――今回の『ジェネレイション~』と前作『レネゲイズ』の関係からまず話してもらえますか。
「最初のプランは『レネゲイズ』用に用意した素材でもう1枚アルバムを作るつもりだったんだ。使わなかったものを取ってあったから、それでアルバムを作ろう、と。でも、そうはならなかった。なんかこう・・・その素材に不満が出てきたというのではなく、むしろ僕がどんどんインスピレーションが沸いてどんどん曲を書ける状況になったのが理由で、新しく出来た曲の方が力があるような気がしたし、新しいアルバムとして発表するのに相応しいような気がしてね。結局のところ今回のアルバムは『レネゲイズ』の一連の活動が終わってから書いた新曲がほとんどなんだ。たぶん、『レネゲイズ』当時に書いた曲は唯一、”Side by Side”ぐらいじゃないかな。しかも、それは日本盤にしか入らない」
――『レネゲイズ』でフィーダーの1つのチャプターを閉じて次へ、というよりは、あそこで既に新しいチャプターが始まっていた、ということになりますか。
「う~ん、捉え方は様々だろうけど、もう始まっていた、という考え方は確かにできると思うよ。僕も、ある意味あそこからもう始まっていたような気がする。僕らもバンドを長くやってきたが、僕らは常に頑張っている、常に動いている。足を止めたことはないし、僕も常に曲を書いている。今をもってインスピレーションが湧き、アイデアが絶えないのは本当にありがたいことだと思うよ。アーティストによっては、あっと言う間に枯渇してしまう人もいるのを知っているだけにね。経験とか、ここ数年の世界での出来事、自分の生活の中の出来事、子供の親として将来を考えたりとかね、そういう個人的な次元の出来事も含めて、変化に繋がっていると思うんだ。アルバム・タイトルの『ジェネレイション・フリークショウ』は、その辺から来ているんだよ。今の時代って、UKでは・・・というか、世界中どこでもそうだと思うけど、ここ数年・・・つまりこのレコードの制作期間に、実に色々なことがあった。ロンドンでの暴動が全国に広まったのもそう。そんな不思議な時期に僕らはレコードを作って・・・ということから、ああいうタイトルが生まれたんだ。同名の曲のサビの歌詞が、正にそんな思いを歌っている。僕の子供たちの将来はどうなるんだろう、次の世代の世の中ではどんなことが起こるんだろう、と。一方では、今の若者たちの抱えているフラストレーションももちろん理解できるから、タイトル自体がすごく痛々しいというか・・・痛みを感じるんだよね、作業が終わって改めてタイトルを考えた時に、やっぱりこれがしっくりくるな、と。アルバム制作中の、今の時代を反映したタイトルだ、と僕は思ってる」
――それもやはり、割と短期間で多くの曲を書いたことからくる一貫性ですね。
「そうだね。中には前から書いていたものを今回仕上げた、という曲もあるけれど、ほとんどがごく短い期間で書かれている。『レネゲイズ』のアルバムからこぼれた素材も、すごくいいのが沢山あったし、あれは今後また手を入れて使うこともあると思うけど・・・、とにかく新しいのがどんどん書けたんで・・・、確か今度のアルバム用にレコーディングした曲が24曲ぐらいあったはずなんだ」
――あはは。それだけ沢山の曲の中からアルバム収録曲を選ぶ基準は、どこに置きましたか? さっきから話に出る、歌重視とか、メロディとか、あとは幅の広さ、といったところでしょうか。
「実は”ボーダーズ”っていう、こっちでシングルになっている曲が、アルバムの中で最初にミックスまで終わった曲だったんだ。それが1stシングルになるんだから、面白いよね。今回はレコーディングのプロセスを過剰に念入りにするのは避けたいと思っていた。そもそもダイレクトでシンプルというアルバムの方向性は見えていたから、プロデュース過剰にはならないように、そのままライヴで演奏できるような仕上がりに、ということは意識していたし」
――ゲスト出演等はありますか?
「アジアン・カンフー・ジェネレーションのマサフミ・ゴトウとザ・ハイエイタスのタケシ・ホソミだね。タケシと初めて会ったのはずいぶん前で、確かその時に、フィーダーから影響を受けたって話をしてくれたんだ。その後、しばらくメールのやり取りをしていたんだけど、何となく音信不通になってしまって・・・そしたらタカがアジアン・カンフー・ジェネレーションのライヴを観に行ったのをきっかけに、あのバンドのメンバーを通じてまたタケシとも連絡がついた。そしてフジロックの時は飛び入りで僕らとニルヴァーナのカヴァーをやった。その時に僕の方から、フィーダーのアルバムで1曲、ヴォーカルをやってもらえないかって頼んだんだ。彼も是非やりたいと言ってくれたんで話はまとまり(笑)、あとは近年のテクノロジー、インターネットを使って送ったトラックに彼がヴォーカルを入れ・・・と。すごくうまくいったよ。アジアン・カンフー・ジェネレーションは、タカが先に日本でライヴを観て知り合になっていたんだけど、フジロックの数日前に韓国のフェスで一緒になって、そこで僕も紹介されて一緒にビールを飲みながら話をして、これも僕の方からヴォーカルを入れてもらえるかと頼んだ。彼も快く引き受けてくれたんだけど、ちょうどものすごく忙しい時期だったらしくて、自分のアルバムも仕上げの段階だったみたいだし・・・しかも日本語に訳して歌うためにメロディを微調整したり、色々と作業が大変だったと思うんだよね。でも本当に素晴らしい仕事をしてくれたと思うよ」
――じゃあ、そのへんは彼にお任せだったんですね。こうやってアルバムに入れるのは初めてじゃないですか?
「日本のアーティストと一緒にやるのはもちろん初めてだし、こっちでは・・・僕はプロダクションや曲作りでコラボレーションしたことはあるけれど、それをフィーダーのレコードに入れたことはないから・・・そうだね。今回のことは、日本の人たちに興味を持ってもらえれば、と考えてのことなんだ。僕らはもちろん、毎回レコードを出せば日本でツアーをしているけれど、もっと幅広く活動したいと思っていて、そのためにオーディエンスの幅が広がることを願っている。こういうコラボレーションを通じて、彼らのフアンにも僕らのことを知ってもらえれば、と。逆に、こっちの音楽フアンに僕らを通じてアジアン・カンフー・ジェネレーションやザ・ハイエイタスのことを知ってもらえる可能性もあるから、どちらにとっても効果があるんじゃないかな。僕らとしてはとにかく、僕らの音楽を日本のもっと色々な人に聴いてもらいたいんだよ」