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テスラは泣かない。 1/f
- SPECIAL -

テスラは泣かない。 1/f

《1/fの揺らぎ、樹上のホワイトノイズ。羊水のなかで聞いていた、それ。》 吉牟田 直和[Bass] 

 文章を書いていると頭がよく働く。根性論になるのかもしれないし、科学的根拠のある話かもしれないが、勉強のときには昔から「書いて覚えろ」と言われたものだ。とはいえ、あれだけ口を酸っぱくして言われた「イイクニ(1192年)つくろう鎌倉幕府」がどうやら違うようだし、聖徳太子という言葉も今の教科書からは消えつつあるらしい。時代が変わりつつあるから、若い頃に刷り込まれた、今の私を作り上げている「常識」というものもだんだんと世の中に削ぐわなくなっていくのだろう。長い脱線になってしまったが話を戻すと、コラムを書いていると書いているうちに次の題材が浮かぶことが多い。それならば次月のことを書いてしまえば良いものを、ものぐさに忘れて次の締め切りまで文章を書くことをしない自分がいる。時折メモ程度に思いついたものを書くことはあるが、その時に思いついたことはその時に胸を打ったことであるので、今の自分というものには少々響かないことが多いものだ。思ったものはその時に打ち込まなければ為されることは少ないと思う。
 頭がよく働く、ということと身体がよく働くというのは違うらしい。身体がよく働けば日々の生活は上手くいく。ご飯を食べるのにも、身体が動かなければならない。ゴミを捨てるのにも身体がよく働かなければならない。日々の生活を生きる上では、頭がよく働く必要はない。突飛なことをしなくても人生というのは回っていくのだな、と静かな日々には思うのである。先程はアイロンをかけた。ちゃんと朝食も昼食も食べた。掃除機をかけたあたりで、コラムの締め切りを思い出したので、頭を働かせようとコーヒーを飲んだ。
 ようやくコラムを書いているわけである。なんともゆっくりとした一日に、ふと昔のことを思い出してみれば、あの時にガミガミと言われた言葉たちも大切なことだったのだろうと思うのだ。やれ、掃除の時間だ、やれ、挨拶ははっきりしろ。あの頃には、まったくをもって響かないものだったが、中には時代が変わろうとも真理のままであるものがあるのだろう。時が変われば常識が変わる。常識が変われば忘れられるものもある。忘れない方が人間の身のためだ、というものもあるのだろう。私に必要なものは、「やれ、ちゃんと宿題をしろ」というところだろうか。やれやれ。

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《1/fって何すか。》 村上 学[Vocal/Guitar] 

 大学生だった頃、授業で課題が出て、そのレポートを提出した際に、先生に「この内容は、理解は出来るんだけど、納得できないんだよなあ」と言われ、やり直しを食らったことがある。私としては、その評価こそ納得がいかなかったのだが、しぶしぶ書き直して提出した。その後、納得させることができたかは未だに不明だが、先生のご慈悲でどうにか「合格」の印鑑を押された。「理解はできるけど、納得できない」って何だよ。頭では分かっているはずなのに、どうも心の奥がモヤモヤする。まあ、そういうことなんだろう。これに似たような言い回しは他にもあって、例えば意中の相手に告白をした時に言われる「あなたのことは好きだけど、そういう風には見れないの」とか。やっぱり、頭と心は別々の場所にあると考えるしかないのか。
 しかし、こんなことを言える時代というのは、なかなか贅沢で、平和だなとも思う。何百年も昔、時の将軍徳川綱吉が“生類憐みの令”を発令し、犬猫に危害を与えようものなら簡単に人の首がはねられた時代、誰がそんなことに納得しただろうか。もしかすると、世界は、理解も納得もできない時代の方がよっぽど長かったのかもしれない。話が少し逸れてしまったが、この平和な時代では、SNSでもワイドショーも多くの「納得いかない!」で溢れているし、それが民主主義の産物だとしたら、首をはねられるよりかはマシか。
 さて、いい加減に本題に向き合わなければいけない。理解は出来るけど納得がいかないことを、納得するためにはどうすれば良いのだろう。もう仕方ないといって諦める?それは“受け入れる”ということ?何となくごまかしとく?時間が経って少しずつ忘れていくのを待つ?いや、どれも何度も試したけど、しっくりこなかった。今、私がこの課題に対しての考察を提出するならば何を書こう。“納得できないものは、納得できないと、納得するしかないのです。それが自分らしさというものであって、どうしても納得したければ己の変革を遂げなければなりません。己の変革なくして、それでも納得はしたいなど、虫の良い話です。
 納得をするということは、一種の降伏なのです。”「不合格」。そりゃそうだ。理解できるし、納得せざる得ない。

 

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[テスラは泣かない。]
L→R
吉牟田直和(Bass)/飯野桃子(Piano&Chorus)/村上学(Vocal&Guitar)/實吉祐一(Drums)
印象的なピアノのリフレインを武器に、圧倒的なライブパフォーマンスで各方面から脚光を浴びる、鹿児島発4人組ピアノロックバンド。インテリジェンス溢れる音楽性と、エーモショナルなライブパフォーマンスを融合させた、他の追随を許さない孤高のロックバンドである。
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