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BRAHMAN interview
- SPECIAL -

BRAHMAN interview

BRAHMANのニュー・アルバム『超克』が素晴らしい。震災以降に発表した2枚のシングル「霹靂」、「露命」(今回「霹靂」、「賽の河原」、「最終章」は再レコーディング)を含む全12曲(プラス1曲は唯一の英語詞Judee Sillのカヴァー)が日本語詞に統一され、TOSHI-LOW(Vo)本人が「自分で自分のケツをガンガン叩かれてる感じ」と表現するほど己のリアリティを刻み込んだ傑作に仕上がった。全曲ライヴ映え必至!の血に訴える内容だ。

Interview : Ryosuke Arakane

— 震災以降、TOSHI-LOWさんは被災地への支援やライヴなどを忙しかったと思うんですが、振り返っていかがですか?

■TOSHI-LOW これが正義でしょ!と思って、やっていたわけじゃないんですけどね。その正義も、いつ間にか悪に変わることもあるから。ただ、本当に自分が信じていることや大事なもの・・・それは目の前の良い悪いじゃなくて、もっと先にあるジャッジに対して動いていた気がするんですよ。そのジャッジの基準が遠くにあるから、やれた気がするというか。目の前の課題を一個一個クリアすることで、明日以降を信じられるような気がして。

— 今を全力で生きるからこそ、その先が見えてくると。

■TOSHI-LOW すべてを見る余裕はないんですけどね。けど、もう魂を削られてもいいや、それでもやり抜こうって腹を括った部分はありますね。まあ、俺は雑だけど行動力があるタイプなので、そういう人間にはそういう役割があるじゃないかなって。みんな自分なりでいいと思うんですよ。ただ、自分なりという言葉を逃げ道にして欲しくない。フルスイングするから自分の良さが出てくるわけで。出し惜しみして、自分なりという言葉を俺は使いたくなかったから。無理はみんなあるよって。じゃあ、ある事に対してなぜ自分が無理と感じるのか、どれだけの無理だったらいいのか、それを考えることで自分のことがわかってくると思うから。俺は痛覚おかしいところがあって、最初に痛い思いをすればいいやって、思う方ですからね。お互いに傷つけるのが嫌だから、気を遣い合ったりするわけでしょ? バンド同士もためらいの連続があって、いつの間にか触れない方がいいんじゃないって。

— ヘンに気を遣い合うというか、よそよそしくなってしまう?

■TOSHI-LOW そうそう。だから、ステージや共演するとき以外のバンドのあり方に対して、ほかのバンドが語るものじゃないと思うけど。震災があったときは人間としてどう思うの?って、突きつけなきゃいけなかった。人間として何もできない奴が、音楽を通して人を救うことなんてできないと思ってるから。本当に口だけになるよって。で、みんながボランティアをやってるから、俺はやらないよって、斜に構えるのも全然違う。じゃあ、みんながボランティアやらなかったら、お前はやるんだな!って。それ以前にボランティアやっていたわけじゃないでしょって。みんな自分一人で立ってる気持ちでいたかもしれないけど、立たされていたわけだから。いつの間にか社会の中に取り込まれて、ミュージシャンも小さい枠の中に閉じ込められていた気もするし。それが面白くなくなったというか。

— まず一人の人間としてどうあるべきか。そこを考えるようになった?

■TOSHI-LOW 人間という言葉をどう取るかなんて、そんな押しつけがましいことは言わないけど。人間という言葉を突き詰めたときに、あまりバカな方向に行かないんじゃないかなって。人間=お金と考える人はチープだなって思う。人生って、最終的にお金で買えない得体の知れないものがあるんじゃないのって。それを期待している人がいっぱいいると思うし。それを俺は音楽でいっぱい培うことができるし、それでお金では買えない大切なものをたくさん得ることができたから。人間という言葉の裏で感じてくれるものがたくさんあれば、面白いなあと思って。

— ええ、この辺で音源の話に移りたいんですが、今作はBRAHMANらしい武骨で生々しい表現がすごく増えた気がします。

■TOSHI-LOW 最初にRONZI(Dr)とバンドをやろうと話したときの要素以外は入ってないんですよ。パンクやハードコアに情緒的な民族音楽を合わせる。その方法論に今回はシンプルに向き合えたのが大きいですね。手癖ばかり使ってないし、メンバーそれぞれ新しい展開に行ってる。でも気持ちはバンドをやり始めた頃に戻ってるんですよ。今回は自分で聴いてられない、疲れるから。

— そうですか(笑)。

■TOSHI-LOW 自分に言葉が入ってくるし、自分で自分のケツをガンガン叩かれてる感じがするから。出来た瞬間は2日間ぐらい聴けなくて。いつもは出来たら一杯聴いて、最高だなと思うんですけど。一日空いたら、やっぱりダメだな?って考えたりする。でも今回は違うんですよね。やっぱり自分がいちばんエグいと感じるところを表現しているから、一回聴いて疲れて聴けなくなった。

— 特にオープニング曲の「初期衝動」は凄まじいインパクトがありますね。

■TOSHI-LOW 人生で初めてギターを鳴らしたときの一発目の音には、自然と武骨感が出るだろうし。それは何が違うのかと言えば、”思い”なんじゃないかな。それが手先でやり始めるようになったり、ただの音楽と呼ばれるようになると、いろんなものが薄れていくじゃないですか。俺らが衝撃を受けたのは、何百万枚も売れるような音楽じゃなかったから。ライヴハウスで観た先輩のライヴ、同じぐらいの歳のバンドがギャーン!と鳴らしたあの感じ、それをずっと鳴らしたい。その武骨さを出すために繊細になるというか(笑)。

— はははは、なるほど。

■TOSHI-LOW 今回は前に進んで行く強さが出てるんじゃないかな。どれだけ傷口が開いたまま前に進めるのかなって。そのためには強さが必要なんですよ。弱くても自分じゃん、というのは違う。そういう時代はとっくに終わった。強さがないと自分を支えることができないし、他人も支えることもできないですからね。

— あと、演奏や曲調も凝ったフレーズや展開も多いですね。どこかダサさと紙一重のかっこ良さや遊び心も感じます。

■TOSHI-LOW うん、自分たちでも最初はダセェ!と思うけど、それを全部ボツにして違うものに入れるんじゃなくて、そこにヒントがあるんじゃないかと思ってやるから。リズムもこれいちばんダサイでしょ!みたいなものから遊んでみて、誰もまだやったことがないものが、そこに潜んでいるかもしれない。ライヴでも10数年やってる曲もあるわけだし、俺らは流行りものを作ってるわけじゃないですからね。心臓の音や民族の踊り、それをダサいと取るか、血と取るか、俺らはそれを血だと思ってますからね。見えやすいところにそういうヒントは落ちてないし。ここには絶対ないかな、ないかな、と思うところから見つけ出したものが象徴的なフレーズになったりする。「露命」も作り始めたときは絶対にできないんじゃないかと思いましたからね。

— ギリギリまで追い込まれた状況下の中で生まれてきたんですね。

■TOSHI-LOW うん。あと、俺シンガロングとかあまり好きじゃないし、マイクとか差し出すタイプじゃないんだけど。みんなが声を出して、ガーッとなる瞬間に自分が力をもらえるような気がするんですよ。もはや別にヴォーカルが俺だろうが、誰だろうがいいやって感じで心にくるんですよね。ライヴで気持ちいいと思う感覚が曲にもどんどん多くなってる気がする。今はライヴ以外は意識してないですね。

— 全曲日本語詞になったのは、そういう理由があるんですね。

■TOSHI-LOW 今は日本語から逃げちゃいけない気がして。自分で書きながら、うあっ、ダサっ!と思いながらやってるんですよ。でもそれがダサくならないように、しっかり考えますからね。日本語以外のタイトルを付ければ簡単かもしれない。逃げれるし、含みも持たせられるけど、日本語は逃げられないから。そこで勝負してみたかった。そこがいちばんでかいですね。俺らはやり始めの頃からダサイとか言われて、それでも思い込んでやり続けていくと、いつの間にか人の価値観も変わる。汗かいてる姿を汚いと思う人もいれば、汗が素晴らしく輝いて見える人もいるわけで、それをどちらかにするのは自分次第ですからね。