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Czecho No Republic interview
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Czecho No Republic interview

チェコノーリパブリック(Czecho No Republic)のニューアルバム『DREAMS』が完成した。バンドのパブリックイメージである夏らしさが凝縮された本作、まさしくバンドの原点回帰とも言える内容となっている。一方でサウンド面においては、これまでにない新たな表現で、よりバンドの魅力を引き出すことにチャレンジした。7月には自らが主催する『Czecho No Republic Presentsドリームシャワー 2016』を新木場スタジオコーストで開催、9月からは本作を携えた全国15公演ワンマンツアーも敢行する予定だ。今年の夏を彩る『DREAMS』、チェコにどんな作品に仕上がったのかを語っもらおう。

Interview & Text : 鞘師 至

ーメジャー4枚目のアルバム『DREAMS』が完成。アルバムでは前作『Santa Fe』からは約10ヶ月ぶりで、Czecho No Republic(以下、チェコ)らしさ溢れる夏感を全面に押し出した作品に仕上がっていると思いますが、夏という季節がコンセプトになったのはどういう理由があったんですか?

武井優心(以下、T):今回のアルバムの制作に取りかかる前に、現状、どういう曲がアイディアとしてあるのかを、みんなに聴かせたんですよね。そこで『夏っぽい』って感想をもらったんで、じゃあ、夏らしいチェコを創ろうというコンセプトになったんです。ある意味、自分たちの原点に立ち戻るような感覚ですね。そういうテーマを最初に用意して作品を創り上げるのは初めてのことでしたし、夏にリリースするという意味を考えて、どのようにしたら、自分達らしく季節にマッチするポップサウンドを表現できるかを追究しながら制作を進めたんです。

–チェコのイメージとして”夏”を思い浮かべる人は多いと思います。だからこそフラミンゴや、ビーチ感、青空などをビジュアルに用いた今作はファンにとっても待望の内容だと思います。実際に出来上がってみて、バンドにとって、どのような作品になったと感じていますか?

T:チェコの個性の1つはポップなサウンドだと思うんですが、それを思いっきり表現できていると思いますね。音もこれまでにないくらい立体感があるし、曲毎のアレンジも本当に自由になっているので、表情豊かなアルバムになってると思います。タイトルの『DREAMS』通り、色んな思いや夢を込めた作品でもあります。今年の夏は是非聴いて欲しいと自信を持って言えるアルバムになったと思います。

ー音の話が出ましたが、アルバム全体のサウンド面においては、前作とかなり変わった印象を受けましたが、音質については、どのようにまとめていったんですか?

T:録音した音をまとめるMIX作業の段階で、とにかくコンプレッションをかけないようにしたんですよ。そうすることで音の輪郭を潰さないように仕上げることができる。逆にありのままで聴こえる部分が出てくるんですが、人によっては下手に聴こえてしまうようなところや、息継ぎの臨場感も、今作は、あえてそのまま残すようにしたんです。バンドのリアルさや、生々しさを感じられるように、音に人間味があるように仕上げたかったんです。前作までの、チェコノーリパブリックの音質を振り返って考えてみると、デジタルの要素を上手く取り入れすぎていて、きれいに整頓され過ぎているように思えたんですよね。自分のボイストレーニングの先生に音源を聴いてもらった時に『普通のMIX(音)だね』とか感想をもらったりしたことがあって(笑)。それを言われて初めて自分で気づいたんですよ、もしかしたら面白みのない音になっているのかもしれないって事に。だから今作は違う仕上げ方をしているし、アルバム全体を通して今までと差が出ているんだと思います。完成した音を聴けばわかると思うんですが、楽器や歌がうまく分離されていて立体感があると思います。今までになかったチェコの音ですね。

 

曲に表情があればメロディはなくても伝わるー武井優心

 

ーなるほど。では、ここからは楽曲ごとに聞きたい事を伺います。3曲目『Electric Gril』についてですが、終盤の「I haven’t felt that good,since ’92」という一節が耳に残りました。これは何を示しているんですか?

T:僕が大好きな『Trainspotting』という映画があるんですが、その中でも特に好きな台詞のサンプリングなんです。けっこう過激なシーンで出てくる言葉なんですが、ユーモアが効いているというか。この一節が楽曲の核になるというものではないんですが、スキャット的な意味合いで聴いてもらえると嬉しいですね。

ー4曲目『Dreamer』には冒頭からスポークンスタイルでのボーカルですが、これは誰が歌っているんですか?

T:それ僕ですね。高い声と低い声を掛け合わせているんです。喋り声の雰囲気がちょうどこの感じなんですよね。ラジオ番組などで喋っている自分の声を聞き返すと、意外にポップだな、と思って。楽曲の演奏に表情があって聴き応えがあるので、そういうときは無理矢理メロディを乗っけなくても曲として成立しますからね。それに、スポークンスタイルはずっとやりたいと考えていたことなんですよ、ラップも好きですし、これからもスポークンスタイルは取り入れていこうと思っています。歌詞の内容については、僕自身のことを歌っているように見えるかもしれませんが、自分を主人公として書いたわけではありません。聴く人みんなにも、当てはまるような内容じゃないかと思いますね。

ー5曲目『BB』は言葉の掛け合わせがユニークだと感じましたが、どういう内容ですか?

T:これはとある海外ドラマを見たときに感じたことが発想の元になっています。バンドとしては海外インディーズの音から影響を受けている部分もあるんですが、歌詞や世界観を表現する上では、映画やドラマ、自分の好きなあらゆるものから受けた感情を採取することが多いですね。

ーアルバムを通して非常にバラエティに富んでいると思うんですよね。八木さんが手掛けている6曲目『ゴッホとジョン』、7曲目『ヘンリー・ジョーと海の城』、11曲目『Born Again』に出てくる「セントクリストファーネイビス」など、言葉のチョイスにセンスを感じます。普段、どういう音楽から影響を受けているんですか?

八木類:音楽はUSのインディーズが多いですね。言葉については、今、英語を勉強しなおしているところなので、英語と日本語の語感がうまくリンクするようなワードを探して書いているんですよね。「セントクリストファーネイビス」については、音の並びとして丁度良く当てはまるワードがないか調べているときに見つけたんですが、これは西インドの方にある国の名前です。独立した年も1番新しかったり、日本とは国のシステムが違う部分もあるんで、そこで”生まれ変わろう”という歌詞ですね。語感も重視していますが、ストーリーももちろん考慮して歌詞にしています。

ー8曲目『Blue Holiday』では心地よいギターカッティングが聴けますが、ギタリスト然としていてチェコとのマッチングがおもしろかったです。 これは誰が弾いているんですか?

T:僕が弾いています。デモの段階から入れていたんですが、基本的に弾く、弾かないを意図的に分けることはないですからね。自分たちが弾けるものであれば、何でも取り入れます。

ー9曲目『Shiny Girl』はマイさんが手掛けていますね。女の子も聴いて共感したり楽しめるような、マイさん自身の人間性を感じる曲だと思いました。楽曲制作はどのように行なっているんですか?

タカハシマイ(以下、M):曲の断片ごとに制作を進めて、そのうちの1つがうまく曲として成立しそうなアイディアが出てきたら、それを突き詰めて行くという作業ですね。1曲を仕上げて次に取りかかるというよりも、パーツごとに作って、それぞれを組み立てて行くんですよ。

ー10曲目『パニック』では曲中にシャウトが入っているのも楽しい雰囲気を感じます。聴きどころですね。この声は砂川さん?

T:これも僕なんですよ(笑)。以前からシャウトを使えるメンバーがいたら、表現の幅が広がるのになって考えていたことがあったんですが、前シングル『24 Factory』で自分でシャウトをやったら意外にできた、という。だから今回も取り入れようと思ったんです。面白い感じが表現できていると思います。

ーこの曲、ドラムには特にロックなイメージを感じました。ガンガン攻めている感じが曲に表現されています。このドラムは生音ですよね。

山崎正太郎:そうですね。 逆に打ち込みオンリーのドラムの曲もあるんで、そんなときはレコーディング現場ではひたすら待機なんですよ(笑)。あえて生音で取り直す必要がないものは、そのまま打ち込みで進めることも多いんです。故にライブで初めて生音での演奏が聴ける事になる曲も多いんですよね。それはそれでライブの醍醐味かな、と。

ー12曲目『エンドロール』は、人生の終幕的な”死”みたいなテーマとも取れる様な歌詞を全然対局なやさしい曲に載せているところがおもしろかったですが、歌詞では実際どんな事を表現しているんですか?

T:どうなんでしょう、わからないですね(笑)。”死”とも捉えられると思うんですけど、何かの終わりだとか、そういう内容をこの曲に関しては決められないですね。聴く人によって感じ方も変わってくると思うので、何を歌っているのかは、受け取る人の感じ方にお任せしたいですね。

 

アルバムを携えて挑戦していくことが楽しみー武井優心

 

ー『DREAMS』は、視覚的にも夏らしさを感じるアルバムですね。ジャケットのアートワークは今、東京のファッションシーンでも話題を集めるグラフィックアーティスト、YOSHIROTTENが手掛けているし、新しく公開されたアーティスト写真にも、フラミンゴのモチーフが統一されて使用されています。良い意味でイノセントな雰囲気だし、都会的な印象を受けました。撮影はどこでしたんですか?

T:このアーティスト写真は、福島県にある東北サファリパークっていうところで撮影したんですよ。乗り物に乗ってる写真、これ実はサファリパークのスタッフ用の乗り物なんです(笑)。実物見ると前はサルの顔になってたりして子供用の乗り物みたいなんですけど、こうやって写真になると、また違う雰囲気になりますよね。フォトグラファーもいい人で、良い仕上がりになりました。今回の作品にマッチしているんじゃないでしょうか。

ー7月20日に『DREAMS』がリリースされますが、その前、7月16日には海外でライブがありますね。韓国のTHE KOXXによる「PiXEL Vol.3」に出演予定ですが、チェコが海外に進出してライブをやることに対してはどう思いますか?

T:初の海外ライブになるわけですからね。今のところ、自分達がどのようにお客さんの目に映るのかが全然想像できないからどんなライブになるのかが予測不可能ですね。THE KOXXと初めて共演したのは2012年のエッグマンだったんですけど、そのとき結構ビビったんですよ。ライブの完成度の高さやずば抜けた演奏力を見て。異常な表現力だと思いましたね。洋楽のシーンに置き換えても、演奏力は上回っているんじゃないか、と感じるぐらい。だからオレたちとしては、テクニックではないところでの勝負にしたいな、と。うまくハマればいいんですが(笑)。自分たちの痕跡を残したいですからね。海外での活動は、今後、個人的にも続けていきたいことの1つですから、今回やってみてどうなるか楽しみです。㋅下旬からは全国でDaydream Setという新しいスタイルでのインストアツアーも行いますし、9月からは『DREAMS』リリース記念として全国15公演のワンマンツアー「Welcome to the Hotel Flamingo Tour」が始まります。全国に今作を持ってツアーで披露できるのも楽しみですね。