-今作「ごめん、やっぱ好きなんだ」を聴かせていただいて、まず吉田山田名義での作詞となっているリアルな歌詞に注目しました。以前お二人で恋愛の話などをするというお話しも伺いましたが、このお話はどちらかの実体験ですか?
吉田(写真 左):いや、これは実体験を元にした話ではないです。
山田(写真 右):春にCDを出せることになって、この季節に合うような思わず胸がキュンとなるような曲を書きたいなって思ったのがスタートで、一番キュンとなる瞬間っていつだろうということを考えた時に、告白する瞬間や好きな人を目の前に告白してそれを待っている瞬間がそうなんじゃないかなと。さらに告白って色々形は違えどきっとだれしもが通る道で、共感してもらえるんじゃないかと思って、その『告白』の部分を切り取った物語ですね。
吉田:僕はこういった状況での告白って経験したことがないですし、先ほど話したように二人とも実体験を描いた訳ではないので、物語自体はフィクションなんですが、この歌詞に詰まったドキドキする気持ちはノンフィクションなんです。歌詞を書いていく中でみんなが共感できるドキドキ感というものを一番大事にしていこうと決めた時に、なるべくリアルに近くして五感に働きかけるような歌詞でなければ伝わらないなと思ったんですが、物語自体はフィクションだから本当のリアルではないという部分で、言葉選びなどすごく気にしました。
-タイトルもかなり衝撃的というか斬新な切り口だなと感じたのですが、このタイトルはどちらが考えたのでしょうか?
山田:これはよっちゃんですね。
吉田:タイトルは一番最後に決めたんですけど、最初はかなり多くの候補があって、それこそ20種類くらいの中ですごく悩んでいたんです。この物語に出てくる二人は24歳くらいで大学卒業して少し社会人経験を積んだくらいの年代をイメージしていて、自分がそのくらいの年代だったころを思い出しつつ、今の自分がこういうシチュエーションで告白する場合になんて言うかなって考えた時に、「ごめん、やっぱずっと一緒にいたいんだ」って言う気がしたんです。それを元に山田に相談して最終的に「ごめん、やっぱ好きなんだ。」というタイトルに決まりました。
-タイトルを一番最後に決めたとのことでしたが、「ごめん、やっぱ好きなんだ。」という歌詞は元々あった言葉なんですか?
吉田:いや、そこの部分だけタイトルが決まってから変えました。
-実体験ではない中で、これほどリアルな描写を歌詞で描くのは相当苦労したんじゃないですか?
山田:相当悩みましたし、何回も書き直しましたね。
吉田:二人での話し合いもいつもより多かったですね。
山田:歌詞を作っていく中で感じましたが、まず二人の恋愛観が違いすぎて苦労しました(笑)。僕が「こういう場面ではこう思うよね?」って聞いたらよっちゃんは「いや俺は絶対思わない!」って言われちゃったりとか(笑)。
-ちなみに山田さんだったら告白の時に「ごめん、やっぱ好きなんだ。」って言いますか?
山田:うーん。僕だったら「大好き!」って素直に言いそうですね(笑)。でも相手との関係性が壊れるかもしれないという不安な気持ちは僕も持つと思うので意識せずに「ごめん。」という言葉が出ちゃうかもしれないなとは思います。
-こういう歌詞を二人で作れる関係性ってすごいなと思いました。お互いの恋愛観をさらけ出すのって恥ずかしくなかったですか?
吉田:全く違う感覚を持っているから逆に素直に話せますよ。以前お話ししたように普段から恋愛の話をする時もありますからね。この曲実は告白からのスタートじゃなくてキスからのスタートにしたいって山田からは言われてたんですけど、僕はそんなチャラチャラした奴を応援できないから嫌だ!って反対したんです(笑)。
山田:僕もさすがにいきなりキスはできないですけど、その方がよりドラマチックというかドキドキしそうだなと思って。
吉田:それはすごく共感できたんですけど、キスしたくてもそんな勇気もなくて「ごめん、やっぱ好きなんだ。」って言っちゃうような主人公の方がこの曲には当てはまるかなと思って、告白からのスタートにしました。この曲を聴いた方には主人公を応援してほしい気持ちもありますし、逆にこの曲を聴いて背中を押されるようなことがあればすごく嬉しいですね。
-この曲を聴いた個人的な感想なのですが、告白の明確な答えが記されていないと感じたのですが二人のその後はどうなっていくのでしょうか?
吉田:ハッピーなラブソングを作りたいというテーマがあったので、結末としてはハッピーエンドですね。ただ、今までの吉田山田では告白しよう!というところまでの物語が多く、ここまでのハッピーエンドは描いてこなかったので新たな挑戦でした。僕個人としてはハッピーエンドな物語はあんまり好きじゃないんですけどね(笑)。
山田:明確な返事を言葉として描きたくなかったという側面はありますね。僕たちの中では「煌めく街の魔法が春の真ん中二人包んでく」、「こんな日をずっと前から夢見てた」、「泣きながら笑っている」などの歌詞の部分で告白の答えを表現しているのですが、そういう解釈もあるんだなって気付かされました。やっぱそれぞれの恋愛観って面白いですね。
吉田:この曲はその人の恋愛観によって情景が変わるってことですね。聴いた感想とかいろんな人に聞いてみたいです。
-今までの曲と違うという面では物語が告白から始まるというところだけではなく、二人の過去が描かれないまま、告白してOKをもらうという部分だけを切り取っているのも新しいですよね。
山田:前作の『メリーゴーランド』の時もお話しさせてもらったかと思いますが、最近の僕らは常に進化していたいとか常に新しいことにチャレンジしていきたいという思いが以前より強くなっているので、そう言ってもらえると嬉しいです。世の中には告白をテーマにした曲はたくさんあると思うのですが、告白から始まる曲ってあまり聞いたことがないなと思ったのでこういった曲を作りましたね。
吉田:実はこの曲の歌詞にはしていない告白以前の部分は山田と二人でとことん突き詰めているんですよ。それこそいろいろな設定を決めていました。歌詞になっているのは告白するところからですが、それは物語の終盤の部分だけを切り取っているんですよね。
山田:書いてみてやはり難しい部分は多かったですが良い作品が出来上がったと思います。
-サウンド面は王道の吉田山田ソングの流れかなと思ったのですが、歌詞の世界観の新しさとが混ざって、絶妙なバランス感がすごく新鮮な印象でした。特に制作の際に気を付けた部分などありますか?
山田:この曲のメロディを思いついた時に、春風がフワっと吹いて女の子の髪とスカートがなびく風景が目に浮かんだんですよ。
-CDジャケットが正に春風がフワっと吹いて女の子の髪とスカートがなびく画ですよね。
山田:実は僕からその風景を伝えた訳ではなかったのにこのジャケ案が出来上がってきたんですよ。この曲から思い描く情景が共有できて嬉しかったです。
-僕も曲を聞いた時に同じような風景が目に浮かびました。
山田:メロディの段階でここまで明確に風景が目に浮かんだのは初めての体験だったのでそれほど強いイメージを与える曲が出来て幸せです。風景と共に最初から歌詞が明確に思い浮かんでいた箇所もいくつかあったので、逆によっちゃんと生み出した物語との整合性を見つけるという新しい苦労もありましたけどね。
-歌詞の部分での苦労が多かった印象の今作ですがレコーディングではどうでしたか?
吉田:今回アレンジを普段バックバンドで演奏してもらっている方に頼んだのでいつものレコーディングよりライブに近い感覚でできたかなとも思います。
山田:僕はレコーディングだと結構肩に力が入ってしまう傾向があるんですけど、ライブに近い感覚でできたのでその雰囲気は今作にも入り込んでいるかなと思います。
-カップリングの『SMILE』についても聞きたいのですが、冒頭で衝撃的な歌詞がでてきますよね。
吉田:「ふざけんじゃねぇよ」から始まりますからね(笑)。
-曲名はSMILEなのにすごい言葉から始まりますよね。
山田:今作は両方とも今まで使ったことのない言葉を使ってみたいと思ったんですよ。前作から自分の気持ちを掘り起こして、さらにもう一歩掘り起こすようにしているので、そこででてきた言葉たちを使うようにしたら「ふざけんじゃねぇよ」という言葉がハマりました。
吉田:この曲もリアル感を大事にしましたね。ガムシャラに頑張れって言われたってそれが出来ないから困ってるんだよ!って感じる人もいると思うんです。そういう人たちは上司だったり社会だったりに「ふざけんじゃねぇよ」って思っているかなと。
-山田さんが歌う「ふざけんじゃねぇよ」が絶妙なニュアンスだなと思いました。
山田:今よっちゃんが言った様に憎しみの意味ではなく鼓舞する気持ちの言葉だからかもしれないですね。
-1曲目とはまた違ったアプローチの春らしさ満載で、すごく前向きな気持ちになれる気がします。
山田:春っていろいろな新しいことに立ち向かっていく時期でもあるのでそんな人の背中を押せたらと思っています。
-今作を聴いての今のインタビューで吉田山田というアーティストの完成度がドンドン高まっていると感じました。
吉田:いやいや、まだまだです。これは謙遜とかではなく、吉田山田はもっと良くなれると思ってますね。
山田:もちろん常にベストを尽してはいますが、もうこれで満足!と思ったことは一度もないです。課題もたくさんありますし、もっと成長してもっといろいろな人に伝わるもっと良い曲を書きたいし、良いライブをしたいです。
-最後に、春は挑戦の時期でもあると思いますし、吉田山田の今後の目標などありますか?
山田:自分が思うカッコいい男になっていきたいですね。歳を重ねて、カッコいい男の理想像が徐々に変化してきたのですが、その時その時に思うカッコいい理想像を追い求めていきたいです。
吉田:ライブを充実した物にしたいという気持ちは引き続き持っていますが、ライブに足を運べない方がいるのも事実ですし、吉田山田を全く知らない方にどうやって吉田山田を届けられるかなと考えた時に、音源という形がベストだなと思ったんです。だから良い曲、良い歌詞を書いて良い音源を作るということも強く思って活動していきたいですね。
-これからも応援させてください!今日はありがとうございました!
吉田山田:ありがとうございました!