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the quiet room 「Where is the stone?」
- SPECIAL -

the quiet room 「Where is the stone?」

Stone in the “グレイトエスケイプ” #2

灯りの消えた街で感じ取れるのは、あなたの呼吸と、鼓動の、密やかな気配だけだった。砂時計の砂が少しずつ落ちていくような、とても微かな気配。街は静寂に包まれて、まるで世界にふたりきりのようだった。

いつになったらこの長い夜が明けるのか、見当もつかなかった。時間がゆっくりと過ぎて何もかもが永遠に続くように思えた。もう此処から出ることが出来なくなってもいい、そんな馬鹿みたいなことを思ってしまう。

ああ、もう少し手を伸ばせば助手席で寝息を立てるあなたに触れてしまいそう。もっと奥まで手を伸ばしてみたいのに、肝心な所で戸惑ってしまう。触れてしまったら最後、この幸せな時間が終わってしまうような気がしたからだ。呼吸を整えて、運転席の窓から外を見る。街はまだ暗闇に包まれ、微かに揺れるひとつ、ふたつ、ランプの灯りだ。

今、車のエンジンをつけてこの街を抜け出したらあなたは着いてきてくれるだろうか。あなたが目を覚ましたら僕はこの想いを上手に言葉に出来るだろうか。永遠に思えた時間も過ぎていって、朝が少しずつ近付いてきた。出来ればあと少し、もう少しだけでいいから、このままでいたいと思った。

Digital Single 「グレイトエスケイプ」より