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ONE☆DRAFT interview
- SPECIAL -

ONE☆DRAFT interview

本物感至上主義、常に自分たちの生き様に実直な音楽と活動を続けて去年、10周年を迎え、今年からはまた新たなフェイズに突入した2MC1DJ、ONE☆DRAFTの最新フルアルバム『ENDRUN』は、ガチうたキングと称される彼らの代名詞的アゲ曲だけでなく、まだ出会わぬ未開のリスナー達へもこれまで以上に出会っていきたい、という強い願いを反映したようなバリエーションに富んだ楽曲が並ぶ。 どこからでもかかってきなさい的な曲ごとの多様なストーリーは、かたちを変えど経験からくるリアルな気持ちという部分での筋を、真ん中に一本通しながら流れていくクリーンナップ打線ばりの説得力。 これはやはりルーキーにはない、経験を背中に乗ったことばの強さだ。

Interview & Text : 鞘師 至

— ライブではeggmanに幾度と出演してくれていますが、本誌では初登場ですね。 ONE☆DRAFTはメンバー全員帝京高校野球部出身という事で、昔からの連れと今も活動続けているっていうところが女子だけでなく男も惹かれる部分なのかな、と思うんですけど、始まりがかなり奇跡的なタイミングだったとか。 このグループを組むすぐ前までLANCEさんはアメリカで暮らしていたとの事ですが、それって元々音楽を学ぶ為の渡米だったんですか?

■ LANCE ( MC/Vo 以下“L” ): 単純に英語がさらっと喋れる感じになりたいっていう目的での渡米でしたね。 本当に昔から見た目とか当たり障りっていうのを重視してきたから、そういう男になりたかった、っていうだけの(笑)。

— 猪突猛進ですね… 野球生活の後は、何がきっかけで音楽にシフトする事になったんですか?

■L: 親父が元々地元でディスコをやってたんで、幼稚園くらいの頃からそういう環境に触れてたんですよ。 だから高校で野球を辞めてアメリカに行って初めてクラブに行った時に、すごく懐かしかったんですよね。 ビング・クロスビーとか、ミスター・モンキーとかがかかってて、うわ〜なんだこの感じ懐かしいぞ!と思って思い返したら、俺の幼少期の記憶と繋がって。 だからクラブ遊び自体も悪いことをしてる自覚もないし、すごく自然なものだったんですよ。 その後にMAKKIがDJになったり、RYOも音楽やってるっていうのを聞いて、俺が何をやる?って考えたらやっぱり俺は歌主体でやりたいと思ったんですけど、とにかくクラブで歌う事に於いて、変にカッコつけたり、恥ずかしがったりしてステージに立つのだけは嫌だったんですよ。 そういう自分にまだ自信がないようなプレイヤーも当時行ってたクラブでよく見かけてたんで。 俺にとっては英語もそれと同じで、本物感が欲しかったんです。 ちょうど昨日も表参道の道で外国人に道を聞かれたんですけど、さらっと答えたら、一緒にいた奴が「LANCEさんって英語ペラペラなんですね!」ってなってて、「これだ!俺の欲しかった本物感は!この為に6年間かけたんだ!」って改めて思いましたね。

— その為ですか…(笑)。

■L: その為の渡米でした(笑)、1年に一回くらい道聞かれた時の受け答えの為の(笑)。 かっこいいと思われる為だけに行きたい!っていう。

— でもそれで帰国してこの3人でまた集まったっていうのがすごい事ですよね。

■L: そうなんですよ、2人は別でDJやったりソウルバーで歌ってたりしてたんですけど、俺は最初から今のこのONE☆DRAFTでやってる形態のこういう音楽、これをやりたかったんで、結成できた事自体がすごい事ですよね。 最初はMAKKIとやりたいっていうのは決まってて、その時はまだRYOが歌ってる事を知らなくて、もう1人、シンガーを男にするか女にするか、いろいろ考えてた時にRYOと再会したんで、帝京高校野球部出身3人、これだ!って思ったんですよね。 これで歌が上手かったら最高だと思ってRYOが歌ってるデモを聞かせてもらったら、かっこよかったんで「これはもう決定!」って事で有無を言わさずこの3人で固めました。
■RYO ( Vo 以下“R” ): その時ちょうど俺は子供ができて、親父の仕事を継ぐかどうか迷ってた頃だったんで、人生的にはかなり過渡期だったんですよ。
■L: そう、でも元チームメイトでこんないい歌を歌ってる奴を逃すもんか!と思って本気で説得しました。 もう3人で2MC1DJのこのスタイルでやるんだ、っていうイメージが強く頭にあったんでね。 子供ができようが離婚しようが知ったこっちゃない!って(笑)。
■R: その時はそんな事言わなかったんですけどね(笑)。 めちゃくちゃアツい言葉で丸め込まれました(笑)。 ネット用語で言えば釣りってやつですね。

— 逃せられない訳ですからね(笑)、それは必死に説得しますよね。

■ L : でも一旦断られたんですよ。 「俺には守るものができたから」って、わざわざその事だけを言いに俺たちの住んでる街まで車で来て。
■ R: 丁重にお断りしにいったんですけどね(笑)。
■L: 俺の中ではもう頭の中にデビューして、武道館まで行って、どっかの球場でライブする、っていうイメージが最初の時点で強くあり過ぎたから、RYOには断られてもまた説得しましたよね。 でも、それでRYOも入る事になってONE☆DRAFTを始めて、当たり前なんですけど最初の自分のビジョンのようには簡単にはいかなくて、確か最初にライブしたのがeggmanだったと思うんですけど、そこからどうやって進んでいこう… っていうサラリーマン的な考えで頭はいっぱいだったんですよ。 戦略を練る事に必死だったというか。 だから音楽を楽しんでいられる余裕がなかったのかもしれないですね、事実今の方が圧倒的に楽しく活動できてます。 音楽以外の事で頑張るようになっていった時に、なんか変な方向に行きかけて気づいたんですよ、もっと健全にやらなきゃダメだって。 

— 去年が10周年でしたが、どんな年でした?

■L: 1年目とかにはなかった意識としては、今10年やってきて現状で俺たちの事をまだ知らない人に対してのアプローチですね。 いろんな活動をある程度重ねてきてますけど、10年間知らない人へは、これまでやってきた事と同じ事をやっても絶対11年目に知ってもらって、気に入ってもらって、ライブに来てもらうっていう流れは作れないと思うんですよ。 今って、俺たち3人の頭の中にある悔しさとか喜びとか、そういう自分たちの範囲内のメッセージに反応するアンテナを張ってる人たちだけが反応してくれて、この10年間で集まってくれてるんですよね。 そういうアンテナの制度が高い人だけが集まってる訳で、ちょっと見に行ってみようかなくらいの人って、なかなかライブに来てない。 ライブで毎回「今日初めて見に来たって人—?」って聞いてるんですけど、なかなかフロアから手が上がってこない。 って事は今ツアーやって各地で来てくれてる人たち、毎回のように来てくれてるって事ですよね。 これって、10年間知らない人たちが地球上に数え切れないほどいるけども、逆に10年間のどっかで知ってくれた人たちはこれだけ毎回のようにライブに足運んでくれる関係性にまでなってるって事なんですよ。 だからもっと広げたい、広がりさえすれば、出会いさえすれば、長い付き合いにできる。 これを思ったのが去年、10周年のタイミングでした。 それで書く歌詞も少し変わってきたし、メッセージも今こちらを向いてくれてる人だけへ投げ続けるものじゃなくて、もっと広くへ向けたものになってきてる。 例えばで曲を英語で訳して英語でも歌ってみたい、って思ったり。 1年目、5年目とかではなかった心境ですね。 ベストアルバムを出したり、DVDを撮ったり、10周年っぽい事はいくつかやったし充実はしたんですけど、それはそれで終わってくもので、現に今は既に11周年目に突入してる訳だし、じゃあこっから何をしてくんだ? って考えたら、やっぱり新しい事をやっていきたい、っていう気持ちが芽生えてて。 それが今ついてきてくれてるお客さん以外にもリーチしていきたい、っていう気持ちなんですよね。 

— 今回の『ENDRUN』はどのくらいの制作期間で作ったんですか?

■L: 去年の夏終わってからこのアルバムの立て曲になってる「Believe」(M2)を書いて、その曲以降は10月〜11月までで納めました。

— めちゃくちゃ急ピッチですね!

■ L: そうですね、ヤバかったです。 歌詞をスマホのメモに書き溜める癖はあるんで、素材はありましたけど、そこから作家さんに構成相談して、ああだこうだ言いながら曲を煮詰めてって。 時間はかかりますからね。

— このアルバムは作品全体のコンセプトはあったんですか?

■ L: 全くなかったですね、ひたすら出来上がってきた曲をまとめた感じです。 全体を通してのストーリーがあったりすることはないんですけど、全部いつか思ったリアルな思いから起こしていってる歌詞なんで、10曲中のどれかの曲にはみんなのアンテナに引っ掛かるような曲があるんじゃないか、と思います。 でも、俺思ったんすけど、これまで飽きるくらい「頑張れ」って言ってきたんですよ。 頑張れ、諦めるな、勇気を出せ、自分を信じろ、って。 応援歌っていえばいいんですかね、こういうの。 こういう曲って形は変われど時代によって消えるものではなくて、どこかの誰かには必ず歌われてて、それが誰かによってサウンドが違ったりジャンルが違ったりするだけで、ずっとなくならないものだと思うんですけど、それだけ多くの応援歌が現に存在してて、お客さんはきっといろんな人の応援歌をいろいろ聴いてきてると思うんですよ。 で、俺たちは俺たちでライブでもずっと頑張れって言い続けてる。 今ね、俺らは変革期かもしれないですね。 同じ応援歌じゃないものも生んでいって次のステップへ進むための。 そういう思いもあって、今回も結構バラードが多くなってるんですよね。 

— 確かに純粋なアゲ曲っていう意味では「HERO」(M1)と「傾奇炎II 」(M10)だけで、他はバラードが結構な割合占めてますね。 

■ L: 「Treasure Hunter」
(M9)とかもめっちゃいいバラードなんですよ。

— これって今回唯一RYOさんが作詞した曲ですよね。

■ L: そうです、RYOの人生をちょっとでも知ってる人にとってはすごくグッとくる曲だと思うんですよね。
■R: これはONE☆DRAFTと同い年の僕の子供と居る時に思った事を書いた曲です。 曲を手掛けてるSALTLIVERさんっていうのが昔からずっと音をやってきてくれてる人で、僕がONE☆DRAFTをやるかどうか迷ってた時に、その人はその人で所属スタジオから離れるかどうかを迷ってたりして、二人で彼のスタジオで話してた事を復元したものです。 だからこの人と作れてすごくよかったですね。

— それでも決心してONE☆DRAFT始めたからこの曲があるって考えると尚更キますね(泣)。 ちなみにタイトルの『ENDRUN』にはどんな意味が?

■ L: これは野球の用語で “Hit and Run” の意味なんですけど、エンドランっぽい押せ押せの曲って今回別に収録されてないのに何で『ENDRUN』なの? って聴く人が疑問に思った時に「あぁ、ONE☆DRAFTだからか」っていう認識がなんかいいな、って思ったんですよ。 これまでに『ONE FOR ALL』とか『ALL FOR ONE』とか散々野球用語の作品を出してきたんで、それらと羅列した時に『ENDRUN』っていうスペルの字面も含めて意味深でいいな、と。 別に解散する訳じゃないんですよ? 当人3人のアイディアが分かりやすく伝わって、自分たちだけじゃない広範囲に伝わっていく事って、すごく大事だと思うんですよね。 自分たちだけで満足する表現じゃなくて。 だから今回はジャケ写も然りだし、アルバムタイトルも一緒。 分かりやすく俺たちらしさとか、良さが伝わるのがいい。 だからタイトルは野球用語シリーズとして『ENDRUN』、ジャケ写はこれ、全然俺の好みではなかったし、赤のバックで、コントラスト強めの写真で俺がバット構えるような構図で、北斗の拳のあべしみたいじゃないですか(笑)。 だけど “バットをマイクに握り変えて” っていうキャッチコピーから始まった俺たちが、このジャケでこのタイトルのアルバムを出す。 分かりやすて、ようやく超えてくると思うんですよ、自分たちだけの表現の範囲を。 だからこのタイトルに意味を込める事に躍起になるよりは、外から見た時に俺らっぽいイメージが分かりやすく伝わって、それがきっかけに曲聴いてくれて興味持ってくれる為のアイコン、それこそ釣りですよね(笑)。 そっちを大切にしたほうが今の俺たちにとってはハマるな、と思ったんですよね。

— きっかけとなるフックっていうことですね。 楽曲面では、作家の方々とのやりとりで曲を完成させていく場合は、けっこう具体的な音のリクエストを出して具現化してもらうんですか?

■L: トラックに関しては、細かい部分に関しては今回の作家さん達、俺はリスペクトだらけなんで基本お任せして音を作ってもらっていて、僕から要望を出してるのは唯一、それこそフックになってる曲の始まりほんの数秒のとっかかりの部分ですね。 その何秒かで、その先を聴きたくなるかどうかが決まってくるじゃないですか、だからそこで耳に残るフレーズになってるかどうか、そこはこだわっていろいろやり取りしました。 しかし今回もそうですけど、やっぱり作家さんと一緒に作れる事によって、自分たちだけでは平坦になりそうな曲が10人の作家さんがいれば10色分のいろえんぴつみたいな羅列になって、こんなにも音に幅が生まれるんだな、って感動しますね。 

— そんな作家さんとの共同作業もしながら、今回でアルバム8枚目ですか。 リリースした曲だけで80曲くらいあるって事ですよね。

■L: なんだかんだでそのくらいになりましたね。

— これだけ曲作ってきて、ツアー回りまくってきて、それでも今尚このチームを続けてる一番の原動力って何なんでしょうか?

■L: やっぱり一番の原動力はファンですね。 声かけられる度にやっぱりおっしゃ、また頑張ろう、って気持ちになるし、「ずっと続けてください!」とか「辞めないでくださいね!ENDRUNってタイトル何なんですか!終わっちゃうんですか?!」とか今回も死ぬほどメッセージもらいましたけど、どちらかというと終わらないように努めるというよりは、どの道始まったからには来る終わりを恐れるんじゃなくて、終わりがある=終わるまでの間、ずっとライブで会えたり、音源出して聴いてみんなで気持ち共有したりできる時間がある、っていう事の大切さを見出して、一個一個噛み締めてやってくのが俺たちのやるべき事だな、って思うんですよね。 待ってくれてるファンがいてくれてるから、こっから先も曲をリリースして、そこに対してライブをやってく、っていう連鎖を続けたくなる、これは昔からずっとそうかな。 だから今回のアルバムタイトルは変に勘繰らなくていいんですよ(笑)、まだまだ広げていきたい訳ですから。