良いと思ってもらえる音楽を作るように意識しています。どちらも楽しめるような作品にしたいなと。

-[M3:Lit]は今までにないパンクテイストな曲ですね!佐藤さんのイントロのギターが印象的です。

内澤:元々andropが出来る前から出来ていた曲なんです。メンバーもみんな気に入っていた曲で。今だったらかっこ良くレコーディング出来るんじゃない?という話になってレコーディングしてみました。あとこの曲は、前回のツアーで育った曲で、どんどんライブで試行錯誤して完成した曲です。今までそういうことをした事がなかったので、チャレンジできましたね。

-盛り上がるイメージが凄く有ります。

内澤:そうですね。ちゃんと音源を聴いてもらってライブでどうなるのか楽しみですね。andropのお客さんは良い聴き方をしてくれる方が多くて嬉しいですね。自分たちの音楽で、誰かが悲しい思いをしたりするのが本当に嫌なので、凄く純粋に音楽を楽しんでくれているなと思っています。

-[M5:One]はandropらしいなと思いました。初回限定のDVDにはスタジオライブが収録されていますね。

内澤:ライブ映像とは違った撮影ができるので、新しいandropが見せれるなと思ったので収録しました。これものすごく大変だったんです。3曲ぶっ通しで収録したので後半は汗とかすごいです。

-確かに、後半になるにつれ皆さんがどんどん汗がしたたってましたね(笑)。

内澤:倉庫で撮影したので、最初はすごく寒かったんですが、どんどん演奏していくうちに熱くなってしまって、ドラムの伊藤君とかは汗だくでしたね。僕はあまり汗かけないんですけどね(笑)。
[M5:One]は[M2:Voice]で初めて皆で一緒に歌える曲を書いたんですが、一緒に歌っていると、一緒に歌っている一人一人が大切に思えるんです。長い人生の中でライブという時間は一瞬かもしれないけど、その一瞬に沢山の人が集まって、一つの音楽を共有するというのは本当に素晴らしい時間だなと思っているし、その数が大きくなればなるほど、より一人一人が気になったり、その尊い一人一人を大切に思えるというか。たまたまだけど地球上に一緒に存在しているので、もっと繋がれたら良いなと思って[M5:One]が出来ました。

-アルバムを通して聴いてみて、6曲目からがらっと雰囲気が変わると思ったんですが、曲順は悩みましたか?

内澤:曲順は今までで1番悩みました。今までは僕が全部決めていたんです。今回も例のごとく最初は自分で決めていたんですが、それをメンバーに投げかけてディスカッションをしたんです。でもずっと意見がまとまらずに、曲順が決まらなくて、ものすごく考えて、メンバー皆が納得したのがこの曲順です。すごく鋭いなと思ったのが、5曲目までは僕が考えた曲順で、6曲目以降からはメンバーと僕のディスカッションで決まった曲順なんです。

-本当に一枚を聴いて、物語を聴いているような一枚だなと感じました。

内澤:そうですね。本当にメンバー一人として妥協した作品にはしたくなかった。だからこそ曲順をディスカッションしたし、音や曲間も皆で考えて、皆で納得いく一枚に出来たと思います。

-今作だと、[M7:Six] と[M8:Sensei]、[M10:Neko] 以外の曲には歌詞の中に、〈君〉と〈僕〉という表現が使われていると思うのですが、この3曲はその表現がないなと思いました。歌詞を書く時に意識しましたか?

内澤:え、本当ですか?今自分でも気付きました(笑)。あまり意識はしていなかったんですが、[M7:Six]は君って入れたくないと思っていた気がします。

-それはなんでですか?

内澤:いかにもこの曲の歌詞に君って入りそうだったので。あと、この[M7:Six]という曲の意味は、[6次の隔たり]という理論みたいなものがあって、自分を介して知り合い、そのまた知り合いと6人、人を介すと世界中どんな人とも繋がっているという意味で、凄く素敵だなと思って作りました。例えばライブに来ているお客さんで、僕の目の前にいる人が、全然名前も知らない人だけど、僕の友達を6人介せばその人と僕は繋がっていて、さらにその横にいる知らない人がまた6人介せば繋がっていくというのが凄く新鮮で、そう考えると皆一人じゃないんだなと思えてこの曲が出来ました。だからこそ、〈君〉ではなく、〈僕等〉という表現を使いました。

-[M10:Neko]は斬新ですよね。

内澤:僕も自分で作っておきながら歌うのが不思議なんですよね。この曲はアルバムの中で最後に出来た曲なんですが、その頃は切羽詰まっていて、あと何時間で発売出来ないところまできていた時にできた曲なんです。その日、スタジオはもう押さえてあって、メンバーも朝からスタジオに待機していたんです。でも僕は曲が納得する形で出来ていなかったので、家で作業して。夜の7時にやっと出来上がって、メンバーに渡して速攻音作って朝までレコーディングをしたんです。でも妥協はしたくなくて、音に関してもベースの音をウッドベースの様な音をレコーディングしたくて、試行錯誤したりしました。結局ベースの生の音をマイクで拾って、それを普通にアンプから出てる音とMixしたりして、自分たちのイメージに近づけました。僕もその頃スタジオと家との往復だけを毎日していて、癒しがなかったんです。その中で唯一の癒しだったのが、飼っている猫で。家に帰ったときに、餌がないってすり寄って来るんです。その一瞬が本当に癒しで、そのときにこの曲が作りたいなと思って出来ました。

-特に〈にゃーにゃーにゃー〉の部分は内澤さんが歌うのが想像出来ないです。

内澤:この〈にゃーにゃーにゃー〉って言うのも、今思えば変だなと思うんですが、本当にその時は切羽詰まっていて、本当に少しおかしかったのかな?と思います。メンバーの反応もこの歌詞を持っていった時に、「仮歌だよね?」って聞いてきたんです。でも、この歌詞で歌いたいんですと伝えたら、メンバーもスタッフも本当に驚いてましたね(笑)。 それでいいの?って。これがいいんです。って。〈にゃーにゃーにゃー〉という言葉にその時、凄く惹かれていたのですが、後々聴いてみたら問題作だなと思っています。今まで、こんな曲を書いた事もないし、歌ったこともなかったので、これ果たしてお客さんが聴いたらどうなるんだろうって不安ですね。

-私も聴いた時は本当にびっくりしました!お客さんも〈にゃーにゃーにゃー〉の所は歌うのかな?と思いました(笑)。

内澤:それは確かに面白いですね(笑)。大合唱みたいな。そしたら僕歌わずに、皆に歌って欲しいですね。

-歌うのは恥ずかしくなかったですか?

内澤:本当に切羽詰まった中でレコーディングしていたので、何で僕こんな〈にゃーにゃーにゃー〉言ってるんだろうって思いましたね(笑)。もう後に引けないな、これが正解に間違いない!僕が歌いたいのはこの歌詞だ!と思いました。本当に問題作です。

-初回限定に収録されている、ドキュメンタリー映像をみて、なんだか、ドラマを見ているような、今まで知らなかった一面を見れました。特にライブ前の緊張感がすごいなと。

内澤:基本的に僕は緊張しいなんですよ。何十回もやってたら慣れるかな?と思っていたんですが、やはりいつまでも緊張しますね。でもステージに立ったらそういうのは全て吹き飛びますね。

-ライブの演出もこだわっていると思いますが、メンバー同士で考えたり案をだしたりはするんですか?

内澤:基本的に話し合って決めることが多いです。演出は曲をどうやって伝えるかというのが1番大事だと思っているので、曲のイメージや、カラーなどは伝えて、そこから色々打ち合わせしていますね。少し映像にしてみたり、絵に変えてみる事で具現化してもらう事があります。照明も演奏している感覚なんです。一拍ずつ合わせたり、ここまで細かく照明をする方もいらっしゃらないんじゃないかなと思うくらい細かいです。変拍子等は、本当に苦労していると思います。

-ライブの演出で、この曲はどんな照明をやるのだろうとか、どんな演出なのだろうと考えるのもandropのライブの楽しみのひとつですね。

内澤:それは本当に嬉しいですね。結構、僕たちのライブをみて、照明の勉強を始めました!とか言ってくれる人も多くて、そういうのを聴くと本当に嬉しくなります。その人にとって少しでも人生の一部になれているのかなと思うと、音楽をやってきてよかったなと思いますね。

-始めてムービングの使い方でこんなものがあるのか!と驚きました。

内澤:マニアックですね〜(笑)。照明の打ち込みは本当に大変そうです。前回の国際フォーラム・ホールAの時は11tトラック一台分照明を持ち込みました。ライブの演出で、僕に全部のムービングが自分に向くところがあるんですけど、その瞬間は暑くてもう燃えるんじゃないかと思ったこともあるし、ストロボを使う曲で、クラクラしたりギター弾きづらかったりと、ちょっと苦労があったりもします。

-MVもとてもこだわっていますもんね。例えば「Bright Siren」とか。

内澤:あの撮影は本当に大変でした。真夏のめっちゃ暑い中、倉庫に光が入らないように全て黒幕で全て閉じて、蒸し風呂状態で2日間丸々こもりました。カメラも東京中のカメラを集めて頂いて、プログラミングして、撮影しました。でもあのMVのおかげで、海外でも評価されて、それを機に海外のお客さんも増えましたね。そうやって広がっていくものもあるんだなと思ったら、とても嬉しくなりました。

-3/23の代々木第一体育館でのライブが控えていますね。ワンマンでは最大規模のキャパだと思いますが、意気込みはありますか?

内澤:代々木体育館で演奏する事は夢だったので、それが現実になるのが、本当に嬉しいです。大きいキャパだから頑張るというより、大きい小さいに関わらず、自分の持っているもの以上の物を出そうと思っています。でも、大きいキャパだから出来る、音響や演出、ライティングもあるかと思います。例えば、音響だったら代々木でこんないい音聴いた事ない!と思わせれる様な物にしたいし、映像も今までに無いようなものにしたいし、ライティングも新しい演出も今考えています。演奏ももちろん、演出に負けないような演奏にするべく、一曲一曲向き合ってリハーサルをしています。

-エッグマンにちなんで最後に好きな卵料理を教えてください!

内澤:卵焼きです。

-それはなんでですか?

内澤:母親の作る卵焼きが大好きなんです。小学生の頃のお弁当の定番って卵焼きじゃないですか。もちろん我が家も卵焼きが入っていたんですが、我が家の卵焼きは味付けがしょっぱかったんです。ある日、友達の卵焼きを食べたら、甘い卵焼きだったんです。それが本当に衝撃的で、こんなに美味しいのか!なんで僕の家はしょっぱいんだ!って思って家に帰ってから、母親に我が家も甘い卵焼きがいいって伝えたんです。そしたらその次の日から甘い卵焼きが入っていて、今でも卵焼きを食べるときは甘いほうを作ってくれます。なので卵焼きを食べるといつもそれを思い出すので、好きですね。

-本日は本当にありがとうございました!

内澤:ありがとうございました!