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なきごと interview
- SPECIAL -

なきごと interview

初ライブからまだ1年足らず。恐ろしいスピード感で成長している【なきごと】というバンドをみなさんご存じですか?きっと来年にはそう聞いたら知ってる!という人が間違いなく相当数増えていると思います。今からチェックしておいて損はありません。初々しさもありつつもしっかりと先を見据えた二人の目力はホンモノです。

インタビュアー:ブッキングマネージャー窪田

―今回4Pの特集です。

水上えみり(Vo,Gt 写真右 以下…水):うれしいです!ありがとうございます。
岡田安未(Gt,Cho 写真左 以下…岡):たくさん話さなければですね(笑)。
水:もし文章足りなかったら写真で埋める感じでお願いします(笑)。

―それは困るのでたくさん話してください(笑)。今年の10月で初ライブちょうど1年ですね。振り返ってみてどうですか?

水:めまぐるしい毎日だったなと思います。

―1年後今の状況になっている想像ってできていましたか?

岡:全くです。1年前はまだmurffin discs auditionに応募したくらいの時期ですからね。まだ初ライブもやっていない時期でしたから、そこから1年で全国流通盤を2枚もリリースできるなんて。
水:もしオーディションで準グランプリをとっていなかったらきっと今頃ようやく音源を作るかなとかでヒィヒィ言っていたかなと思います。

―とんでもないスピード感ですもんね。全力疾走的な。

岡:むしろ走っているというより車に乗ってビューンと走り抜けているような感覚ですかね。そのくらいのスピード感です。
水:でもほぼほぼナビなしです(笑)。とにかくアクセル踏み込んでるみたいな。いつ崖がくるかわからないし。
岡:ガソリンも常にエンプティギリギリかも(笑)。
水:とにかく必死ですね。でも結成1年でこの状況でバンド活動をできているというのは本当に周りの応援してくださっている方々のおかげだし、本当に恵まれているなと思います。

―先ほど話にもでましたが早くも2枚目のリリースですね。しかも[NOiD]から。

岡:SUPER BEAVERは専門学生時代コピーとかしてましたもん。本当に1年前からは想像がつかないです。
水:先日のレーベルナイト@仙台の時にいろいろな先輩ともお話させてもらって、あー本当にmurffin discsに、そしてその中の[NOiD]に入ってみんなの一員になれたんだなって実感しましたね。先輩なんだけど家族みたいな部分もある方々だなって感じたし、最高なレーベルだなって思いました。
岡:みんな親身になって相談も乗ってくれるしね。
水:しかもちゃんと厳しいことも言ってくれるし、説得力もとんでもなかったね。悔しい想いもありましたが、絶対成長してやる!って思っています。スタッフさんもみんなバンドのために動いてくれているのがわかるし、本当にこのレーベルに入ることができてよかったです。

―そしてアー写も変わりましたね。

岡:そうなんです。スタジオみたいなところで撮ったように見えますが、白いパーティションで囲って箱みたいなものを作ってその中に私たちがいて。
水:しかも奥行きあるように見えるけど実は結構狭いんだよね。私の足が岡田の顔より大きく見える(笑)。

―奥行きありそうですもんね。結構大きめの部屋で撮ったように見えます。言われなかったらわからないですね。作品についても聞いていきたいと思います。まずは「夜のつくり方」という作品タイトルの由来から教えてください。

水:このタイトルは曲が出そろってから最後に決めました。全体的に夜を感じる曲が多くて、でも6曲それぞれキャラクターが違って、振り幅が広いから元気な時に聴きたい曲、悲しい時に聴きたい曲、疲れた時に聴きたい曲、一人で聴きたい時もあれば誰かと聴きたい曲もあるなと思ったんです。聴いてくれる人それぞれのその時の心情で聴いてもらいたいなと思ったのがきっかけです。夜って朝とか昼とかにおきた出来事の最後に訪れる物で、いろいろな感情が詰まっているからそんな夜にこの1枚が寄り添えたらと思ってこのタイトルにしました。

―なきごとは夜っぽいイメージがありますね。前回のアー写もそうだったし、メトロポリタンにも夜っぽいシーンがでてくるし。

水:確かにそうですね。前回より前のアー写も夜ではなかったんですけど、背景暗かったし。でもメトロポリタンは夜のシーンだけでもないし、特に夜だけを意識しているわけでもないですけどね。

―夜を感じる曲が多いのは物理的に夜に作ることが多いからとかではないですか?

水:きっとそれはありますね(笑)。
岡:えみりがすごい夜行性なんですよ。朝6時とかに寝て昼に起きるみたいな。逆に私はすごく早起きで。

―二人の時間合わなそうですね。

水:それが意外に合うんですよ。岡田が寝てる間に曲作って送って、岡田が起きたらそれを聴いてみたいな。
岡:私が起きてからとえみりが寝るまでの1時間とかのやり取りが濃いですね(笑)。

―なるほど(笑)。今作に『ドリー』と『メトロポリタン』という1st demo CDに収録されている2曲を改めて収録したのは[NOiD]からリリースする新たな第一歩的な側面があるのですか?

水:純粋にお気に入りの2曲というのもありますし、初ライブからずっとライブでやっている曲だし、この2曲はどうしても外せないなっていうのもありますし、6曲という作品構成のバランスを考えたときにもこの2曲はとても大切なので収録しました。

―『メトロポリタン』はdemoも含めて今まで作った3枚すべてに収録されているし、なきごとといえばこの曲というイメージもありますもん。今作の収録曲について1曲ずつお話を聞いていけたらと思います。まずは1曲目の『合鍵』。

水:昔、お付き合いしていた人と喧嘩をしたときに作った曲ですね。

―その割にはこの曲はヘイト感ないですね。それこそ前作の『忘却炉』とかはヘイト感満載だったような気がするので。

岡:この曲は哀愁がありますよね。
水:喧嘩による怒りではなく喧嘩による哀しみのほうにフォーカスした曲ですね。ただでもその喧嘩はあくまできっかけでそれを元に自分の中で架空の物語が広がっていって、この曲ができたんです。この曲のテーマは“金曜日の女”なんです。金曜日に浮気相手の男性と飲んで、すごく楽しい夜を過ごすことができたのに、でも結句翌土曜日の朝は一人で迎えて気怠いっていうストーリーが冒頭と最後の歌詞の部分に繋がっていて。合鍵をもらっても、愛しているよって言われても結局大切な部分でお互いに繋がっていないと哀しい気持ちが残るんだなっていう心情を描いた楽曲です。
岡:心理描写がある曲ですよね。きっとその時えみりになんかあったんだろうなぁって(笑)。
水:曲が書けるときって心が大きく動いた時ですからね。日記みたいな物でもあると思います。

―そして2曲目はなきごとの代表曲と言える『メトロポリタン』。前回のインタビュー時には伺えてなかったですが実はこの曲は復讐の曲だとか。

水:そうなんです。これにはストーリーがあって。まず女の子が総理と付き合って、その総理が浮気をして。

―また浮気の曲なんですね(笑)。

水:わりと負の感情をテーマに書くことが多いんですよね。
岡:たまには幸せになる曲書いてみるのもいいかもね。

―それはそれで面白い曲ができそうですし、負の感情をテーマにしているのにドロドロ感がないのがなきごとの特徴かもですね。

水:自分の好きな音楽は結構王道なロックとかポップスなのでそこが影響しているかと思います。

―話が脱線してしまってすみません(笑)。メトロポリタンの話の続きを聞かせてください。

水:その浮気をきっかけに女の子とヒドい別れ方をしちゃうんです。で、女の子が警察にチクるんですよ。そこからハニートラップ的な感じで、警察に「あの人ヤバいですよ」みたいなことを言って、総理を陥れる。その舞台がメトロポリタンというホテルで。でも、本当は総理のことが好きだから、「ごめんね」とか「許して」と歌ってるんです。

―すごい物語ですね。

水:自分の中ではそこまで奇抜なことをしようというイメージはなかったんですけどね。

―なかなか総理大臣という設定がでてこないですよ。

水:最初のきっかけは“Sorry”と“総理”という言葉遊びをしたいなっていうところからだったんです。

―そこからこの物語が出来上がるのは面白いですよ。

岡:いつか小説とか書いてみてほしいな。
水:やってみたいね。小さい頃本を書いていた時もあったので。きっと物語的な物を書くのが好きなんだと思います。二年前くらいにエッセイを書いたこともあるんです。三日坊主になるかもと思ったらそれより短い二日で終わりましたけど。
岡:私それ全然知らない!
水:だってその日にあったことをつらつら書いただけだから特に言わないでしょ(笑)。

―二人組で一緒にいって知らないこともまだあるんですね。

岡:お互い必要以上に干渉しないんですよね。
水:前身バンドからなきごとになってからお互いのことを知ることが増えたよね。
岡:それは確かに。二人ともB型だからか深追いしないというか良い意味でマイペースがあるもんね。
水:B型って意外に気が合うんですよね。良い距離感というか。きっとどちらかが干渉するタイプだったら嫌になっちゃうよね。
岡:今同じ事言おうと思ってたよ(笑)。
水:お互いちょっとずつ抜けている部分があって、補完し合ってちょうど良いんですよね。

―良いバランスなんでしょうね。なきごとってこの二人だから成立するんだなって思うことが多いですもん。他に正式メンバーが二人いたら違うんだろうなぁって。

岡:私たち二人をまとめるのは相当大変でしょうからね(笑)。
水:それだね(笑)。

―想像したらすごく大変そうでした(笑)。また話が脱線してしまいましたね。曲の話に戻りましょう。3曲目は『ユーモラル討論会』。これは聴いた瞬間のサウンド感にやられました。

水:実は元々もっとポップで柔らかい雰囲気の曲だったんですよ。そこからかなり別ベクトルでとんでもない進化を遂げた曲です。パステルカラーのイメージから一気にビビッドカラーになりました。

―リズム隊が半端ないですよ。先ほどの話にも通じますがここがなきごとが二人であることの強みでもありますよね。

水:レコーディングメンバーの二人がこの曲をすごいところまで持っていってくれましたからね。きっと正規メンバーでリズム隊だったらこの曲は出来上がっていないと思います。

―岡田さんはギタリストとしては負けられない戦いだったんじゃないですか?

岡:まさにです。負けてたまるか!って思いながらレコーディングしました。ここで私が負けてしまってリズム隊にだけフォーカスがあたる曲になってしまったらなきごとの色が薄くなってしまいますからね。めちゃくちゃ気合い入れました。しかも4人で一斉に録ったので余計に。

―ギターの音作りも独特ですよね。

岡:そこも意識しました。実は曲の冒頭部分の音は私のミスから生まれたんです。ミュートし忘れてハウリングしてしまった音で。
水:しかも曲の冒頭部分で弾いていたわけじゃなくて別の部分であの音がでていて、その音冒頭部分に入れたら面白いんじゃない!?っていうアイディアからあの形になったんです。

―しっかりハマってますよね。すごい偶然。

岡:私としてはミスしてしまった!と思って焦っていたらまさかの採用になったので一安心でした(笑)。

―そしてガラリと雰囲気が変わって4曲目は『のらりくらり』。

水:私がニートだった時代に作った曲ですね。なにもしていないと時間ってすごく余っていて。人からしたらもったいないって感じると思うんですけど、人生にとっては大事な時間だったなって。時間の無駄遣いって最高に贅沢な時間の使い方だなって思えたんです。
岡:罪悪感半端ないけどね。
水:そうなんだよね。その罪悪感もすごく必要で。曲を作る時間が自由にあっても、結局曲作りってはかどらなくて。自由な時間が少なくても作れる人は作れるんですよね。

―締め切りがあるというのは本当に大事ですよね。そこにめがけて動くから完成するわけで。

水:まさにそうだと思います。でもなにもしない時があったからそれに気づけたので私にとっては必要なことだったんだと思えるので、こうやって曲という形にできてよかったです。思います。

―そんな曲に続くのは『深夜2時とハイボール』。これはまさに夜に書いた曲ですか?

水:夜の満員の南部線に乗っているときに携帯で歌詞を書き始めて、家に帰る途中のコンビニで缶のハイボールを買って飲みながら書き進めて。しかもその日がちょうどバイトを辞めた時で。歌詞に使っている言葉は暗いものもあるんですが、“いきたくなった”という言葉も使っていて、実は前向きというかちゃんと前進する曲的な側面があります。最終的には唯一救われている曲かなと思います。

―そして最後は『ドリー』。この曲もまさになきごとだなというイメージがあります。

水:そう言ってもらえるのは嬉しいですね。この曲と『メトロポリタン』があったから今のなきごとがありますね。
岡:その2曲を聴いて、えみりの隣でまたギターを弾きたいなって思えたんです。
水:ニヤニヤしてしまいますね(笑)。

―そのくらいインパクトのある曲ですよね。

水:前身バンドのメンバーが私以外全員辞めるとなった時に書いたので、個人的には窮地に立たされているタイミングでこの曲が生まれて、また岡田とバンドをやれることになったというのは大きな転機でしたね。

―この曲がなければ本当に今がなかったんですね。どんなテーマで書いた曲なんですか?

水:たまたまクローン羊の“ドリー”の記事を見て調べてみたら、クローンが6体くらい生きているのに、その本体の“ドリー”は亡くなっていて。その原因がクローンを作った影響なのかはわかってはいないんですが、クローンは生き残って本体は亡くなってしまっているのってすごい虚無感というか哀しいというか、考えさせられたんですよね。それで“ドリー”についての曲を書こうって思って、普段の生活とも重ねてこの曲を作りました。代わりなんていくらでもいるんだ的な言葉を聞くことあると思うんですけど、“ドリー”もクローンが生きていて代わりにはなっているかもしれないけど、本体はもうこの世にはいなくて、でも代わりは実在していて、なにが正解でなにが大元でみんななにを求めているのかわからないなって感じて、それなら私がその存在を正当化してみようと思って。

―メンバーが辞めるタイミングでこの曲が生まれたというのは面白いですね。

水:確かにそうですね。

―岡田さんにとって水上さんの代わりはいなかったということですもんね。自分自身の存在意義を自分自身で作れたというのはすごい。

岡:えみりが書く曲がここでガラッと変わったんですよね。今までとは明らかに違って。この2曲を書ける人とまたバンドを一緒にやりたいなって思いました。
水:一時期曲作りが大スランプで全然書けなかったんですよ。

―この2曲が書けて本当によかったですね。そういう部分も考えるとやはりこの2曲は今作において絶対必要だし、これからのなきごとにとっても必要な曲であり続けるんだろうなと思えました。そしてこれは作品全体を通してなんですがアレンジが秀逸だなと感じました。心がけていることや意識していることはありますか?

岡:音源を聴いてこれずるいなーって思ってもらえるようなアレンジを意識はしています。でも私が考えるアレンジは最初大体拒否されます(笑)。
水:本当に奇妙なアレンジなんですよ。だから一回持ち帰って冷静に判断しようって。
岡:そこから徐々に説得していきます(笑)。

―そういうのも二人だから進めやすいっていうのはあるかもですね。水上さんが作詞作曲をして岡田さんがアレンジをして。なきごとはこの二人じゃないと成立しない感をとても感じます。

岡:それはすごく嬉しい言葉ですね。
水:この二人だったら正規メンバー二人でバンドやれるなって思えます。

―とても良い関係性ですね。そして今作をひっさげてのツアーが決まっていますね。前回のツアーファイナルが成長を感じるライブだったので今回も楽しみです。

岡:osageのライブを見ると4人バンドの良さを感じるし、身近にライバルがいるというのは大事だなと思いましたね。
水:同時期にリリースをしてスプリットツアーを回れたから成長できた部分は大きいと思います。とても有意義なツアーだったので今回はそれを上回るツアーにしたいと思っています。本数も多いし、初めて行く土地もありますし、この1枚を持ってたくさんの方に出会いたいですね。

―これからの成長も楽しみにしています。